人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

ハリマオ - 猛虎 (リバティ, 1974)

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ハリマオ - 猛虎 (リバティ, 1974)
Released by 東芝EMI株式会社/リバティLTP-85017, August 5, 1974
Produced by 鈴木ヒロミツ
All Songs Arranged by ハリマオ
(Side A)
1. 彷徨 : https://youtu.be/Akmmz7GDc-Y - 3:28
2. すきま風 : https://youtu.be/P_FBaZiP2OU - 2:47 *1974年ライヴ映像
3. 明日になれば - 3:23 *no links
4. 雨 : https://youtu.be/4JIqg02IBD8 - 1:22 *1974年ライヴ映像
5. ルート20 : https://youtu.be/G6udBIiAAyE - 2:58
6. 棘の朝が来る : https://youtu.be/ruX5cxW1Sxo - 2:46 *1974年TV出演映像
(Side B)
1. ジョニーは戦場へいった : https://youtu.be/t46dnEXeFwo - 5:01 *1974年スタジオ・ライヴ
2. 愛しているのに : https://youtu.be/TVZhtC4Hwec - 3:55
3. マリアへの手紙 : https://youtu.be/bMQk3jz2Zb4 - 3:02 *1974年ライヴ映像
4. 忘れて : https://youtu.be/xW4ZUoNoObc - 5:04
5. 朝日は昇らない : https://youtu.be/XRgion59Ido - 5:12
[ ハリマオ Harimau ]
富永正広 - vocal
矢口栄 - vocal
黒沢賢吾 - guitar
安田篤広 - keyboards
藤沢実 - bass
堀内勉 - drums

このバンドの存在は別れた妻から教わりました。「ハリマオって知ってる?」「知らない」彼女もラジオで坂崎幸之助のDJ番組でかかったのを聴いたことしかないといいます。何でもアルフィーのアルバム・デビューがハリマオがデビュー2年目でセカンド・アルバム発表と同期だったのでよく顔を合わせたが、アルフィーがセカンド・アルバムまで4年も(!)かかっている間にハリマオは早くも解散してしまったそうです。興味を持った矢先に、運良く中古レコード店でプロモ・キット(宣伝用資料集)つきのプロモーション・プレスが安く見つかったので、LPを買ってきました。
内容はあっけにとられるようなものでした。ウケ狙いとしか思えませんが本気で勝負しているのは明らかで、部分的には成功していますが全体的には大失敗と言うしかありません。アルフィーと似た売り出され方だったのはドラマティックでメロディアスな歌謡ロックとしてのポピュラリティを見込まれたのでしょう。スタイルはツイン・ヴォーカルにヘヴィなオルガン・ハード・プログレッシヴ・ロックで、後にクリスタル・キングが似たスタイルで歌謡ハード・ロックのヒットチャート・バンドになりましたが、ハリマオの場合はヴォーカル2人の個性にクリスタル・キングのような対照的で巧みな役割分担がないのでツイン・リードヴォーカルの必然性が弱いのです。
(Original Toshiba-EMI/Liberty "猛虎" LP Liner Cover)

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 ロック・バンドのハリマオについて触れている某サイトで簡潔にまとめられたプロフィールを引用させていただくと、

ハリマオ●トミー(富永正広)とニャロメ(矢口栄)のツイン・ボーカルを中心としたハード・ポップ・グループ。74年、元モップス鈴木ヒロミツ氏のプロデュースにより東芝からレコード・デビューする。同時に『ぎんざNOW!』レギュラーとなり、番組テーマ・ソング「ヤング・イン・テレサ」を担当、エリック・クラプトンなど、外タレ来日公演のオープニング・アクトにも多く指名された。なお、トミーはGS出身者であり、「ジェット・ブラザーズ」「ボルテージ」という、二大カルト・グループを経験している希有な人物。

