人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

マイルス・デイヴィス/ソニー・ロリンズ Miles Davis / Sonny Rollins - Tune Up (Prestige, 1953/Blue Note 1958)

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ソニー・ロリンズ Sonny Rollins - Tune Up (Miles Davis) (from the album "Newk's Time", Blue Note 4001, 1958) : https://youtu.be/MbsPy7lHk5s - 5:24
Recorded at The Van Gelder Studio, Hackensack, New Jersey, September 22, 1958
[ Personnel ]
Sonny Rollins - tenor saxophone
Wynton Kelly - piano
Doug Watkins - bass
Philly Joe Jones - drums

 マイルス・デイヴィスのオリジナル曲、それも曲とは言えないようなAB16小節のコード進行からソニー・ロリンズとドラムスのフィリー・ジョーがやってのけた激烈ハード・バップを前に何が言えるでしょうか。ピアノのケリーもベースのワトキンスも名手ですが、これはほとんどテナーサックスとドラムスの一騎打ちだけで成り立っているような演奏です。しかも端的に言って、これはドラムスが完全に主役で、ロリンズの強烈なブロウもドラムスが暴れまくるために一応楽曲らしい体裁を取るために吹きまくっているだけです。それはマイルス・デイヴィス自身の初演(ドラムスはマックス・ローチ)、テナーにコルトレーンを加えた(第一候補はロリンズでしたが、ロリンズが一時ジャズマン休業していたためコルトレーンが加入し、結果的にコルトレーンが一流テナーマンに成長する機会になりました)レギュラー・クインテットのヴェテランを聴くとよくわかり、マイルスの初演版はピアノ・トリオも控えめで端正な出来が好ましいのですがテナーにコルトレーン、ドラムスにフィリー・ジョーを迎えたクインテット版は尻に火がついたような勢いです。これがロリンズとフィリー・ジョーのカルテットだとどれだけ激演になったかが最初に上げた大傑作アルバム『Newk's Time』になるのです。

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マイルス・デイヴィス Miles Davis Quartet - Tune Up (from the album "Miles Davis Quartet", Prestige PRLP-161, 1954) : https://youtu.be/v1KADzXHtco - 3:56
Recorded at The Van Gelder Studio, Hackensack, New Jersey, May 13, 1953
[ Personnel ]
Miles Davis - trumpet
John Lewis - piano
Percy Heath - bass
Max Roach - drums

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Miles Davis Quintet Featuring John Coltrane - Tune Up (from the album "Cookin' with The Miles Davis Quintet", Prestige 7094, 1957) : https://youtu.be/mhiMhQce860 - 5:45
Recorded at The Van Gelder Studio, Hackensack, New Jersey, October 26, 1956
[ Miles Davis Quintet]
Miles Davis - trumpet
John Coltrane - tenor saxophone
Red Garland - piano
Paul Chambers - bass
Philly Joe Jones - drums

 しかもこの「Tune Up」をアルバート・アイラースウェーデンのジャズ・マニアが自主制作したファースト・アルバムで演っています。前回ご紹介した「Moanin'」と同じ公民館音楽室でのライヴ録音ですが、「Moanin'」を収録した『First Recording Vol.2』はテスト盤10枚プレスされただけで市販されなかったものの、「Tune Up」を収録した『Something Different !!!!!! (First Recording)』は限定枚数ながら発売されました。この無料コンサートで演奏・録音された楽曲は以下の通りです。
[ Something Different !!!!!! (First Recording) ]
A1. I'll Remember April(17:41)//B1. Rollins' Tune(Sonnymoon For Two)(7:09)/B2. Tune Up(5:33)/B3. Free(9:47)
[ First Recording Vol.2 ]
A1. Softly As In A Morning Sunrise(8:18)/A2. I Didn't Know What Time It Was(7:43)//B1. Moanin'(10:13)/B2. Good Bait(6:48)
[ Unreleased Takes ]
1. Softly As In A Morning Sunrise(alternate take)/2. Lover Man/3. Everything Happens To Me
 このうち『Something Different !!!!!!』のB3のみアイラーの即興オリジナル曲ですが同作のA1はパーカーから発してマイルス、ロリンズも演っているスタンダード曲、B1はロリンズが『Night at The Village Vanguard』(Blue Note'57)で演っているロリンズのオリジナル・ブルース(同作の未発表曲ではA1も演っています)、B2が「Tune Up」で、『First Recording Vol.2』ではA1がやはりロリンズが『Night at~』(Blue Note'57)で演っているスタンダード曲、A2はビリーのレパートリーでパーカーのライヴ定番スタンダード曲、B1は「Moanin'」でB2はコルトレーンの『Soultrane』(Prestige'58)ヴァージョンが有名な'40年代のタッド・ダメロン作のダメロン楽団(ファッツ・ナヴァロ版、マイルス版)、ディジー版(コルトレーン在籍)のバップ・スタンダード、『Unreleased Takes』では1は前述、2はビリーのレパートリーでパーカーの演奏で有名なあれ、3はシナトラ→パーカー→マイルス(コルトレーン在籍)のレパートリー、と選曲だけ見ると真面目なジャズ学生のジャズマンです。アイラー版「Lover Man」「Everything Happens To Me」が未発表なのは残念ですが記録に残っているだけでマスター・テープ自体が紛失しているのかもしれません。それでは少年時代はチャーリー・パーカーの完全コピーで地元のアマチュア界の天才少年と謳われたというアイラーの「Tune Up」をアイラーが熱心にレコードを聴きこんでいたテナーヒーロー、ロリンズやコルトレーン(マイルス・クインテット在籍中ですが)の「Tune Up」とお聴き較べください。これまたベースとドラムスが、たぶん何の曲を演っているのかわからないまま演奏している壮絶なヴァージョンです。

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Albert Ayler Trio - Tune Up (from the album "Something Different !!!!!! (First Recording)", Bird Note BNLP1, 1963) : https://youtu.be/OMLSr1c79T8 - 5:33
Recorded Live at Main Hall of Academy of Music, Stockholm, Sweden, October 25, 1962
[ Personnel ]
Albert Ayler - tenor saxophone
Torbjorn Hultcrantz - bass
Sune Spangberg - drums