人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

ソニー・クラーク Sonny Clark - ディープ・ナイト Deep Night (Blue Note, 1958)

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ソニー・クラーク Sonny Clark - ディープ・ナイト Deep Night (Rudy Vallee, Charlie Henderson) (from the album "Cool Struttin'", Blue Note Records BLP 1588, 1958) : https://youtu.be/3GKvPNEkNdw - 9:34
Recorded at The Van Gelder Studio, Hackensack, New Jersey, January 5, 1958
[ Personnel ]
Sonny Clark (p), Art Farmer (tp), Jackie McLean (as), Paul Chambers (b), Philly Joe Jones (ds)

 誰もが知っている名盤『Cool Struttin'』ですがアメリカ本国では初回プレス300枚が全然売れずジャズ雑誌の評価も5つ星で星2つ、ところが日本のジャズ喫茶では大人気のアルバムになり注文が相次いだもののやはりアメリカ国内では売れず、ソニー・クラーク(1931-1963)が急死した時も初回プレスが売れ残っていたと言いますが、今日ではアメリカ本国でもハードバップ・アルバムの古典という評価が定まっています(allmusic.comで★★★★★)。全4曲のLPA面2曲がクラークのオリジナル、B面はマイルス・デイヴィスの曲とこの「Deep Night」ですが、ジャズ喫茶ではA面しかかからないそうでアルバムのラスト曲なのに「Deep Night」は何となく地味な位置です。しかしこれは案外由緒正しい曲で、オリジナルは作曲者ルディ・ヴァレー自身のバンドでヴァレー自身がヴォーカルをとる'29年の中ヒット曲でした。短調でキャッチーなメロディーとシャッフル・リズムを持つなかなかの曲です。この曲はまた、フランク・シナトラのデビュー('39年)直後のハリー・ジェームス楽団~トミー・ドーシー楽団時代からのレパートリーにも採用されていました。

Rudy Vallee and His Connecticut Yankees (Rec.February 6, 1929, NYC/Original Single Victor 21868, 1929) : https://youtu.be/-vovjIlxnaE - 3:20

Frank Sinatra with Harry James Orchestra - Deep Night (Rec.July 19, 1951 in Hollywood, California/Original Single Columbia ‎Records 4-39527, August 1951, Billboard#15) : https://youtu.be/H2dg3ED5Hak - 3:17

 この曲はビ・バップ以前の最高のジャズ・ピアニストとされるアート・テイタムの愛奏曲でもありました。ビ・バップ以降のクラリネット奏者のバディ・デフランコとの共演アルバムでも取り上げています。ソニー・クラークはデフランコのバック・バンド出身でもありましたからデフランコも以前からレパートリーにしていた曲だったのかもしれません。

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Art Tatum - Buddy DeFranco Quartet - Deep Night (from the album "The Art Tatum - Buddy De Franco Quartet", Verve Records ‎MGV-8229, 1958) : https://youtu.be/yJq97OI_F1Y - 5:48
Recorded in Los Angeles, California, February 6, 1956
[ Art Tatum - Buddy DeFranco Quartet ]
Art Tatum (p), Buddy DeFranco (cl), Red Callender (b), Bill Douglass (d)

 テイタムとデフランコのいぶし銀のような演奏と較べると分が悪いのですが、チャールズ・ミンガスのバンドでブルージーでアーシーな味のあるプレイで名を上げたテナー奏者ブッカー・アーヴィン(1930-1970)がジャズ不況のニューヨークに見切りをつけてヨーロッパに渡り、帰国後はロサンゼルスで活動して新進の精鋭メンバー(トリヴァー、ヒックス)とヴェテラン(ミッチェル、マクブライド)と共演したアルバムにもどよーんとしたバラード・アレンジでこの曲がカヴァーされています。LPでは4分55秒に編集されていましたがCD化で7分以上のノーカット版になりますますしんどい演奏になりました。このアレンジは大失敗でしょう。

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Booker Ervin - Deep Night (from the album "Structurally Sound", Pacific Jazz Records ‎ST-20119, 1967) : https://youtu.be/OgI74MCyryI - 7:19 (Originally Released as 4:55 Edit)
Recorded at Pacific Jazz Studios, Los Angeles on December 16, 1966
[ Personnel ]
Booker Ervin (ts), Charles Tolliver (tp), John Hicks (p), Red Mitchell (b), Lenny McBrowne (ds)

 しかし「Deep Night」最高の演奏はバド・パウエルに尽きます。ソニー・クラークバディ・デフランコ時代のレパートリーだったとしても『Cool Struttin'』に取り上げたのはパウエル経由でしょう。パウエルはパリ移住中の'60年代初頭にもソロ・ピアノでこの曲を愛奏しており、パウエルの大ファンでパトロン世話人だったフランシス・ポードラによる自宅録音の歿後発掘アルバム『Strictly Confidential』『Eternity』などにソロ・ピアノ版「Deep Night」(それぞれ別テイク)が収録されていてそちらも感動的な演奏ですが、もっとも早い時期の録音はベースもドラムスも最高のメンバーのこのトリオ録音です。「Deep Night」について言えば、パウエル(のヴァージョンのどれか)が最上、ソニー・クラークとテイタム/デフランコのヴァージョンで十分ではないでしょうか。

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Bud Powell Trio - Deep Night (from the album "Jazz Original", Norgran Records ‎MG N-1017, 1955) : https://youtu.be/Ahc2GNaqs3w - 3:44
Recorded at Fine Sound Studio, New York City, December 16, 1954
[ Bud Powell Trio ]
Bud Powell (p), Percy Heath (b), Max Roach (ds)