人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

チャーリー・パーカー&ディジー・ガレスピー Charlie Parker & Dizzy Gillespie - コンファメーション Confirmation (Black Deuce, 1947)

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チャーリー・パーカーディジー・ガレスピー Charlie Parker & Dizzy Gillespie - コンファメーション Confirmation (Charlie Parker) (from the album "Charlie Parker & Dizzy Gillespie/Diz 'N Bird at Carnegie Hall", Capitol/Roost Records CDP 7243 8 57061 2 7, 1997) : https://youtu.be/Y75YUSbkIAA - 5:38
Recorded live at Carnegie Hall, New York City, September 29
Originally Released by The Black Deuce Records 13001-13005 as "A Nite At Carnegie Hall", Late '40's

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[ Personnel ]
Dizzy Gillespie (tp), Charlie Parker (as), John Lewis (p), Al McKibbon (b), Joe Harris (ds)

 このチャーリー・パーカーのオリジナル曲は'42年に早くも著作権登録されていますが'53年までパーカー本人のスタジオ録音はなく、ライヴではレパートリーにされていてパーカーの生前に海賊盤として発売された'47年9月29日カーネギー・ホールのライヴが現存する最古のパーカー自身による録音とされています。それが上に上げたヴァージョンで、まだ'40年代末にはLPは開発されていなかったので海賊盤SPレコード5枚組アルバムで発売されました。この日は本来ディジー・ガレスピー・ビッグバンドのコンサートで、ゲストに呼ばれたパーカーは前座でディジーとのクインテット編成で再会ライヴを行いましたが(「A Night In Tunisia」(5:11)、「Dizzy Atmosphere」(4:05)、「Groovin' High」(5:16)、「Confirmation」(5:38)、「Koko」(4:17)の5曲)、本編のディジー・ガレスピー・ビッグバンドの10曲を圧倒するほどパーカー&ディジークインテットの再会ライヴが評判を呼び、スタッフか観客かが録音していた音源が流出して間もなく「Black Deuce」なる海賊盤レーベルからパーカー生前のうちに高値で発売されコレクターズ・アイテムになったのです。マイクのポジションのせいかピアノの音がほとんど聴きとれないのも意図せずしてまるでオーネット・コールマンのピアノレス・カルテットのような効果を上げています。

 前回ご紹介した、'2005年に'45年6月22日のタウン・ホール・コンサートのライヴが発掘されるまではパーカーのライヴの傑作は、
◎'47年9月29日カーネギー・ホール(ディジー・ガレスピー・ビッグバンドのコンサートへの客演)5曲(スタッフ録音?)*パーカー生前発売
◎'48年春スリー・デューセス・クラブその他で録音されたマイルス・デイヴィス(トランペット)、デューク・ジョーダン(ピアノ)、トミー・ポッター(ベース)、マックス・ローチ(ドラムス)のレギュラー・メンバーでのライヴ15曲(観客録音)
◎'49年12月24日にスタン・ゲッツサラ・ヴォーンバド・パウエルソニー・スティットリー・コニッツらオールスター・コンサートのトリで出演したレッド・ロドニー(トランペット)、アル・ヘイグ(ピアノ)、ポッター、ロイ・ヘインズ(ドラムス)とのレギュラー・メンバーでの特別出演5曲(ラジオ中継)
◎'50年6月30日バードランドでのパウエル(ピアノ)と急逝直前の天才ファッツ・ナヴァロ(トランペット)との共演またはカルテットでの16曲(ラジオ中継)
◎'50年10月23日前後シカゴのパーシング・ホテル・ダンスホールで地元ジャズマンと共演した4曲(のち全20曲、観客録音)
◎'50年11月20日・24日ヨーロッパ公演中スウェーデンで現地ジャズマンと共演した13曲(メンバー、スタッフ録音)*パーカー生前発売
◎'51年3月31日のガレスピー、パウエルが揃った'バードランドの5曲(ラジオ中継)*パーカー生前発売
◎'51年4月12日にボストン、マサチューセッツチャールズ・ミンガス(ベース)、ヘインズ以外は地元ジャズマンを加えた長時間演奏のセッション4曲(観客録音)
◎'52年6月16日のロサンゼルスでのチェット・ベイカー(トランペット)、ソニー・クリス(アルトサックス)との長時間セッションの共演4曲(メンバー録音)
◎'52年9月26日のロックランド・パレス・ダンスホールでの8曲(のち追加全19曲、観客録音)
◎'53年5月15日カナダ、トロントのマッセイ・ホールでガレスピー、パーカー、パウエル、チャールズ・ミンガス、ローチで行われ即ミンガスとローチの自主レーベルから発売されたオールスター・コンサート6曲(ミンガスとローチによる録音)*パーカー生前発売
 などが名作音源として知られていました。そこにいきなり音質演奏ともに最高の'45年6月22日ライヴが発掘されたのですから騒然となったのも無理はありません。パーカーの発掘ライヴは150本を越えると思いますが、何しろ簡易なアマチュア録音機などなかった時代ですし、観客が記録録音するためにマイクを立てるのをジャズマン本人もジャズクラブも歓迎していたというくらいライヴ録音は面倒で手間がかかりめったに行われないことでした。パーカーの場合は「ライヴではレコードの数倍の長いソロが聴ける」とマニアの間で評判になって確認できるだけで150本~埋もれていたり紛失したりしたものを想像すれば200本あまりのライヴが録音されていたのです。

