人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

ルー・リード Lou Reed - Rock n Roll Animal & Lou Reed Live (RCA, 1974/1975)

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ルー・リード Lou Reed - Rock 'n Roll Animal & Lou Reed Live (RCA, 1974/1975) Full Album : https://youtu.be/1ny6P1EkNCc
Recorded live at Howard Stein's Academy of Music, NYC, December 21, 1973
Released by RCA Victor Records, as "Rock 'n Roll Animal"(APL-0472, February 1974) & "Lou Reed Live"(APL1-0959, March 1975)
All Songs written by Lou Reed
(Tracklist)
1. Intro/Sweet Jane - 7:46 (0:00)
2. How Do You Think It Feels - 3:41 (8:18)
3. Caroline Says I - 3:55 (12:03)
4. I'm Waiting For The Man - 3:38 (16:00)
5. Lady Day - 3:54 (20:00)
6. Heroin - 13:13 (23:44)
7. Vicious - 5:55 (36:38)
8. Satellite Of Love - 6:03 (42:37)
9. Walk On The Wild Side - 4:51 (48:32)
10. Oh, Jim - 10:40 (53:30)
11. Sad Song - 7:08 (1:04:09)
(Encore)
12. White Light/White Heat - 5:21 (1:11:40)
13. Rock N Roll - 9:33 (1:16:43)
[ Personnel ]
Lou Reed - vocals
Dick Wagner - guitar
Steve Hunter - guitar
Ray Colcord - keyboards
Prakash John - bass
Pentti "Whitey" Glan - drums

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 今回ご紹介するリンクはルー・リード(1942-2013)の2枚のライヴ・アルバムをひとつにまとめたもので、元のアルバムそのものが同一のコンサートの演奏曲を2枚に振り分けて発売されていたものでした。CD化されてボーナス・トラックが追加されコンサートの演奏曲全曲が揃った上に観客録音によるテープから演奏曲順が解明されたため、今では2枚のアルバムから演奏曲順に曲を並び替えて楽しめるようになった、というわけです。このコンサートの時点でヴェルヴェット・アンダーグラウンド脱退後のリードは3枚のアルバムを発表していました。『Lou Reed (邦題『ロックの幻想』)』1972.6、デイヴィッド・ボウイとミック・ロンソンのプロデュースによる『Transformer (『トランスフォーマー』)』1972.12(実際の発売は11月)、ボブ・エズリンのプロデュースによる『Berlin (『ベルリン』)』1973.7で、『トランスフォーマー』はヒット・アルバムになり1973年初頭にはシングル・カット曲「Walk On The Wild Side (「ワイルド・サイドを歩け」)」が全米トップ20ヒットを記録し、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの再評価にもつながって、ルー・リード初のライヴ・アルバム『Rock 'n Roll Animal (『ロックン・ロール・アニマル』)』1974.2に続き1974年9月には2枚組LPの発掘ライヴ・アルバム『1969: The Velvet Underground Live with Lou Reed』が発売されます。その直前、1974年8月のスタジオ・アルバム第4作『Sally Can't Dance (『死の舞踏』)』は全米アルバム・チャート10位と、リード最大のヒット・アルバムになりました。続いてライヴ・アルバム第2弾『Lou Reed Live (『ルー・リード・ライヴ』)』1975.3がリリースされます。これは『ロックン・ロール・アニマル』が録音された1973年12月21日のニューヨークのアカデミー・オブ・ミュージックでのコンサートの残りの曲を集めたものでした。このコンサートではヴェルヴェット時代の代表曲5曲(1, 4, 6, 12, 13)と『トランスフォーマー』から3曲(7, 8, 9)、『ベルリン』から5曲(2, 3, 5, 10, 11)が演奏され、ちょうど1年前の『トランスフォーマー』のプロモーション・ツアーからのお蔵入りライヴ『American Poet』とは一変して風格のあるパフォーマンスを披露しています。『ロックン・ロール・アニマル』と『ルー・リード・ライヴ』ではどのように曲が振り分けられていたか、アルバムごとのデータを引いてみましょう。

(Original RCA Victor "Rock 'n Roll Animal" LP Liner Cover)

