人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

ヴェルヴェット・アンダーグラウンド V.U. - Live at School of African & Oriental studies (Captain Trip, 2001)

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ヴェルヴェット・アンダーグラウンド V.U. - Live at School of African and Oriental studies, London, UK (Captain Trip, 2001) Full Concert : https://youtu.be/xrkkPm59YXg
Recorded Live at School of African and Oriental studies, London, UK, November 5, 1971
Released by Captain Trip Records JP, CTCD350, August 2001 from 4CD Box Set "Final V.U. 1971-1973"

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All songs written by Lou Reed except as noted.
(Tracklist)
1. Chapel of Love (Barry, Greenwich, Spector) - 1:35
2. I'm Waiting for the Man - 5:53
3. Spare Change (Alexander) - 3:50
4. Some Kinda Love/Turn On Your Love Light (Reed/Malone, Scott) - 12:46
5. White Light/White Heat - 5:49
6. Pretty Tree Climber (Alexander) - 5:32
7. Rock and Roll - 4:42
8. Back on the Farm (Alexander) - 6:48
9. Dopey Joe (Yule) - 3:02
10. Sister Ray/Never Going Back to Georgia (Reed, Cale, Morrison, Tucker/Alexander) - 13:15
11. After Hours - 3:27
[ V.U. aka The Velvet Underground ]
Doug Yule - vocals, guitar
Willie Alexander - keyboards, vocals
Walter Powers - bass guitar, backing vocals
Maureen Tucker - drums, lead vocal on 11

(Original Captain Trip 4CD "Final V.U. 1971-1973" Disc 1 Liner Cover & CD Label)

