人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

Blackwater Park- "Dirt Box"

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 ドイツのロックと言うと近年再評価が進んだのは主に実験的なロックだし、ドイツのテクノ系ロックは一貫して注目度は高かった。だが、タンジェリン・ドリームクラフトワークに匹敵する国際的成功を収めたドイツ屈指のバンドは、やはりスコーピオンズをおいて他にないだろう。ウリ・ロート在籍時の70年代スコーピオンズ英米のハードロックと比較しても抜きん出て斬新なスタイルを確立していた。80年代L.A.メタルの原型はスコーピオンズのスタイルに由来するだろう。
 これほどのバンドが一国から孤立して出現するわけはないので、70年代ドイツにはエクスペリメンタル・ロック、テクノ・ロックだけでなくハード・ロックの豊かな土壌もあった。
 スコーピオンズに次いで海外進出したハード・ロック・バンドはルシファーズ・フレンドだが、このバンドはハード・ロックが好きな人にはプログレッシヴ・ロック的すぎ、プログレッシヴ・ロック好きの人にはハード・ロックすぎるというややこしい存在で、音楽性の高さが首を絞めた無念のバンドだった。スコーピオンズとルシファーズを2トップに70年代ジャーマン・ハード優秀バンドは軽くベスト10まではいけるが、トードやミッドナイト・サン、リアクション、マイ・ソリッド・グラウンドらをおいてもスコーピオンズ、ルシファーズの次に名前が上がるのはブラックウォーター・パークだろう。メジャーのBASFレーベルから発表されたので71年当時日本盤も出ている。当時の日本のハード・ロック・バンドといえばフラワー・トラヴェリン・バンドやブルース・クリエイション、DEW、スピード・グルー&シンキだったわけで、ブラック・サバスの傑作サード『マスター・オブ・リアリティ』ですらミュージック・ライフ誌のレコード評で「日本のロック・グループみたいな気がしてきますよ、聴いている内に……。」と五つ星評価で三つ星という始末。確かに当時の日本のハード・ロックの水準の高さ、しかもライヴに接する機会がある環境ではブラックウォーター・パークどころかブラック・サバスさえ際立ったバンドとは思われなかったに違いない。しかも日本のロック・リスナーは日本のバンドがやっているようなロックは世界水準では低レヴェルだと思っていた。
 そこでブラックウォーター・パークだが、パープルやサバスに遜色ないハード・ロックの名盤だろう。曲によってプロデューサーがオルガンを加えているが、リーダーのリッチー・ロートリッジとマイケル・フェクナーのツイン・リードギターがザックリ切れる。(A)1はオルガンを入れたヘヴィ・ロック、(B)1はピアノ入りの軽いロックンロールと聴き易さを考慮した感もあるが、(A)2~4、(B)2の路線がバンドの真骨頂、特に9分近い(B)2はこのアルバムのハイライトだろう。アルバム最終曲(B)3はビートルズリヴォルヴァー』からの名バラードを大胆なハード・ロック・アレンジで聴かせる。スタイルのオリジナリティではさすがにスコーピオンズやルシファーズには及ばないが、デビューの時期が早かったのもあるし、完成度は高い。一作で消えたのが惜しまれるバンドだったが、西ドイツ本国でも話題にならなかったのだろう。71年といえばドイツではアシッド・ロックの全盛期で、グル・グルアシュ・ラ・テンペルのような変態ヘヴィ・ロックはウケても、ブラックウォーターのようなオーソドックスなブリティッシュ・ロック・スタイルのハード・ロックは興味を惹かなかった。そういうことだろうか。

Blackwater Park-Dirt Box(West Germany,1971)
(A)1.Mental Block
https://www.youtube.com/watch?v=KRpLQVN0Boo&feature=youtube_gdata_player
2.Roundabout
https://www.youtube.com/watch?v=SekcRddbZqg&feature=youtube_gdata_player
3.One's Life
https://www.youtube.com/watch?v=hk5NCxcbdWE&feature=youtube_gdata_player
4.Indian Summer
https://www.youtube.com/watch?v=buON6xCKriQ&feature=youtube_gdata_player
(B)1.Dirty Face
https://www.youtube.com/watch?v=mqN3FMmR198&feature=youtube_gdata_player
2.Rock Song
https://www.youtube.com/watch?v=Hhl3gFA6NNM&feature=youtube_gdata_player
3.For No One
https://www.youtube.com/watch?v=PCGF4MnG8kA&feature=youtube_gdata_player
Richard "Richie" Routlege-Gitarren,Gesang
Michael Fechner-Gitarren
Andreas Scholtz-Bass
Norbert Kagelmann-Schlagzeug
Produziert von J. Schmeisser
BASF/2021238-6