人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

蜜猟奇譚・夜ノアンパンマン(49)

 しょくぱんまんがするセックスはすべてジャムおじさんのまねごとでした。それはしょくぱんまんがセックスについて傍受した監視カメラで盗み見したジャムおじさんのセックスしか知識がなかったからです。それほどこの世界には性知識というものが普及していなかったため、セックスは一部の特権的な住民のなかで極秘情報として高価で伝授されているものになっていました。にもかかわらず目立った人口減少が見られないのは、この世界ではセックスによらない妊娠や出産はごく普通のことでしたし、住民たちはほとんど不死に近い存在だったからです。さらに労働とはほとんど趣味のためにあるのにすぎず、銀行残高は無茶な浪費でもしないかぎり自動的に一定額に補充されていました。そもそも貨幣経済そのものがこの世界では貨幣というものがある世界のまねごとでしかありませんでした。これらの条件を持ってこの世界はユートピアと言えるのでしょうか?それともユートピアがあるとしたらこうした世界のことを指すのでしょうか?しかしユートピアの定義とは帰納的なものなのか、それとも演繹的なものなのかを誰が決められるのでしょうか?
 ですが今はそんなことはさておいて、しょくぱんまんがセックスに満足したかです。しょくぱんまんはカーセックスで背面騎乗位に挑むというきゅうくつな行為をいちごミルクちゃんに強要していましたが、しょくぱんまんの名誉のために念のためにおことわりしておくとカーセックス自体はしょくぱんまんが強要したものではありませんでした。パン工場に戻るのがおっくうで、なにしろパン工場では(1)ジャムおじさんとバタコさんが縛られたままセックスをしている、(2)カレーパンマンが人間大(?)の乳頭に縛られて悶々としている、(3)さっきまでジャムおじさんとバタコさんに変装していたばいきんまんドキンちゃんが何か企んでいる、と本来なら正義の味方が正さねばならないことが待ちうけているからです。しょくぱんまんに落とされない女子は世界には既婚女性しかいませんし、既婚女性ですらしょくぱんまんが本気で攻めればいちころでしたから、いちごミルクちゃんが餌食になったのも不可抗力のようなものでした。いやー、処女だったかなとしょくぱんまんは体位を変える時に赤く染まった部位を見て思いましたが、いや、相手はイチゴだぞ、と思い直しました。いやはや、ひどい男です、しょくぱんまんさまったら。