人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

ビル・エヴァンス・トリオ Bill Evans Trio - Porgy (I Loves You, Porgy) (Riverside, 1961)

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ビル・エヴァンス・トリオ Bill Evans Trio - Porgy (I Loves You, Porgy) (George & Ira Gershwin) (from the album "Waltz For Debby" CD Bonus Track, Riverside RLP399, 1962) : https://youtu.be/0Yr4oYyDHn0 - 6:01
Recorded live at the Village Vanguard, New York City, June 25, 1961
[ Bill Evans Trio ]
Bill Evans - piano
Scott LaFaro - bass
Paul Motian - drums

 ビル・エヴァンス・トリオの『ワルツ・フォー・デビー』はピアノ・トリオ作品に限らずモダン・ジャズでももっとも人気の高いアルバムの一つですが、特に1986年のCD化からボーナス・トラックにアンコールで演奏されたアルバム・タイトル曲「Waltz For Debby」と「Detour Ahead」「My Romance」の別テイク3曲、さらに完全未発表曲としてガーシュイン兄弟の『Porgy and Bess』からの絶唱「Porgy (I Loves You, Porgy)」が追加収録されたことでますます人気が高まったと思います。CDへの楽曲追加収録については賛否両論ありますが、「Porgy (I Loves You, Porgy)」がアルバムの最後を締めくくることでこのアルバムは同時収録のライヴ・アルバム『Sunday at The Village Vanguard』の姉妹作以上の風格を備えるようになりました。『Sunday~』でも『Porgy and Bess』からの「My Man's Gone Now」が収録されていましたが、同アルバムの選曲はこのライヴ収録の11日後に享年25歳で交通事故死したベーシスト、スコット・ラファロを大きくフィーチャーした演奏が中心でした。「My Man's Gone Now」(タイトルからして意味深です)の方が選ばれて「Porgy」がLP時代にどちらのアルバムにも未収録になったのも『Porgy and Bess』から2曲は多い、と判断されたのかもしれません。「Porgy」は有名曲ですが、エヴァンス自身は誰のヴァージョンを思い浮かべていたかというと、やはりビリー・ホリデイのレパートリーという意識があったと思います。
 ビリーはテディ・ウィルソン楽団専属歌手ではなく初のビリー自身の名義になった'36年7月の4曲の録音で『Porgy and Bess』から「Summertime」を採り上げていましたが(のちにビッグ・ブラザー&ザ・ホールディング・カンパニーのリード・ヴォーカリスト時代のジャニス・ジョプリン出世作にした、あの曲です)、ビリーの「Porgy」の初録音は'48年12月、ピアノ、ギター、ベース、ドラムスだけの簡素なバンドをバックにした円熟した歌唱で、9か月の薬物違法所持による服役からのカムバックになったレコードでした。翌年ビリーはレコード会社を移籍してヴァーヴ/クレフ・レコーズの看板歌手になり早い晩年までを過ごしますが多くのレコーディングの一方ライヴのレパートリーは人気曲に集中したものになります。最晩年の'58年以降は健康状態の悪化で声質が荒れて声量が衰え、'59年2月にはヨーロッパ・ツアーの終盤にイギリスのテレビ番組に出演し曲目は「Porgy」「Please Don't Talk About Me When I'm Gone」と「Strange Fruit」の3曲でした。帰国したビリーはクラブ出演を続けましたが楽屋ではメイクする手も震えてよだれが止まらない様子が目撃されています。同年5月31日には衰弱して病院へ緊急搬送され、肝硬変による心臓発作と診断されてそのまま入院、7月15日には病床でカトリックの洗礼の洗礼を受け翌々日の17日に急逝します。享年44歳2か月でした。没後片足に750ドル分の紙幣が縛りつけてあるのが見つかり、銀行口座の残高は70セントでした。晩年10年間の最重要レパートリーの一つだった曲がこの「Porgy」です。まだビリー逝去の記憶も生々しい1961年にエヴァンスがビリーの歌唱を意識せず取り上げたとは思えないのです。

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Billie Holiday - Porgy (I Loves You, Porgy) (rec.'48, from the album "Lover Man", Decca 9-250, 1951) : https://youtu.be/Snt-wBNpUwg - 3:00
Billie Holiday & Mal Waldron with Peter Knight Orchestra - Porgy (I Loves You, Porgy) (from British TV Broadcast "Chelsea at Nine", February 25, 1959) : https://youtu.be/jpxfZKeqw48 - 2:46