大スタンダードのこの曲ですが、作者ボブ・ハガートはボブ・クロスビー楽団のベーシストで、1938年にトランペット用のインスト曲「I'm Free」として即興的に録音当日にレコーディング・スタジオで作曲されました。翌'39年にジョニー・バークによって歌詞がつけられ楽曲登録され、クロスビー楽団の歌手テディ・グレースの歌唱で吹き込まれたのが「What's New ?」の最初の歌曲録音です。ミュージカルや映画の主題歌・挿入歌でもなく単発ヒットした実績もないのにスタンダード曲になった例はめったになく、シナトラの決定版ヴァージョンに先んじてペギー・リー、ヘレン・メリルら女性歌手が多く取り上げており、特にビリー・ホリデイが同じ曲をシナトラより早く吹き込んでいる(いつもは逆)のは珍しいことです。
この曲はビ・バップ時代にすでにジャズマン好みの曲になっており、パーカーの急逝直後に早くもチャールズ・ミンガスによって発掘発売された、パーカーの追っかけをしていたトロンボーン奏者のジミー・ネッパーが客席録音したライヴ音源にも収録されていました。
パーカーの10歳年少の愛弟子だったアルト奏者のジャッキー・マクリーンもスウィンギーにアレンジしたヴァージョンを2種録音しています。後から録音されたブルー・ノート盤(バックはソニー・クラーク・トリオ)がすぐ発売され、先に録音されたプレスティッジ盤(バックはマル・ウォルドロン・トリオ)が後から発売されました。マクリーンによると、プレスティッジからは一切ギャラがなかったそうです。
この曲のモダンジャズ・ヴァージョンはマイルス・デイヴィス、ジョン・コルトーン、アート・ペッパー、スタン・ゲッツ、ビル・エヴァンスなど大概の大物ジャズマンが演奏しており、それだけ楽曲にアレンジの工夫が凝らせるポテンシャルがあるのでしょう。アルト奏者のジミー・ライオンズがパーカー・フレーズをばりばりに織り込んで吹きまくる次の演奏は、ビ・バップとフリー・ジャズの親近性を強調してピアノはバド・パウエルのようですし、ドラムスもマックス・ローチを思わせます。
(Tracklist)
A1. What's New - 0:00
A2. Nefertiti, the Beautiful One Has Come (First Version) - 12:11
B1. Lena - 21:22
B2. Nefertiti, the Beautiful One Has Come (Second Version) - 35:43
(CD Bonus Tracks)
5. [Silence, Untitled Track] - 43:50
6. D Trad, That's What - 44:52
[ Cecil Taylor Jazz Unit ]
Cecil Taylor - piano
Jimmy Lyons - alto saxophone
Sunny Murray - drums
Recorded live at the Cafe Monmarre, Copenhagen, October 23, 1962