人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

ピーナッツ畑でつかまえて(61)

 第七章。
 嵐の吹く暗い夜でした。私たちは暖炉の前でくつろぎながら、そろそろ晩酌にしようかとウィスキーのための氷を割ったところでした。夜の静寂が嵐にかき乱されていても、暖かな室内では吹きすさぶ嵐すら静寂の一部でした。私たちは退屈していたので、かえってちょっとした刺激には鈍感になっていたのです。こうして無為に過ごすのはともすればストレスに結ぶ倦怠を募らせかねないことでしたが、それも慣れてしまえばどうということはありません。話題はとうに尽きていました。また私たちの好奇心はとうに衰えていましたから、並大抵のことでは私たちの興味は引き起こされなくなっていました。それは自分から望んだ結果なのかもしれません。沈黙と静けさ、自然な状態の夜とは本来そういうものでしょう。
 チャーリー・ブラウンは再び照りつける陽光に意識を取り戻しました。いつから眠っていたか、それが昨夜からなのかそれとも何日にもなるのか、チャーリーはもうよくわからなくなっていました。こんな状態になってから、もうどれだけの日付が過ぎたのかもよくわかりませんでした。チャーリーが巻き込まれた問題は今すべてが解決して帰路についているはずでした。それともまだ解決してないのかな。そもそもぼくはなぜ自分がこんなひどい目に陥ったかもよくわかっていない。ぼくは巻き込まれたのではなくて、ぼく自身が問題の核心にあったのかもしれない。ぼくでなければあの犬が。だけどもうあの犬は死んだ。鳥もどこかへ行ってしまった。生きていた時はあの犬はいつもあの鳥をはべらせていたのに。
 それが7年も前のことなんだゾ、としんちゃんは言いました。7年前じゃぼくら生まれていないよ、と風間くん。そこがモンダイです、としんのすけ、オラのうちがまたずれ荘から新築におしっこし(お引越でしょ!とネネちゃん)したのが3年前、オラが5歳の時。オラの妹のひまわりが生まれたのが半年前、オラが5歳の時。よしなが先生が結婚したのがおととし、オラが5歳の時。よしなが先生に赤ちゃんが生まれたのが去年で、オラが5歳の時。まだ聞く?もういいよ、何が言いたいんだよ。風間くんはおいくつ?5歳だよ、みんな同じ組なんだから5歳だろ!ほーほー、じゃあなんで風間くんはオトナみたいな口をきくのかナ?そんなこと5歳だからわからないよ!
 嵐の吹く暗い夜でした。まだルーシーはダイアモンドを持って空に浮かんでいました。