となります。筆者入手のプロモーション盤のプレス・キットには、とにかく本格的な力量のあるヴォーカリスト2人に屈指の実力派楽器メンバー4人がブリティッシュ・ロックを基本に世界に通用するグループを目指す!と何処のバンドでも言いそうなことが書いてありました。プレス・キットに影響源としてメンバーたちが上げている筆頭がユーライア・ヒープで、アルバム『猛虎』を聴きながら宣伝資料を読んでのけぞったのもそこです。ハリマオの曲はどれも初期3枚のユーライア・ヒープ、特にシングル・ヒット曲に元ネタがあるのです。「Gypsy」や「Bird of Pray」「Look At Yourself」などに日本語の歌詞をつけ少し歌メロを変えただけ、というほどで、ヒープのヴォーカリストのデイヴィッド・バイロンが入ったらハリマオの演奏でそのままヒープの曲を歌えてしまうくらいのトレースぶりです。
(Original Toshiba-EMI/Liberty "猛虎" LP Inner Lyric Sheet)

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 完全にヒープの日本語版と割りきれば(筆者は70年代ヒープのファンだから許します)歌唱力も演奏も申し分ないのですが、A面6曲・B面5曲という中途半端なコンパクト化が主な失敗の原因になっています。ハリマオが結成された1973年は3月にユーライア・ヒープの来日公演があり、ヒープ自体もベスト・メンバーの絶頂期でした。1970年のデビューから1973年までのスタジオ盤5作と2枚組ライヴまでがヒープの黄金時代です。ハリマオのアルバムはインストルメンタル・パートの少なさでヒープのアルバムより聴きごたえが乏しく、ヒープの場合はLP片面当たり3~4曲が基本でスリリングな楽器アンサンブルの応酬がありました。演奏時間にしてたかだか2~3分インスト・パートを設けてあるだけですが、それだけで演奏の広がりがまったく違うのがユーライア・ヒープとハリマオを聴き較べると痛感されます。
ですがハリマオの場合は曲のコンパクト化も、またインストルメンタル中心パートをヒープほど持ち込まないヴォーカル偏重のアレンジも、ハリマオのメンバーの自発的意志でもなければプロデューサーに抜擢された鈴木ヒロミツの指示でもなく、テレビ出演を中心に歌謡ロック・バンド路線で売り出したかったマネジメントの意向が強かったのではないかと思われます。それは後出のライヴ音源を聴けば、ハリマオはライヴではスタジオ盤よりずっとスケールの大きい演奏ができるバンドだったことでもわかるのです。
(Original Toshiba-EMI/Liberty "猛虎" LP Side A & B Label)

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 今回ハリマオを取り上げようと思い立って調べたら、なんとハリマオのオフィシャル・サイトを見つけました。現在は中心メンバー3人をレギュラーに、ライヴのたび6人編成を組み2005年以来再結成活動中とあり、結成40年を越えると思うと頭が下がります。
●ハリマオ・オフィシャル・ホームページ : http://www.harimaumusic.com/
また、オフィシャル・ホームページではライヴ音源・映像・資料を募集しており、1974年のデビュー・アルバム発表後のコンサート音源はここで聴けます。
●ハリマオ-HARIMAU 1974.11.8 中野サンプラザ - I : https://youtu.be/mmvoZPgYyWA - 59:30
●ハリマオ-HARIMAU 1974.11.8 中野サンプラザ - II : https://youtu.be/OSO0ble8GSE - 31:37
他にセカンド・アルバム『イチかバチか』1975.9発売半年前の1975年のコンサート音源も公開されており、この74年・75年の中野サンプラザ音源は音質の良さからもバンド所有と思われます。ハリマオは活動中の知名度は高かったのに解散後にはなかなか再評価されず、『猛虎』が25年前に1度CD化されましたが以降廃盤のままです(東芝EMI, TOCT-5748/ロックコレクターズシリーズ)。スタジオ盤2作、中野サンプラザ音源74年/75年がきちんとCD化されてもいいくらい面白い存在で、音楽性は四人囃子カルメン・マキ&OZと同じ方向を目指していました。ライヴ音源とスタジオ録音を聴くと、うまい辺りに落とし込むことができればもっと記憶されるアルバムが作れたバンドだったろうにと惜しまれます。
●ハリマオ-HARIMAU 1975.3.21 中野サンプラザ‐I : https://youtu.be/zwxomU4sAW0 - 1:01:01
●ハリマオ-HARIMAU 1975.3.21 中野サンプラザ‐II : https://youtu.be/tQLJ24P8SsA - 36:59


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