人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

蜜猟奇譚・夜ノアンパンマン(37)

 全部お前の仕業だったんだな、本物のアンパンマンをどこへやった!?とカレーパンマンはいちるの期待を込めて詰問しましたが、さあねえ、これじゃないの?とばいきんまんは棒の先でカレーパンマンと一緒に縛られている巨大乳頭を突つきました。あン、と情けない悲鳴をあげる乳頭。とぼけるな、これのどこがアンパンマンなんだよ!?とカレーパンマンも食い下がりましたが、おれたちだってこんなことになっているからやって来たんだもんね、とばいきんまんはちら、と監視カメラの方を見ました。パン工場の中には、あらゆるところにばいきんまんの監視カメラが仕掛けてあるのは、仲間の誰もが知っています。私たちには隠すことなどないからね、かえってこちらの様子がつつぬけの方がばいきんまんの出方も予想ができるというものだ。というのがジャムおじさんの意見であり、ジャムおじさんがこうと決めたらもう、誰もそれには逆らえません。
 その頃別室では監視カメラが、せっせと後背位でバタコさんをいそいそ犯すジャムおじさんを録画しておりました。ほーらバタコや、こんないやらしい姿が隠しカメラで撮られているんだよ、と鼻息も荒いジャムおじさん、どうだい、恥ずかしいだろう?いやッ!……と期待通りの反応を返すバタコさん。こうした状況でいっそう興奮するのも、ジャムおじさんとバタコさんが露出症の性癖のある変態気味の性的嗜好を共有しているからであって、あながちばいきんまんが悪いとはいえません。ただしジャムおじさんたちから思わぬ変態性癖を発現させてしまったとはいえますが、こんな隠し撮りをしておきながら大して悪用もしないのがばいきんまんの悪の器量の小ささではありました。もっともジャムおじさんはこの世界では神聖にして不可侵な存在ともいえ、スキャンダル映像が出回ろうが本人に何の反省もなかろうが、誰ひとり心配しないことでした。
 ガレージでは、しょくぱんまんがまた車庫入れにしくじってケッ、っと悪態を吐き捨てていました。しょくぱんまんはひとりきりの時までエレガントではないのです。今朝の事態を考えるとパン工場に戻ってくるのは憂鬱でしたが、パン配達とパトロール中に何か好転しているかもしれません。カレーパンマンに見張りをさせて、ジャムおじさんがバタコさんを犯しているかもしれないな、としょくぱんまんは考え、くすりと笑いました。それも特に珍しくはない。ただしあの乳頭は別です。