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Lou Reed - Rock 'n Roll Animal (RCA Victor, APL-0472, February 1974)
(Side One)
A1. Intro/Sweet Jane - (Steve Hunter, Reed) 7:55
A2. Heroin - 13:05
(CD Bonus Tracks)
Tk3. How Do You Think It Feels - 3:41
Tk4. Caroline Says I - 4:06
(Side Two)
B1. White Light/White Heat - 5:15
B2. Lady Day - 4:00
B3. Rock 'n' Roll - 10:15

(Original RCA Victor "Lou Reed Live" LP Liner Cover)

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Lou Reed - Lou Reed Live (RCA Victor, APL1-0959, March 1975)
(Side One)
A1. Vicious - 5:55
A2. Satellite of Love - 6:03
A3. Walk on the Wild Side - 4:51
(Side Two)
B1. I'm Waiting for the Man - 3:38
B2. Oh, Jim - 10:40
B3. Sad Song - 7:32

 1年前の『トランスフォーマー』ツアーのバックバンド、ザ・トッツが下手にもほどがあるへなちょこバンドだったのに較べ、本作のバンドは『ベルリン』の天才プロデューサー、ボブ・エズリン子飼いの凄腕セッションマンがアレンジ・演奏しているのでルー・リードのライヴ史上もっともプロフェッショナルなハード・ロック寄りのパフォーマンスになっています。このバックバンドのリーダーはギタリストのディック・ワグナーで元ジャズ・ロック・バンドのフロスト出身、ワグナーには元アンボイ・デュークスのグレッグ・アラマ(ベース)とのトリオ編成の名バンド、ユーサ・メジャーのアルバム『Ursa Major』RCA, 1972があり、これは偶然ですがキング・クリムゾンの『Lark's Tongues In Aspic (『太陽と戦慄』)』1973.3のサウンドハード・ロック寄りに寄せたような、プログレッシヴ・ロック色の強いハード・ロックの隠れた名盤でした。ボブ・エズリンは丸投げプロデューサーとしても定評があり、アリス・クーパーの『Killer』'71.11、『School's Out』'72.5、『Billion Dollar Babies』'73.2は実際はディック・ワグナー・バンドによるレコーディング作品ですし、KISSの『Destroyer (『地獄の軍団』)』'76.3などはライヴ・アルバム『KISS-Alive (『地獄の狂獣』)』'75.9が大ヒットしてツアーに明けくれ力作は出したいがレコーディングの時間のないKISSがデモ・テープをエズリンに託し、エズリンがディック・ワグナー・バンドにアレンジさせ制作してポールとジーンが歌をかぶせたアルバムです(全曲がKISSのメンバーとエズリンの共作扱いになっているほどです)。また実質的にピンク・フロイドの『The Wall』'79.11もエズリンのプロデュースで、2枚組LPを制作するのに3枚分のデモ・テープを抱えて大混乱だったフロイドがエズリンを招いて2枚組LPにまとめ直させた作品でした。実は『ベルリン』もそうで、収録曲はヴェルヴェット時代にすでに半数近くが独立した曲として書かれて未発表デモ・テープが残されており、うち2曲は最初のソロ・アルバム『ロックの幻想』で正式録音され発表済みでした。しかし『ベルリン』の全10曲をアルバム全編で長編小説のような物語性のある構成に組み立て、それに相応しいアレンジをディック・ワグナー・バンドを中心としたメンバーで施したのはエズリンの手柄でした。この1973年12月のコンサートは『ベルリン』を中心にヴェルヴェット時代の代表曲とヒット・アルバム『トランスフォーマー』の代表曲を配した極上のセット・リストになっており、ルー・リードは時期ごとにバックバンドを総入れ替えして異なったサウンド傾向を試すタイプのアーティストでしたので、ディック・ワグナーとスティーヴ・ハンターの素晴らしいツイン・ギターのバンドでルー・リードが聴けるのは本作の時期だけです。前後して数枚、海賊盤でこのバンドのルー・リードの発掘ライヴ音源も出ていますが、RCAヴィクターからの正規盤『ロックン・ロール・アニマル』『ルー・リード・ライヴ』が演奏内容、正規盤ならではの優れた録音で決定版と言えるものになっています。つまり今回ご紹介した音源です。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドとはまったく違うプロフェッショナルな音楽性のバンドですが、これもまたルー・リードのキャリアではもっとも優れたバンドの一つに数えられるでしょう。1年前のバックバンド、ザ・トッツはいったい何だったんだと苦笑してしまうほどです。