Lou Donaldson(1926-,alto sax)。
他人のお膳立てに平気で乗るのがジャズマンでもあれば、やる時は積極的にイニシアティヴを取るのがジャズマンでもある。ルーさんもスリー・サウンズとのコラボ、ホレス・パーランとのコラボで他人任せのアルバムが続いたので、そろそろ本気も見せねばならん、と思ったのだろう。そのアルバムが、
Here 'Tis(画像1)61.1.23
-というところがルーさんらしくて良い。ソウル・テナーのジミー・フォレストのバンド出身のグラント・グリーン(ギター)、80年代になってやっと評価されたベイビー・フェイス・ウィレット(オルガン)の新人二人にドラムスはつきあいの長いデイヴ・ベイリーで、開き直ったようなソウル・ジャズ作品を作った。タイトル曲のスロー・ブルースなどオルガンとギターにほとんどを任せて、ルーさんはほんの少ししか出てこない。それでも全体はルーさんの作品になっている。
Gravy Train(画像2)61.4.27
-は再びハーマン・フォスターをピアノに据えたコンガ入りクインテットで、これは批評家にはマンネリで安易なポップ化とされ、一方ファンには埋もれた名作と愛されている。どちらの言い分もそれなりに正当なのが難しい。'Avalon'や'Candy'などのスタンダードとタイトル曲などのオリジナル曲の配分がいい。
The Natural Soul(画像3)62.5.9
-は再びオルガン・トリオとの作品で、トミー・タレンタイン(トランペット)との二管。グリーンは再起用で、ジョン・パットンがオルガン、ベン・ディクソンがドラムスと、もはやメンバーからしてソウル・ジャズ以外の何物でもない。
ルーさん以外ではグリーンのギターの鮮やかさが目立つ。トミー・タレンタインはテナーのスタンリーの兄で、作・編曲に優れる。最初このアルバムを聴いた時に、ルーさんのアルバムだからワンホーンだろうと思うと管の音が二重に聴こえるので、ギターやオルガンではないな、この時代のブルーノート作品で多重録音はないはずだが、と思ったらちゃんとトランペットがいた。トミーさんは音色をブレンドさせるのが巧い。