人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

Love - Forever Changes (Elektra, 1967)

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Love - Forever Changes (Elektra, 1967) Full Album : https://youtu.be/Q1L11Y0I5E0
Recorded June to September, 1967 at Sunset Sound Recorders
Released November 1967, Elektra EKS 74013(Stereo)
All songs written by Arthur Lee, except where noted.
(Side A)
1. "Alone Again Or" (Bryan MacLean) - 3:16
2. "A House Is Not a Motel" - 3:31
3. "Andmoreagain" - 3:18
4. "The Daily Planet" - 3:30
5. "Old Man" (MacLean) - 3:02
6. "The Red Telephone" - 4:46
(Side B)
1. "Maybe the People Would Be the Times or Between Clark and Hilldale" - 3:34
2. "Live and Let Live" - 5:26
3. "The Good Humor Man He Sees Everything Like This" - 3:08
4. "Bummer in the Summer" - 2:24
5. "You Set the Scene" - 6:56
[Personnel]
Arthur Lee - lead vocals, guitar
Johnny Echols - lead guitar
Bryan MacLean - rhythm guitar, background vocals (lead vocals on "Old Man" and co-lead vocals on "Alone Again Or")
Ken Forssi - bass guitar
Michael Stuart - drums, percussion
(With)
David Angel - arranger, orchestrations
Strings - Robert Barene, Arnold Belnick, James Getzoff, Marshall Sosson, Darrel Terwilliger (violins); Norman Botnick (viola); Jesse Ehrlich (cello); Chuck Berghofer (string bass)
Horns: Bud Brisbois, Roy Caton, Ollie Mitchell (trumpets); Richard Leith (trombone)
Neil Young - arranger on A4
Carol Kaye - (possibly) bass guitar on A3 and A4
Don Randi - piano on A3 and A4 and B4??
Billy Strange - guitar on A3 and A4
Hal Blaine - drums on A3 and A4
(Production)
Bruce Botnick and Arthur Lee - Producers
Bruce Botnick - Engineer

 デビュー作『ラヴ』とセカンド・アルバム『ダ・カーポ』を「最高傑作で名盤と定評あるサード・アルバム『フォーエヴァー・チェンジズ』より素晴らしい」とさんざん褒めておきながら、『フォーエヴァー・チェンジズ』と2003年のアーサー・リー復活作(ラヴ名義)『ザ・フォーエヴァー・チェンジズ・コンサート』(ライヴCDとDVDの2枚組)を堪能すると、やはりアルバムのトータル性とムードの完璧さでは比類ないアルバムと思わざるを得ない。
 1967年の発売当時は全米154位が最高位で、デビュー作やセカンド、次作『フォー・セイル』より低かったが、全英チャートでは24位まで上がって、むしろイギリスで評価が高かった。1979年の『ローリング・ストーン・レコード・ガイド』初版で★★★★★の最高評価を得てからは、『フォーエヴァー・チェンジズ』は再評価が高まり(その後の新版でも★★★★★)、英モジョ誌の「ベスト・サイケデリック・アルバム」で2位、同誌1996年1月号のロック名盤100選では11位。1998年の英Q誌の読者投票ではロック名盤100選では82位、2003年11月の米ローリング・ストーン誌名盤500選では40位、同年の英ニュー・ミュージカル・エクスプレス誌のオールタイム・ベスト・アルバムでは6位、2005年の英テレビ局チャンネル4の名盤100選では83位、2005年にアメリカで話題になったポピュラー音楽ガイド『生きているうちに聴いておきたいアルバム1001枚(1001 Albums You Must Hear Before You Die)』に入選、2008年にはグラミー賞の殿堂入りアルバムとなり、2012年には全米録音遺産(National Recording Registry。同年のポピュラー音楽部門はボ・ディドリー、グレイトフル・デッド、プリンスが同時受賞。翌年はオーネット・コールマンピンク・フロイドが受賞)に指定されている。

