人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

偽ムーミン谷のレストラン・改(13)

 ムーミンは退屈になってきたので考えごとでもしてヒマつぶししようと思いつきました。たとえば国勢調査などの統計調査で、回答者が年齢や生まれ年を、キリのいい数字(典型的には下1桁が0や5である数字)や、文化的に好まれる思える数字(よくある例ではサバを読んだりその逆だったり、縁起の良い年生まれとしたり)で不正確に報告することがあります。ウィップル指数とは人口統計学で用いられる指標で、そういった統計が年齢や生まれ年を不正確に報告する傾向を測る方法のひとつとして知られます。それは人口ピラミッドなどの年齢統計で0または5で終わる年齢が特に値が突出して多くなるという、エイジ・ヒーピングと呼ばれる現象に基づいています。それは自分の年齢を正確に知らない人が自分の年齢を回答する場合、自分の年齢に近いと思われる、切りの良い数字で回答することが主な原因となります。この現象は発展途上国の統計に多く見られますが、発展途上国の場合でも十二支が社会的習慣として浸透している国では必ずしもそうとは限りません。エイジ・ヒーピング(10進法とその中間値としての0、5)が診られる統計結果では末尾が0または5の回答を全人口に平均化すれば完全値に近い精度が求められる、というのがウィップル指数の考えで、これが完全値との偏差の大きい統計ほど回答の平均値を許容値の中心とすると、非常に不良、不良から、比較的正確、非常に正確まで信憑性・精度を判定できるとするのがウィップル指数の応用による人口統計学の基本になっています……
 ああ喉が乾いた、とムーミンは(思っただけですが)思いました。思いついた飲み物はマヨネーズでした。マヨネーズ、とムーミンは声に出してみました。まあ言うだけはタダですから。でもパンの耳につければマヨネーズはサンドイッチのスプレッドになる、つまり飲み物じゃなくて食べ物になるわけだ……
 ウィップル指数が統計情報の分析に使えるのは一部の哺乳動物だけで、動物一般にはぜんぜん役に立たないのも自明のことです。では応答反応が観測できる生物ならば、バクスター効果が得られる植物であってもウィップル指数による統計分析が可能ではないか。マヨネーズが飲み物にも食べ物にも分類できるように、また概念の実体化であるムーミントロールの谷にも樹木や草花があるように、メタフィジックとフィジカルが両立するシステム環境が観測できるのではないか……