ランディ・ウェストン - ハイ・フライ (United Artists, 1960)
ランディ・ウェストン Randy Weston - ハイ・フライ High-Fly (Randy Weston) (United Artists, 1960) : https://youtu.be/47vdxkLj4nU - 7:26
Recorded Live at The Five Spot Cafe, NYC,, October 26, 1959
Released by United Artists as the album "Randy Weston Live at The Five Spot", UAL-4066, 1960
[ Personnel ]
Randy Weston - piano, Kenny Dorham - trumpet, Coleman Hawkins - tenor saxophone, Wilbur Little - bass, Roy Haynes - drums, Melba Liston - arrangement
モダン・ジャズ隠れ名曲の筆頭格なのが惜しくも一昨年92歳の大往生をとげた、ピアニストのランディ・ウェストン(1926-2018)のこの曲でしょう。収録アルバム『Randy Weston Live at The Five Spot』1959も隠れ名盤中の名盤で、ケニー・ドーハム(1924-1972)、コールマン・ホーキンス(1904-1969)、ウィルバー・リトル(1928-1987)、ロイ・ヘインズ(1925-)と異色の組み合わせのメンバーも最高なら、女性トロンボーン奏者で編曲家のメルバ・リストン(1926-1999)のアレンジも最高です。ウェストンは生涯この曲を定番レパートリーとし、晩年までいくつもの再演ヴァージョンを録音しています。「ハイ・フライ」のウェストン自身の初演は1958年のニューポート・ジャズフェスティヴァルのライヴで、ロシアン・ルーレットで命を落とした夭逝のジャズ・ヴィブラフォン奏者レム・ウィンチェスター(1928-1961)のカルテットとのスプリット・アルバム中に収録されており(ウェストンがA面4曲、ウィンチェスターがB面3曲)、ここではこの曲はピアノ・トリオで演奏されています。ウェストンは日本では過小評価ジャズマンですが、デューク・エリントンとセロニアス・モンクに影響を受けた、味わいのあるピアニスト・作曲家でした。
Randy Weston Trio - High Fly (Metro Jazz, 1958) : https://youtu.be/6PH1AOvw_VM - 6:38
Recorded Live at Newport Jazz Festival, Newport, Rhode Island, July 5, 1958
Released by Metro Jazz Records as the album "New Faces at Newport", Metro E 1005, 1958
[ Personnel ]
Randy Weston - piano, George Joyner - bass, Wilbert Hogan - drums
またこの曲をカヴァーした中で最大のヒット・アルバムはファンキー・ジャズの名盤と名高いキャノンボール・アダレイ・クインテットのライヴ盤でしょう。このヴァージョンはキレの良いボビー・ティモンズ(1935-1974)のピアノを始めとして、バンド全体の一体感やノリは、作者ウェストンのヴァージョン以上の躍動感を伝えてくれます。キャノンボール・アダレイ(1928-1975)は当時マイルス・デイヴィス(1926-1991)のバンドとかけ持ちして弟のナット・アダレイ(1931-2000)とのクインテットで活動しており、黒人アルトサックス奏者No.1の人気を誇っており、よく歌うフレージングと艶やかな音色で後のアルトサックス奏者に絶大な影響を与えました。
The Cannonball Adderley Quintet - High Fly (Riverside, 1960) : https://youtu.be/gT81pw0to84 - 11:09
Recorded Live at The Jazz Workshop, San Francisco, October 18 & 20, 1959
Released by Riverside Records as the album "The Cannonball Adderley Quintet in San Francisco", RLP 12-311, 1960
[ The Cannonball Adderley Quintet ]
Cannonball Adderley - alto saxophone, Nat Adderley - cornet, Bobby Timmons - piano, Sam Jones - bass, Louis Hayes - drums
この曲のカヴァーはキャノンボール・アダレイの大ヒット・アルバムを筆頭に30組を超えますが、良い具合に代表的な5ヴァージョンをまとめてくれたリンクがあります。キャノンボールとともにファンキー・ジャズの第一人者だったアート・ファーマー＆ベニー・ゴルソンのジャズテットから、アート・ブレイキー＆ザ・ジャズ・メッセンジャーズ、ランバート・ヘンドリックス＆ロス、ジョニー・コールズ・カルテットなど渋い名演目白押しで、これも原曲自体のポテンシャルが高いからこそだからでしょう。
Hi-Fly (Randy Weston song) : http://www.youtube.com/playlist?list=PL4ypuAMic-GhoB_Jp5-uOUsM1Z4rqvyC7
including Randy Weston Quintet (1960), Lambert, Hendricks & Ross (1962), Art Blakey & The Jazz Messengers (1960), Art Farmer & Benny Golson Jazztet (1961), Johnny Coles Quartet (1962)
しかしこれも異色の名演はエリック・ドルフィー(1928-1964)で、ドルフィーはアルトサックス、バスクラリネット、フルートを等分に使いこなした木管楽器のマルチ・プレイヤーですが、どのアーティストもファンキーにカヴァーしたこの曲を軽快で情感あふれるフルート・カヴァーで、しかもベースとのデュオだけで13分を超える演奏に仕上げています。ベースのチャック・イスラエルズ(1936-)は夭逝したスコット・ラファロの後任にビル・エヴァンス・トリオのベーシストを勤めた人で、ピアノもドラムスもいないフルートとベースだけのデュオならではの創意に満ちた演奏です。ベース・ソロが終わってフルートが戻った直後にバタンと何かが落ちた音がしますが、これはベースのアルコ(弓)が床に倒れた音で、ライヴ録音ならではのハプニングです。
Eric Dolphy - High-Fly (Prestige, 1964) : https://youtu.be/AzUVxzmxJrA - 13:27
Recorded Live at Studenterforeningen Foredragssal, Copenhagen, Denmark, September 8, 1961
Originally released by Debut Records as the album "Eric Dolphy in Europe", Debut LP136, 1962, Denmark
Reissued by Prestige Records as the album "Eric Dolphy in Europe Vol.1", LP-7304, 1964
[ Personnel ]
Eric Dolphy - flute, Chuck Israels - bass
またドルフィーの「ハイ・フライ」の演奏は、デンマークでのイスラエルズとのデュオ・ヴァージョンに先立って、ベルリンで別のメンバーとフルート、ベース、ドラムスのトリオ編成で演奏したライヴ録音も後年発掘されましたが、こちらはドルフィー自身は良いものの、あまりうまくないベーシスト(走り気味)と明らかにミスマッチな(うるさい)ドラムス(この二人、特にウェストンの初演に参加したベーシストのジョイナーには、「ハイ・フライ」のファンキーなヴァージョンのイメージにとらわれていたのでしょう)で、イスラエルズとのデュオ・ヴァージョンより落ちるものの、これはこれで十分に面白く聴ける出来です。
Eric Dolphy - High-Fly (Enja, 1978) : https://youtu.be/M3b2yTBUfG8 - 14:45
Recorded Live at The Jazz Saloon, Berlin, West Germany, August 30, 1961
Released by Enja Records as the album "Berlin Concerts", Enja-3307-9, 1978
