Art Farmer(trumpet,cornet,fluegelhorn,1928-1999)。
筆者は実はファーマーの熱烈なファンではなく、トランペッターの中でもマイルスのカリスマやクリフォード・ブラウンの天才には及ばず、同時期のトランペッターならドナルド・バードよりは絶対良いが(ソニー・クラーク「クール・ストラッティン」のトランペットがバードだったらゾッとする)、ドーハムやリー・モーガンの刹那的な魅力に欠けると感じる。なので、ファーマーは初期から中期(円熟期)の代表作だけで簡潔に四回でまとめたい。
ファーマーの代役を、フレディ・ハバードが勤めたアルバムもビル・エヴァンスの「インタープレイ」を含めて数枚ある。ハバードは器用だが、ファーマーにはハバード以上に凡作が一切ない。これは本当にすごいことだと思う。
Farmer's Market(画像1)56.11.23
-はハンク・モブレーのテナー、ケニー・ドリューのピアノ、そしてエルヴィン・ジョーンズのドラムスという価千金の面子。この時期のモブレーとドリューの洗練されたブルース感は素晴らしい。ただし不肖の弟アディソン・ファーマーのベースが足を引っ張る。それでも渋い好作には違いない。モダン・ジャズとはどんな音楽か、と問われればこれです、と差し出せるような、そんな一枚をファーマーは毎回作ってきた。
Modern Art(画像2)58.9.10,11&14
-は、作・編曲に優れたベニー・ゴルソン(テナー)とのクインテットで、このコンビの成功が、後のジャズテット結成にに繋がる。またもやベースがアディソンなのが痛いが、ピアノがデビュー直後のビル・エヴァンスなのもポイント。さすがの腕前を披露する場面とボロボロな場面が同居しているのだ。ここまで一枚のアルバムに好不調の波が激しい例は珍しい。こういう記録も滅多に聴けない。
Brass Shout(& The Aztec Suite)(画像3)59.5.14&7.29,30
-は、現行CDではカップリングされているが、共に斬新なビッグバンド作品。前者は有名曲、後者は新曲半々だが、マイルス「スケッチズ・オブ・スペイン」に半年先行しているのが興味深い。