人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟の思い出24

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・3月16日(火)晴れ
(前回から続く)
「なにしろ朝あんな騒動があって(注1)ほとんどの人が五時半に起きたままだったし、六時半には普段の起床アナウンスが流れるが、Yくんと朝食まで二時間は眠れるよね、とぎりぎりまで眠る。午前中は外来ミーティング(注2)があったので初参加(任意)。八人ほどの出席者のうちでテーマに沿った話をしたのは三人だけ、他の人は全然関係ない話をする。呆れて戻ってくる。喫煙室で初めてYmさん(50代?)に外来ミーティングはどうだった?と訊かれる。テーマとも断酒とも関係ない話をする人が半数以上でした、と言うとYmさんも苦笑して、いつもそうだよ、何のためのミーティングかわかっていないんだからやっても無駄なんだよ。一応プログラムだから一回おきくらいには出るがね、と、わかっている人もいるんだ、と嬉しくなる」

「午後のプログラムはリクリェーションだったが朝の騒動(注3)で疲れてしまって、欠席組のMさん(まだ歩行が不自由)、一般精神科だから学習義務はないKくんやSmくん、Yくんもヒマなのでヴィデオを観る。つまらない内容なのでSmくんやYくんは途中で出て行ったが、Kくんは学習意欲は人一倍ある。ヴィデオは医学的解説も断酒の実践についてもまったく薄手の内容だった。だが仕方なく、アルコール依存症は本人だけではなく家族を始め周囲の人を巻き込む、といった調子でヴィデオ内容を箇条書きしてノート提出」

「夕方のシフト交替の時にナースステーションから声をかけられ、看護婦のNさんに佐伯さんこれ読んで、私の私物だけど、と鴨志田穣『酔いがさめたら、うちへ帰ろう』(スターツ出版06年刊、著者は64年生、夫人は西原理恵子、07年アルコール依存症による肝臓癌で逝去)を貸してくれる。消灯時間までに読了、結局末期癌から別れた妻子と和解して終る話に共感などできやしない」

(注1)前回参照。
(注2)アルコール依存症治療の「ミーティング」学習とは、課題に沿って体験談を話しあう、というもの。断酒会、AAといった民間組織ではミーティングのための会合を定期的に開いている。発祥国はアメリカなので、プロテスタント教会の「証し」の慣習が応用されたものと推定される。
(注3)Kくんは火災自体は本当だと思っていたらしい。ならばなおさら、わざわざ慌てて警報器を止めに行く必要ないではないか。