アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ Art Blakey and The Jazz Messengers - Moanin' (Bobby Timmons) (from the album "Art Blakey and The Jazz Messengers", Blue Note Records BLP 4003, 1958) : https://youtu.be/Cv9NSR-2DwM - 9:34
Recorded at The Van Gelder Studio, Hackensack, New Jersey, October 30, 1958
Originally Released by Blue Note Records, November 1958
Reissued by Blue Note Records as "Moanin' ", 1959
Reissued and Front Cover renewed in 1966
[ Art Blakey and The Jazz Messengers ]
Art Blakey - drums
Lee Morgan - trumpet
Benny Golson - tenor saxophone
Bobby Timmons - piano
Jymie Merritt - bass
Art Blakey and The Jazz Messengers - Moanin' (Studio Live from French TV Broadcast ) : https://youtu.be/uKOoxgI_xfQ - 14:17
Recorded in Paris, France, probably December, 1958
[ Art Blakey and The Jazz Messengers ]
same personnel as Blue Note BLP 4003
言わずと知れたモダン・ジャズの代名詞的1曲。発表当時ブルー・ノートは海外プレス版を許さなかったのでオリジナル・ヴァージョンの日本盤は発売されず、ラジオ放送とジャズ喫茶で人気に火が点くも輸入盤は稀少かつ高価だったので、'58年12月の同一メンバー、アレンジもほぼ同一のパリ公演のメジャーのRCAから発売された3枚組ライヴ盤『サン・ジェルマンのジャズ・メッセンジャーズ』'59が日本発売されてシングル発売され(AB面で「Moanin'」1曲)ようやくお茶の間で手軽に聴けるヒット・シングルになり来日され公演も大盛況、日本でのブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズの人気を不動にしました。ブルー・ノート社も予想外のヒットに初発売時『Art Blakey and The Jazz Messengers』だったアルバム・タイトルを'59年の再プレスで『Moanin'』と改題(ジャケットはそのまま)、'66年の再プレスからはジャケットの文字デザインも変更します。モダン・ジャズのレパートリーは9割方ブルース、循環、スタンダード(そのまま、または改作)で長調なのに、ジャズマンの(ブルース以外の)オリジナル曲は短調が増えるのも興味深い現象で、これは白人ジャズマンやジャズ・マニアがユダヤ系、イタリア系、アイルランド系白人がほとんどで伝統的に短調の好みがあり、ジャズは黒人と白人のキャッチボールで作られていたことから少数民族系音楽の好みが短調で一致したことが大きいのではないか。ジャズのインディー・レーベル主宰者のほとんどはユダヤ系で、短調のオリジナル曲がリクエストされたのではないかと思われます。ブルー・ノートのアルバムはキャッチーなオリジナル曲が売りでしたが、ほとんどは短調のAA'BA'形式の曲でした。日本で編まれるジャズ名曲選のコンピレーション・アルバムなど短調の曲ばかりです。「Moanin'」もその例に洩れません。気づくと短調の曲ばかりが好き、というリスナーは知らず知らず主流を占めるブルース、循環、スタンダード(と改作)から偏向した好みに寄っているので、レスター、ビリー、パーカー、シナトラら本流ジャズからどんどん疎遠になっている。マイルスやコルトレーンのスタンダード・レパートリーはシナトラとビリーばかりですが、「Moanin'」ほどビリーやシナトラ、レスターやパーカーと遠い曲はないでしょう。
しかしメッセンジャーズのジャズの魅力も確かで、メッセンジャーズは'53年の発足以来ホレス・シルヴァー時代、ケニー・ドーハム時代、ジャッキー・マクリーン時代、ジョニー・グリフィン時代と頻繁にメンバー交代がありましたが、天才少年トランペット奏者リー・モーガンとファンキーなピアニストのボビー・ティモンズに、作・編曲家のテナーサックス奏者ベニー・ゴルソンが仕切った'58年のメッセンジャーズは格別です。ゴルソンはこのアルバムと直後のツアーのみで抜け、テナーにウェイン・ショーターが入ってやがてショーター主導でトランペットはフレディー・ハバード、ピアノにシダー・ウォルトン、さらにトロンボーンにカーティス・フラーが入ってよりジャズの最先端を行くバンドになりますが(ショーターはマイルス・デイヴィスがコルトレーンの後任テナーに目をつけていた逸材でしたが、ブレイキーと先に契約していたのです)、「Moanin'」の作曲者ティモンズ(1935-1974)はメッセンジャーズ脱退後アルコール依存症で活動が徐々に鈍り39歳で早逝したのが惜しまれる人でした。ティモンズ自身のアルバムのピアノ・トリオ・ヴァージョンも瑞々しい快演です。
Bobby Timmons Trio - Moanin' (from the album "This Here is Bobby Timmons", Riverside Records RLP 12-317, 1960) : https://youtu.be/cNjRQo-zpKA - 5:09
Recorded in New York City, January 13, 14, 1960
[ Personnel ]
Bobby Timmons - piano
Sam Jones - bass
Jimmy Cobb - drums
さらにこの曲はあろうことかピアノもトランペットもいないテナーサックスにベース、ドラムスだけの編成で、おそらくリハーサルらしいリハーサルもなく、ひょとしたら現地で組んだベーシストとドラマーは何の曲を演奏しているのかも知らない状態でアルバート・アイラーがヨーロッパ遊学中のスウェーデンのジャズ・マニアが自主制作したアイラーの初めてのアルバム・セッションで録音しています。制作費など当然ほとんどないので公民館の音楽室で入場無料カンパ歓迎のライヴ録音(もちろんマニア自前のテープレコーダーの1マイク録音)されました。この時の録音は2枚のLPアルバムに分けられましたが1枚しか発売されず、テスト盤10枚だけプレスされて'89年に日本盤が出るまで幻になっていた方に収録されていたのがアイラー版「Moanin'」です。このジャズの歴史に身の置き所のないとんでもない「Moanin'」、ぜひメッセンジャーズ版とお聴き較べください。
Albert Ayler Trio - Moanin' (rec.'62.10, from the album "The First Recording Vol.2", Bird Note BNLP2, 1962) - Moanin' : https://youtu.be/B7O8f-Kvv_M - 10:13
Recorded Live at Main Hall of Academy of Music, Stockholm, Sweden, October 25, 1962
Originally Recorded & Only 10 Tert Pressing by Bengt Nordstrom's Bird Note Records for the album "Something Different !!!!!! (First Recording)", Bird Note BNLP1(Sweden), 1963
[ Personnel ]
Albert Ayler - tenor saxophone
Torbjorn Hultcrantz - bass
Sune Spangberg - drums