人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

眞・NAGISAの国のアリス(77)

 あと4回。
 甲冑の騎士の一群は泥濘地を越えた草叢とその奥の森を厳重に警備しているようでした。
 見ろや鉄兜や、と大ノッポは感に堪えたように言いました、しかも全身甲冑や。あれは総重量は何10kgもあるんやで。しかも、当然動けなければ意味ないから肝心な関節や首周りは露出しているかせいぜい革つなぎにするしかあらへん。中距離、遠距離で石つぶてや槍を防ぐには丈夫でも、近接戦闘だと甲冑の重さによろけながら首の斬りあいになるのがオチや。人間魚雷が突進する棺桶ならば、甲冑なんぞは死闘用の拘束具や。まともな精神状態で着られるものやあらへん。
 敵を近づけなくちゃいいんじゃないの?とチビ。大砲とか銃撃戦にすれば、近接戦闘にはならずに済むんじゃないかなあ。
 時代が違う、と大ノッポ、全身甲冑は火薬兵器の開発よりも前の時代の防具やで。それに仮に爆弾で攻撃されてみい。手足も首も吹き飛んで血だらけの中身の詰まった樽のような甲冑がごろごろ転がるだけや。
 戦艦大和の最後のように?
 戦艦大和の最後のように。直接爆撃を受けて被弾した士官室に下士官が駆けつけると、手足も首もないダルマのような胴体が血を噴いていた。それでも民間人殺傷と較べれば戦死に分類されるだけいい。
 1944年11月24日~翌3月9日 通常兵器による空爆第一期。軍需工場を主要な目標とした精密爆撃の時期。ただし、焼夷弾爆撃も実験的に始められていた。
 1945年3月10日~6月15日 通常兵器による空爆第二期。大都市の市街地に対する焼夷弾爆撃の時期。
 1945年3月10日 東京大空襲
 1945年3月12日 名古屋大空襲
 1945年3月13日 大阪大空襲
 1945年3月17日 神戸大空襲
 無差別爆撃。
 1945年8月6日、広島市ウラニウム原子爆弾リトルボーイ投下。
 1945年8月9日、第1目標の小倉市上空が八幡空襲による靄で視界不良だったため、第2目標の長崎市プルトニウム原子爆弾ファットマン投下。
 戦争は知らない、と大ノッポがつぶやきました。だってぼくらは……
 私は知っている、とアリスは言いました。1852年生まれの私は28歳で結婚して3人の息子アラン、レックス、キャリルを生んだ。第1次世界大戦は1914年に始まり、1918年の終戦前にアランとレックスは戦死した。そして私は戦争未亡人と再婚した私の三男を生涯許さなかった。許せるものですか。