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 (Original "Forever Changes" LP Liner Cover)
 ローリング・ストーン・レコード・ガイドではモット・ザ・フープル『モット(革命)』1973のムードの完璧さを『フォーエヴァー・チェンジズ』に比較しているが、適切な評価だろう。トータル性なら『サージェント・ペパーズ』や『ベガーズ・バンケット』があるではないかと誰もが思うが、ラヴやモットのようにどこか負け犬っぽいバンドならではの良さがあるのだ。ザ・バンドのセカンドがやっとかもしれない(サード・アルバム以降ザ・バンドはバランスを崩してしまう)。スプーキー・トゥースの『スプーキー・トゥ』1969だとなお良い。『フォーエヴァー・チェンジズ』『スプーキー・トゥ』『モット(革命)』と年代順に並べると、ほとんど同質の挫折感を感じる。トゥースやモットと較べると、『フォーエヴァー・チェンジズ』1作で不朽の名盤認定されたラヴはましなのかもしれない。
 このアルバムはA4あたりまではいいが、A5、A6あたりからだんだん規則的に循環する曲想ではなくなってきて、B面になると不可塑的な構成の曲が連続していき、デビュー作と『ダ・カーポ』の明快な構成の名曲とは異なった曲づくりがされているのに気づかないではいられない。かといってメドレー的、ミニ・オペラ的というほど1曲の中で飛躍した展開があるわけではないが、一聴してAメロBメロ・サビ、AメロBメロ・サビ、ブリッジ、AメロBメロ~というようなポップスならではの快適でシンプルな構成が稀薄で、サウンド的にはラヴとしては初のストリングス・セクションやブラス・セクション(共同プロデューサーのブルース・ボトニックのアイディアらしい)の導入でポピュラー色がこれまでのラヴ作品より強いにもかかわらず、作曲は複雑になっているためリスナーの印象にはだまし絵的効果が働くようだ。

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 (Original "Forever Changes" LP Label)
 現在スタンダード・エディションになっている2001年のリマスター盤には、7曲のボーナス・トラックが追加されている。
Bonus Tracks (2001 Reissue)
1. "Hummingbirds" (Demo)
2. "Wonder People (I Do Wonder)" (Outtake)
3. "Alone Again Or" (Alternate Mix)
4. "You Set The Scene" (Alternate Mix)
5. "Your Mind And We Belong Together" (Tracking Session Highlights)
6. "Your Mind And We Belong Together" (Single A-side, June 1968)
7. "Laughing Stock" (Single B-side, June 1968)
 このうち1はB3のアコースティック・インスト・デモ、2はアルバム未収録曲でサウンドもヴォーカルもほぼ完成型にあり、単独で聴いても堪能できる名曲だが『フォーエヴァー・チェンジズ』には明るすぎる、という理由で未収録になったと推定されている。11曲43分あるアナログ盤にこの曲は追加できない。6は『フォーエヴァー・チェンジズ』のメンバーのラヴが最後に残したシングル独自曲で、7はそのB面曲。5は9分あまりある6の制作過程を編集したものだが、ラヴ版『グッド・ヴァイブレーションズ』または『ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー』と呼ばれるだけある凝ったロック組曲で、何と44テイクを経て完成している。
 このシングル『ユア・マインド・アンド・ウィ・ビロング・トゥゲザー』は傑作で、シングル1曲4分半で『フォーエヴァー・チェンジズ』に匹敵するものと言って良い。ストリングスもブラス・セクションもスタジオ・ミュージシャンのサポートも入らない。
 アーサー・リーとブライアン・マクリーン以外の3人は『フォーエヴァー・チェンジズ』録音開始時にはほとんど演奏できない体調で、A3、A4がスタジオ・ミュージシャンとリーだけで完成されてしまったのにショックを受けて戻ってきたそうだが、その頃にはストリングスとブラス・セクションの全面的導入がプロデューサーのリーとボトニックの間で決定していた。A1の鮮やかなブラス・セクション、A3のメロウなストリングスなしにこのアルバムを考えるのは難しい。だからバンドとしてのラヴの傑作はデビュー作と『ダ・カーポ』と思えるのだが、最後にこのシングルが残されていて良かった。次作で再結成されたラヴはリー以外のメンバーは全員総入れ替えになっていた。
Love - Your Mind And We Belong Together : https://youtu.be/asU5mWc6xrc