 この「Confirmation」はずっと後までスタジオ録音しなかったからかライヴでも演奏頻度は高くなく、'47年カーネギー・ホールに次いで有名なライヴ・ヴァージョンはミンガスのバンドのトロンボーン奏者ジミー・ネッパーが客席録音していた'50年初頭のセント・ニコラス・アリーナのライヴでしょう。パーカーが急死の直後にミンガスが自分のインディー・レーベルから急遽アルバム発売した際に曲数を増やすためか、もともとネッパーの録音がそうだったかパーカーのソロの後トランペットのソロ、ピアノのソロがカットされてパーカーが戻ってくるまで短縮されており、音質も割れているしピッチもやや高い(録音スピードが遅い)タウン・ホールやカーネギー・ホール、ラジオ中継音源ライヴとは比較にならない海賊盤以下の音質ですが、臨場感とスリルは満点でパーカーが好きな人にこれを悪く言う人はいません。

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Charlie Parker Quintet - Confirmation (from the album "Bird At St. Nick's", Debut/Jazz Workshop Records JWS 500, 1955) : https://youtu.be/oaGssJM2YzI - 3:14
Recorded live at St. Nicholas Arena, February 18, 1950
[ Personnel ]
Charlie Parker (as), Red Rodney (tp), Al Haig (p), Tommy Potato (b), Roy Haynes (ds)

 ようやくパーカーが「Confirmation」をスタジオ録音したのはパーカーの最後から2番目のアルバムで、次のアルバム「Charlie Parker Plays Cole Porter」(録音'54年3月、12月)はパーカー急逝('55年3月)の後から発売されました。AA'BA''32小節からなる「Confirmation」はAパート8小節をウディ・ハーマン楽団版でヒットした'42年のミュージカル曲からのスタンダード「There Will Never Be Another You」(AA'32小節)のAパート16小節のコード進行を8小節に圧縮して後半4小節を転調させ、Bパート8小節はデューク・エリントン楽団の'42年のオリジナル・ヒット曲「Perdido」AA'16小節のコード進行(逆循進行)を借りてやはり後半4小節を転調させています。「There Will~」「Perdido」がヒットした年にすぐさま作ってしまった曲ですが、ここまで凝った改作ならばコード進行もパーカー自身のオリジナルと言っていいでしょう。パーカーらしい快活明快なメロディーと面白いリズム・アクセント、意表を突いた部分転調など豊富なアイディアに満ちた曲なのでパーカーのオリジナル中でもカヴァーの多い曲になっています。パーカー歿後に発売されNGテイクも収録した『The Genius Of Charlie Parker #3 / Now's The Time』の方がLP~CDでは普及しましたが、右手の方が上のポジションになっている裏焼きのジャケット写真は何とかならないものでしょうか。また、これはこのヴァージョンだけ聴くとスタジオ録音ならではの締まった音質もあって聴きごたえがありますが、カーネギー・ホールやセント・ニコラス・アリーナのライヴ・ヴァージョンのような奔放な即興性は失われて、ごく無難にいつもの手癖で済ませているアドリブでしかない物足りなさがあります。もっと旬のうちにスタジオ録音を残しておいて欲しかったと思わせられ、'50年頃までにスタジオ録音されていたらいっそうパーカーの代表曲になっただろうと残念な気もします。

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Charlie Parker Quartet - Confirmation (from the 10-inch album "Charlie Parker", Clef Records MG C-157, 1954) : https://youtu.be/3XA_Jugejto - 2:58
Recorded at Fulton Recording Studios, New York City, July 28, 1953
Reissued by Verve Records MGV-8005 as "The Genius Of Charlie Parker #3 / Now's The Time", 1957

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[ Personnel ]
Charlie Parker (as), Al Haig (p), Percy Heath (b), Max Roach (ds)