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 2001年にこの日本のキャプテン・トリップ・レコーズからの4枚組CDボックスセット『ファイナルV.U. 1971-1973』が発売された時には誰もがのけぞったものです。キャプテン・トリップは'90年代にオリジナル・アモン・デュールの世界初正規CD再発を手始めに、主にジャーマン・ロックを直接原盤権を持つメンバーを突き止めて再発売してきたサイケデリック/アシッド・ロックのリイシュー・レーベルでしたが、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの未発表ライヴ・ボックス、しかも誰も顧みないルー・リード脱退後のライヴばかりを4枚組のヴォリュームで発売するなど盲点を突く企画もいいところです。ブックレットを見るとリード脱退後に唯一最後までバンドを引っ張っていた後期メンバーのダグ・ユールがヴェルヴェットの半公式ウェブサイトを運営しており、そこに寄せられたオーディエンス録音とエア・チェック録音がソースになって組まれたボックスで、アーティストはリード脱退後の歴代参加メンバー9名全員の連名にしてあります。アルバム・タイトルも『Final V.U. 1971-1973』としており、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの名前はオフィシャルな商標登録があって使えないのでしょう。ダグ・ユールがウェブサイトでヴェルヴェットを名乗る程度ならファンサイト同様非商業使用で済みますが、正規CD化となるとまずいわけです。それでも日本盤限定のこのボックス・セットは世界のヴェルヴェットのリスナーの注目を集め、ウィキペディア英語版やallmusic.com、discogs.comなど代表的なディスコグラフィー・サイトにはちゃんとヴェルヴェットの正規作品として登録されることになりました。「初回限定BOX仕様」とありますが2001年の発売なのにまだ初回限定版が新品で販売されており、「メーカー希望価格¥8,500」と完全未発表ライヴ音源4枚組ですからまずまずの価格設定ですし、なにしろ元が観客録音ですから限界はありますが最良のリマスタリングで聴くに耐える音質になっており(今回の音源でも曲の途中でテープ交換のために音が途切れる箇所があり、なんとか編集でつながっています)、ボックスも堅牢で全歌詞とダグ・ユールの書き下ろし回想録の原文と全訳が掲載されたブックレットも丁寧な作りですが、現在は通販サイトで中古なら2千円前後、未開封の新品でも3千円前後で流通しており、いったいどれだけプレスされ売り上げがあったか心配になってしまいます。キャプテン・トリップが正規再発、または発掘・新録発売してきたサイケデリック/アシッド・ロックのアーティストは正規CDの倍以上の価格設定の海賊盤が横行していたのをきちんと版権を取得した再発盤で海賊盤を一掃してきたのですが、ルー・リード脱退後のヴェルヴェットについては海賊盤すら出ていなかったので(ダグ・ユールがリーダーになってからのヴェルヴェット音源など誰も欲しがらなかったからですが)、リード脱退後の唯一のスタジオ録音アルバム『Squeeze』Polydor UK, 1972.3は廃盤LPもヨーロッパ盤と日本盤がありプレス枚数は相当あったらしく入手は容易ですが大してプレミアもつかない不人気盤で、2012年にようやくイギリスのインディー・レーベルKismetからLPとCDで再発売されましたが「版権所有者が不明のため非公認再発売せざるを得ませんでした。版権所有者、またはご存知の方は当社ウェブサイトにお知らせ下さい」と注意書きがありました(原文英文)。おそらくキャプテン・トリップ始め幾つものインディー・レーベルが『Squeeze』を正規CD再発しようとして版権不明の壁に突き当たり実現してこなかったのでしょう。『Squeeze』は事実上ダグ・ユールのソロ・アルバムがヴェルヴェット名義で発売されたものですがユール本人には当然当たったでしょうし、その上で版権不明になっているわけですから(おそらく当時のマネジメントが権利保有者と思われますが)、キスメットは版権を法的にクリアできるアルバム発売40周年まで待って再発売に踏み切ったものと思われます。存在だけは知られているものの聴いている人は滅多にいない問題のアルバム『Squeeze』は、また回を改めてご紹介します。
 ルー・リードが1970年8月に脱退し9月にリード在籍時最後のアルバム『Loaded』がリリースされると、マネジメントはバンドにアルバムのプロモーション・ツアーを命じました。バンドにはオリジナル・メンバーのスターリング・モリソン(ギター)、産休から復帰したモーリン・タッカー(ドラムス)、サード・アルバムからの後期メンバーのダグ・ユール(ベース、ヴォーカル)が残っており、リード・ヴォーカルを取れるのはユールしかいないのでユールはベースからギターに周り、昔のバンド仲間のウォルター・パワーズをベースに迎えてプロモーション・ツアーをこなします。この時期のライヴ音源は残っていないようです。スターリング・モリソンは1971年前半までに教職資格取得のためバンドを脱退し、1971年10月からのツアーはモリソンの後任にやはりユールの昔のバンド仲間のウイリー・アレキサンダーをキーボードに迎えた編成で行われました。『ファイナルV.U. 1971-1973』に収められている4枚・4回のライヴ音源のうち1971年11月5日のロンドン(ディスク1)、同月19日のアムステルダム(ディスク2)はこのメンバーです。ヨーロッパ・ツアー中、1972年3月にダグ・ユール以外のメンバー不参加で現地のセッション・ミュージシャンをバックに制作されたロンドン録音のアルバム『Squeeze』が発売されると、マネジメントはユール以外のメンバーを帰国させてユール+イギリス人メンバー3人で7回のイギリス国内のプロモーション・ツアーを履行させます。ツアー最後の1972年12月6日のウェールズ公演がボックスのディスク3に収められており、事実上ヴェルヴェットは空中分解した形になりました。アメリカ帰国後のダグ・ユールはモーリン・タッカー産休中にドラムスを勤めた経験のある弟ビル・ユールをドラムスに、またまた昔のバンド仲間の新メンバーをギターとベースに迎えてバンドを再編しますが、マネジメントからヴェルヴェット名義のライヴ活動を依頼されて引き受けてしまいます。ディスク4の1973年5月27日のマサチューセッツ公演がそれで、このディスク4にはディスク2のアムステルダム公演からラジオ放送されたエア・チェック録音4曲がオマケについています。1974年のリード在籍時の発掘ライヴ・アルバム『1969』の発売によってヴェルヴェットは正式に解散を確認されることになるのですが、それと共にヴェルヴェット=ルー・リードのワンマン・バンド、というイメージも定着してしまったのがユールの不運でした。このライヴ・ボックスの主役はヴェルヴェットのファンからは良く思われていないダグ・ユールですし、元メンバーを含むトリビュート・バンドに過ぎないとも言えますが、こうして聴くとギターに転向したユールのプレイもルー・リードほど奔放ではありませんが聴き所があり、少なくともモーリン・タッカー在籍中の1971年のライヴは1993年のオリジナル・メンバーの再結成ヴェルヴェットよりヴェルヴェットらしい演奏になっています。ユールの声域に合わせてキーを高くしているのが軽い印象を与えて損をしていますが、ユールが全曲を書いたアルバム『Squeeze』からの曲が増える1972年、1973年のライヴではそれなりにユールの新バンドとしての格好がついてきます。今回を始めとして(途中にスタジオ盤『Squeeze』を含み)『Final V.U. 1971-1973』収録のライヴは全編がご紹介できるので、次回も引き続いて同ボックスからお送りしたいと思います。