人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アメリカ喜劇映画の起源(6)

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 前回に続き今回もコズミック出版の廉価盤DVD-BOX、『爆笑コメディ劇場』の収録作品解説です。チャップリンキートンが各三枚、ロイドとマルクス兄弟が各二枚で10枚組2000円という破格のボックスです。ジャケットは掲載画像をご覧ください。

 チャールズ・チャップリン『夕立』『ノックアウト』『舞台裏』の三短編は映画デビューの1914年にキーストン社で35本(他長編一本)制作された4作目、17作目と21作目です。チャップリンは13作目から監督昇進しましたが『ノックアウト』はロスコー・アーバックルの主演作のためキーストン社社長のマック・セネットが監督しています。『舞台裏』では監督・脚本・主演チャップリンで、格段に出来が違います。
 翌年エッサネイ社に移籍、同社では一年間に中編14本で、『役者』『拳闘』『駈落』は移籍第一作、3作、5作目に当ります。『役者』ではがちゃ目のベン・ターピン、『拳闘』からは1922年までチャップリンのヒロインを勤めるエドナ・パーヴィアンスが登場。
 1918年の『犬の生活』からチャップリンはメジャーへ移籍しますが、その前の二年間にミューチュアル社で中編12本を監督します。これらはすでに後年の長編の雛型と言えて、『放浪者』1916一編でもそれは明らかです。事実上1914~16年の三年間でチャップリンがキーストン社のスタイルを完全に革新したのが以上の初期中短編でわかります。

 ハロルド・ロイドの『猛進ロイド』1924は『豪勇ロイド』1922、『ロイドの要心無用』1923と並ぶ傑作で、当時ロイドの人気は『ロイドの人気者』1925が同年のチャップリンの大傑作『黄金狂時代』をしのぐヒットを記録したほどでした。
ロイドは普通の青年然とした容貌で細かく素早い芸も大胆な体技もこなし、普通の市民の情感に訴える演技が得意でした。チャップリンのようなホームレスではないのです。スリリングな最高傑作『要心無用』より純情なラヴ・ロマンス喜劇『猛進』の方がロイドらしいとも言えます。
 トーキー後の『ロイドの牛乳屋』1936は、台詞や音声がついた分視覚的な工夫が相殺されてしまった感があります。これはトーキー後のキートンにも言えて、サイレント期の人気俳優、名監督の多くの凋落した一因でした。
 紙幅が尽きました。キートンマルクス兄弟は次回で解説します。