人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

蜜猟奇譚・夜ノアンパンマン(7)

 それほど大きくはないんですね、とトレイに並んだ焼きたての乳頭の前に連れて行かれ、それに一応色あいもあんパンの皮の褐色をほんのりピンクにしたくらいだな、とアンパンマンは思いました。かたちも普通のあんぱんと変わりはなく、顔もいつものアンパンマンの顔立ちです。なーんだ、とカレーパンマンも自分の新しい顔を見て、違うのは表面がゴムみたいになっているだけじゃん。しょくぱんまんもそうだろ?そうですね、といつも二枚目呼ばわりされているのでナルシシストの気がないでもないしょくぱんまんは、まあ小さな違いなら気にすることはないか、と思いながらしぶしぶ肯定しました。いや、ゴムではないんだよ、とジャムおじさん、もっと吸水性と放散性のある、人肌に近い柔軟な仕上がりにしておる。哺乳瓶の乳首みたいなものというか、そのものだな。この成形技術の完成には6年の歳月がかかっておるのだ。小学校に入学した児童が中学校に進学するほどの時間だぞ。
 大変だったのよ、とバタコさんもにこにこしていました。わん、とチーズ。バタコさんは永遠の17歳(推定)だけど、チーズっていったい何歳なのかな、とアンパンマンたちは思いましたが、気づいた時にはもうここにいた、としか思い出せないのです。
 カレーパンマンの顔はやっぱりカレーパン色に、しょくぱんまんも同様に、ただしやはりほんのりピンク色が透けていました。それは乳頭だからさ、とジャムおじさん。でもどうやって人にあんパンリキッドを吸わせればいいんですか?ああ、こんな具合だよ、とジャムおじさんはバタコや、と声をかけました。はい、とバタコさんはトレイの上に天井向きに置かれたアンパンマン乳頭に近づくと、むんずと頬の部分を両手でつかみ、揉みしだきながらアンパンマン乳頭の中央付近、ほぼ鼻に当たる部分に唇を寄せると、舌でたっぷり中央部分を唾液で湿し、唇をかぶりつかせると舌でなぶりながら、音を立てて吸い上げました。それまで丸みをおびた程度に平たかった乳頭の中央がみるみるうちに隆起し、顔を紅潮させながらバタコさんが口いっぱいに頬ばってもさらにはちきれんばかりに膨張して、乳頭の中央以外の全体もふっくらとひと回り以上にふくらんでさらにピンク色を増し、バタコさんが飲み込みきれないほど溢れた液汁が唇のまわりからこぼれ、トレイの上のアンパンマン乳頭が思わずああーん、とあげるむせび声がパン焼き場に響きました。