人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

ヴェルヴェット・アンダーグラウンド雑感(前編)

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懇意な方からルー・リードの遺作になったメタリカとの共作アルバム「LULU」2011(画像1)を聴かせていただくことができ、本格的なスタジオ作としては「ザ・レイヴン」2003以来のまともなアルバムだったので気持良かった。内容は完全にルーさん寄りの音楽なのだが、メタリカもいい演奏をしている。

これはフランク・ヴェーデキント(独1854-1918)の元祖表現主義戯曲「地霊」1895と「パンドラの箱」1903の連作を原作としたサイレント映画の名作「パンドラの箱」1928(G.W.パプスト監督、ルイーズ・ブルックス主演)と、作曲者アルバン・ベルク(1885-1935)の急逝によって未完ながら20世紀オペラ屈指の傑作と認められている「ルル」1935に由来するのはタイトルとジャケットでわかる。ジャケットは、明らかにルイーズ・ブルックスだ。

ルーさんのアルバムは実は完成度の高い作品はあまりなく、その点ヴェルヴェット・アンダーグラウンド時代より見劣りするが(ヴェルヴェッツ時代が奇跡的なのだし、100点満点の作品ばかりのアーティストなど逆に異様でもある)25歳のデビュー作(1967・画像2)は、アンディ・ウォホールがスキャンダラスなバンドのスポンサーになろうと、ファッション・モデルのニコを無理矢理ゲスト参加させ、大手ジャズ・レーベル(笑)のヴァーヴから売り出したが、前年に同じヴァーヴからデビューしたフランク・ザッパ&ザ・マザーズ・オブ・インヴェンションがきっちり宣伝展開されて好セールスと高評価をされた(ザッパは百戦錬磨の業界人だった)と対照的に、セールスも批評もさっぱりだった。ザッパの「フリーク・アウト」も画期的作品だが、ヴェルヴェッツが無視されたのは会社がまったく広告しなかったので、それが両者の明暗を分けた。

結果的に遺作となった「LULU」がソロ活動初期の大傑作「ベルリン」1973(画像3)のテーマの再現なのはすぐわかる。あれはルーさんの完璧と言える唯一のアルバムだが(「メタル・マシン・ミュージック」1975を除けば)、プロデューサーのボブ・エズリンの作品という性格も強い。今回はメタリカがエズリンの役割を果たした。
ルーさん個人の音楽性はソロ作(画像4)、バンド作(画像5)、共演作(画像6)を比較するとよくわかる(題名は前回の追悼記事参照)。そこを強調したい。