人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

(37g)ブッカー・アーヴィン(ts)

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ジャズマンの登竜門といえるモダン・ジャズの名門バンドといえば、アート・ブレイキージャズ・メッセンジャーズマイルス・デイヴィスクインテット、そしてチャールス・ミンガス・ジャズ・ワークショップになるだろうが、メッセンジャーズ在籍経験者とマイルス・クインテット経験者はかなりのメンバーが重なるのに、ミンガス門下生はメッセンジャーズにもマイルスにも無縁という面白い現象がある。三組どれも渡り歩いたのはジャッキー・マクリーンくらいしか思い当たらない。
なぜそういうことになったのか?それはミンガスのジャズを聴けばわかる。それは明らかにマイルスの洗練とも、メッセンジャーズの柔軟性とも異なる。

「ミンガス・アット・アンティーブ」Mingus at Antibe,60.7(画像1)はフランスのジャズ祭出演時のライヴで、ミンガス晩年に発掘された。選曲はベスト・ヒット。テッド・カーソン(トランペット)、エリック・ドルフィー(アルト)、アーヴィンの3管でドラムスは番頭D・リッチモンド。ピアノなし。ミンガスはオーネット・コールマンのピアノレス・カルテットに感化されフリー・ジャズ路線を模索していた。アーヴィンのプレイは微妙に浮いている。くどすぎるのだ。
結果、10月録音の傑作「ミンガス・プレゼンツ・ミンガス」はアーヴィン抜きの4人になった。

64年6月末にドルフィーはミンガスのツアーの後ベルリンで急死。同じ頃テッド・カーソン(Ted Curson,1935.6-2012.11)はビル・バロン(テナー)とのピアノレス・カルテットでヨーロッパ・ツアー中ドルフィーの死を知りパリで録音したのがミンガス盤に劣らぬ名盤「ドルフィーに捧げる涙」Tears For Dolphy,64.8.1(画像2)で、アーヴィン参加作ではないがぜひ紹介したかった。タイトル曲はパゾリーニの映画「テオレマ」にも採用される。

テッド・カーソンは「アージ」Urge,66.11(画像3)で再びアーヴィンと共演。これもピアノレス・カルテットで完全にフリー・ジャズの名作だが、カーソンのオリジナル5曲に1曲だけアーヴィンの提案でスタンダードの「貴方は恋を知らない」'You Don't Know What Love Is'を入れている。アーヴィンは「クッキン」60.11でも同曲を演奏していたが、より深みを増している。