人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

ジャズよもやま話

LPレコード時代のジャケットはCDサイズに縮小しても見事なものが多いですね。特にジャズにはいいものが多いですが、とりわけブルーノートのアルバムにはひと目でわかるほど垢抜けたかっこよさがあります。
ブルーノートは本来ジャズクラブの名前ではなく、1939年創業のニューヨークのジャズ専門のインディーズのレコード会社です。40年代~60年代にかけてマイナー・レーベルとしては抜きん出て質の高いアルバムを多数リリースし、いわばジャズ界の品質保証マークのようなレーベルでした。今でもブルーノートのほとんど全アルバムがCDで再発売され、LPレコードの初回プレスは数十万円のプレミア価格がついています。

お聴きになった『マイ・フェヴァリット・シングス』My Favorite Thingsは『ドレミの歌』で有名な映画「サウンド・オブ・ミュージック」挿入歌で、ジャズではサックスのジョン・コルトレーン(John Coltrane)が取り上げて大ヒットさせ、スタンダードになりました。ソプラノサックスの使用も注目されました。コルトレーンは同じ手法でイギリス古謡'Greensleeves',映画「メリー・ポピンズ」挿入歌'Chim Chim Cheree'も取り上げました。どれも短調のワルツです。

『ベサメ・ムーチョ』Besame MuchoはGrant Green'Latin Bit'収録曲ですね。アート・ペッパー(Art Pepper,アルトサックス)の十八番でもありました。たぶん同アルバムの'Tico Tico'もご存知だと思います。パーカー(Charlie Parker,アルトサックス)もやっています。
「ラテン・ビット」は1930年代末からアメリカで流行したラテン曲のヒットをカヴァーしたラテン・ジャズのギター・アルバムで、サンタナみたいなものです。『ベサメ・ムーチョ』もメキシコのC・ベラスケス作で、1941年、作者21歳の作品。意外にも死の床で妻のキスを求める男の、シリアスな内容の歌詞です。ジャズでは43年にジミー・ドーシー楽団がヒットさせスタンダードになりました。当時はカリフォルニアがメキシコからアメリカに譲渡されて百年たたず、風土的にもロサンジェルス出身のペッパー、グリーン、サンタナらは自然にラテン音楽の素養があるわけです。