人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

ペギー・リー Peggy Lee - 時さえ忘れて I Didn't Know What Time It Was (Decca, 1953)

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ペギー・リー Peggy Lee - 時さえ忘れて I Didn't Know What Time It Was (Richard Rodgers, Lorenz Hart) (Decca, 1953) : https://youtu.be/tqk08Q1xyqY - 2:18
Recorded at Decca Studios, 50 West 57th Street in New York City, April 30, 1953
Released by Decca Records DL 5482 as 10-inch album "Black Coffee with Peggy Lee", 1953, also Re-Released DL 8358 as 12-inch album "Black Coffee with Peggy Lee", 1956
[ Personnel ]
Peggy Lee - vocals, Pete Candoli - trumpet, Jimmy Rowles - piano, Max Wayne - bass, Ed Shaughnessy - drums

 オリジナル・ヴァージョンは1939年、ミュージカル『Too Many Girls』のために'37年の「My Fanny Valentine」でもお馴染みの名作詞・作曲家コンビ、ロジャース&ハートが作り、同ミュージカルの映画化('40年)、フランク・シナトラが歌う『夜の豹』'57でも知られますが、ビリー・ホリデイが早くからレパートリーにしており、またチャーリー・パーカーのライヴでの愛奏曲でもあって、ビリー、パーカー、シナトラ共通のレパートリー、しかもそれぞれ名唱名演とあっては白人黒人ジャズ(ヴォーカル、器楽)問わず、ジャズ・スタンダード化して当然です。ソニー・クラークローランド・カークといったジャズマンも取り上げており、ヴァース+AABA'(8+8+8+12)のうちヴァースは省略されることが多いのはミュージカル由来のスタンダード曲共通の現象ですが、ペギー・リー版はヴァースも聴くことができます。この曲も一見易しく、演奏してみるとかなりの難曲で、特に吹奏楽器による解釈ではパーカーやカークのような超人的ジャズマンでもかなり強引なアプローチをしており、カーク版はアルバム『Domino』'62セッションの没テイクとして'80年代にようやく陽の目を見ましたし、パーカーは'49年にストリングス・オーケストラ入りアレンジのスタジオ版を録音したあと、代表的なのはパーカー追悼盤として発掘された'50年収録のライヴ盤『Bird at St. Nicks』'55のライヴ・ヴァージョンですが、好調な演奏ながらもパーカーのもっとも奔放でやばい、フリー・ジャズ一歩手前まで近づいた演奏のひとつです。ソニー・クラークはブルー・ノートのピアノ・トリオ盤('57年)でスウィンギーに解釈した好演でさすがの安定感ですが、これは生涯サイドマン・ピアニストだったクラークの器用な面なので、ホーン奏者とは事情が違うでしょう。
 そこでペギー・リー版ですが、ポピュラー歌手=ジャズ・ヴォーカルだった時勢からジャズ・ヴォーカルともポピュラー歌手とも呼ばれるペギー・リーが、カントリー・ソング系ではないしっかりとしたジャズのフィーリングをつかんでいた歌手だったのを堪能できる快唱になっており、伴奏メンバーも全員白人ジャズ・ミュージシャンですが、黒人ジャズとは違うとしても元来黒人ジャズマンと白人ジャズマンがキャッチボールするようにして発展させてきたジャズの白人ジャズマン側からの完成型を見るようです。ジミー・ロウルズはビリー・ホリデイのピアニストでもあったわけで、ビリーはペギー・リー、またはシナトラのように幸福な商業的成功は生前収められなかった人ですが、それは『ブラック・コーヒー』のような丁寧なアルバム製作を長い間許されなかったからとも言えるので、逆に白人女性ジャズ・シンガーがしっかり黒人ジャズから学んだ成果がこの名作アルバムだったとも見る必要がありそうです。

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Charlie Parker Quintet - I Didn't Know What Time It Was (Jazz Workshop, 1955) : https://youtu.be/9eXHkDQ2ixI - 2:35 (incomplete 'cause omitted trumpet & piano solos)
Recorded at St.Nick's Arena by Jimmy Knepper(possibly), February 18 1950
Released by Jazz Workshop Records as the album "Bird at St. Nick's", JWS-500, 1955
[ Personnel ]
Charlie Parker - alto saxophone, Red Rodney - trumpet, Al Haig - piano, Tommy Potter - bass, Roy Haynes - drums