ついに何もかもがなかったことにするしかなくなったな、とジャムおじさんは言いました。まずまだ来ていないしょくぱんまんを消そう、知らないうちに消されてしまうのは一種の慈悲みたいなものだからな。そしてジャムおじさんは宣言通りしょくぱんまんの存在を消し去りました。それとともにしょくぱん山も食パン工場も、しょくぱんまんのパン配達車も消滅しました。われわれの記憶にはまだしょくぱんまんの思い出がある、だが全員がこれから思い出もろとも消えていくのだから、どのみち同じようなことだからな。
次にほとんどこの物語には関わりがなかったが、メロンパンナちゃんとクリームパンダちゃんに消えてもらおう。メロンパンナちゃんはアンパンマンの妹、さらにクリームパンダちゃんは末っ子としてパン工場のアイドルキャラクターを目的に作られた非戦闘用員で、いわばいてもいなくてもいいパン工場のお飾りでした。メロンパンナちゃんとクリームパンダちゃんもまたジャムおじさんによってその存在を消し去られました。これでよし、なかったことになった、とジャムおじさんは静かに、なにごともなかったようにひとりごちました。
つぎにバタコや、お前ももう思い残すことはないはずだ。私がもう何十代目のジャムおじさんなのかわからないのと同じく、お前もいったい何十代目のバタコなのかは私にもわからない。だがその連鎖も今のお前の代で終わる。もうお前はバタコである必要はなく、そればかりかどのようにもお前の存在そのものがこれ以上の存続を必要としていないのだから。それはお前自身もその日が近いとうすうす感づいていたはすだ。ジャムおじさんが宣告するまでもなく、バタコさんの姿は時空のすべてから、あとかたもなく消滅しました。
カレーパンマンはアンパンマンの寝室で巨大な乳頭に縛られていました。当然カレーパンマンはジャムおじさんの目的を知りませんでしたから、ようなくジャムおじさんがにっちもさっちもいかない現状をどうにかしてくれるものと思い、疑いのかけらもない喜色満面なおももちで口を開きかけました。ジャムおじさんは無造作にぶら下げていた散弾銃をカレーパンマンに向けると、次の瞬間カレーパンマンの首はあとかたもなく吹き飛んでいました。
次はお前だぞアンパンマン!とジャムおじさんは叫びましたが、その声は静まり返ったパン工場に響くだけでした。アンパンマン、隠れていないで出てこい!