人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟入院記102

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・3月29日(月)曇りときどきにわか雨
「昼食はのんびりだが食後には日直の仕事が待っている。精神科入院でも当番制で作業させるばかりか、全員が日常作業を科せられるのはアルコール科だけなのではなかろうか。当直の仕事はやっかいなので患者会代表が補佐し、つまり今日はFさんに環境整備の細目とラジオ体操の仕切りを教わり、洗濯所や洗濯機・乾燥機そのものの分解掃除も習ったが、Fさんの退院後に患者会代表を引き継ぐのが内定している、という不運が待っている。他の患者が日常清掃を終えても洗濯機類の分解掃除(普通患者にさせるか?)は手間がかかるから、14時からのヴィデオ学習は一服するヒマもない」

「今日のヴィデオは『酒なし生活術』。教材は安っぽい午後の主婦向けニュース番組の再現ドラマ風のものが多いが、今回はあっさりした教育ヴィデオだった。それでは皆さんに一人ずつ感想を述べてもらいましょう。座席順に指名され、半数ほどでおおむね感想は出揃う。Tkさんの感想―入院しても依存症からの回復率は二割に満たない、というのがショックでした。Skさんはそれを念頭にか私の入院経験での見聞では一割以下、5%に届くかどうかですね。Tkさんは授業を休みがちでこれまで知らなかったのだ。彼女は的確な意見も述べていて、アルコール依存症と同じ効果、具体的には精神安定剤睡眠導入剤にも依存症に進む危険性の指摘を危惧していた。アルコール依存症患者は多くの場合、鬱病にも陥っているから、向精神剤の服用なしでは容易にメンタルの不調を招いてしまうからだが、向精神剤の服薬すら危険性があるとなると状況的にはまったく手詰まりになる」

「順々に進み、次はおれだな、Tkさんの感想と同じです、と言おう。突っ込まれたら双極/1型なので向精神剤の服薬は必須ですから、と付け加えようか、と思っていたら飛ばされて、一巡して終了してしまった。着席したのがテレビに近い隣の席(Kくんの席だが一般科だし外出中)に座ったからKくんが傍聴していると勘違いされたようだ。…指名されなかったね(注)、とTkさん。ええ。彼女と挨拶以外の言葉を交したのは初めてだ。ノートは提出して判子をもらったから出席になっているだろう」(続く)

(注)彼女は七歳年下なのに「佐伯さんは私より年下」と思っていたという。退院後に不倫関係に陥るとは入院中は予想もしなかった。