5万年前は日本列島は存在しなかった。ユーラシア大陸最東端の一部でしかなかった。海抜の高い西日本部しか海面上にはなかった。関東平野は存在しなかった。海の中だった。現東京都も海の中だった。神奈川県も山岳部以外は海中で、現横浜市も現川崎市も海中にあった。東岸部の都市はすべて海中だった。
10万年前～7万年前の間にホモ・サピエンスが現アフリカ大陸から出て世界各地に広がった。これは人類アフリカ単一起源説を裏づけるものとされる。当時は大陸各地域は地続きだった。8万年前に温暖化による海面の上昇が起こり、世界各地の大陸化が進行した。
7万3千年前から地球の温度が年間3～4度低下し、世界人口は1万人以下に減少して各地に適合した人種だけが残った。人類は衣服を着るようになった。ヨーロッパ人と日本人が分岐したのは8万年前～6万年前の間とされる。
5万年前は後期旧石器時代で、代表的な種族にクロマニヨン人がある。隕石がアメリカ大陸に衝突して現アメリカ州アリゾナのクレーターが形成された。オーストラリアに人類が渡島したのが4万5千年前。3万年前にはネアンデルタール人が絶滅した。最古の洞窟壁画も3万年前のものと測定される。
3万年前～2万年前にユーラシア大陸から氷河期時代で地続きになっていたベーリング海峡からモンゴロイドが無人だったアメリカ大陸に渡る。モンゴロイドは1万年前には南アメリカ大陸まで進出した。
2万年前にピークを迎えた氷河期から1万5千年前にかけて温暖化が進み海面が上昇、この頃に人は犬を家畜とすることを覚えた。そして約1万3千年前、日本列島は完全にアジア大陸から離れ、1万年前～8千年前の間に日本列島周辺の海洋環境が現在とほぼ同一のものとなった。
5万年前は海の中だった土地で人は区画を区切り、商品化し、売買し、所有権を争う。地史学の基準からは人の一生はあまりに短いから人は土地を買った気になり、貸し借りした気になり、売った気になる。だがこの国の土地は、特に都会は、ほとんど5万年前には海の中にあったものでしかない。地球の歴史からは、人は地上をさ迷う幽霊でしかない。
