人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

チャーリー・パーカー&バド・パウエル - ラウンド・ミッドナイト 'Round Midnight (rec.'50,'51/Columbia, 1977)

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チャーリー・パーカー・ウィズ・バド・パウエルファッツ・ナヴァロクインテット Charlie Parker with Bud Powell & Fats Navarro Quintet - ラウンド・ミッドナイト 'Round Midnight (Thelonious Monk, Bernie Hanighen, Cootie Williams) (rec.'50/Columbia, 1977) : https://youtu.be/ECLoE-bw3Kw - 5:06
Recorded live and Radio Broadcast at Birdland, June 30 (Correctly May 17), 1950.
Released by Columbia Records as the album "One Night In Birdland",
Columbia-JG 34808, 1977
[ Personnel ]
Fats Navarro - trumpet (Out of "'Round Midnight"), Charlie Parker - alto saxophone, Bud Powell - piano, Tommy Potter - bass, Art Blakey (Correctly Roy Haynes) - drums

 1977年にメジャー最大手のコロンビア・レコーズは3作のチャーリー・パーカーの発掘ライヴ・アルバムを発売しました。日本盤も発売されて、のちにCD化もなされたその3作は発表順に『ワン・ナイト・イン・バードランド』('50年6月録音)、『サミット・ミーティング・アット・バードランド』('51年3月録音+α)、『バード・ウィズ・ストリングス』('51年4月+'52年11月録音)で、いずれもラジオ中継をエア・チェックしていたリスナーからの優秀録音を選んだものです。それまでも海賊盤の定番音源だったためにこの良質なメジャー・リリースはたいへん歓迎されました。2枚組LP『ワン・ナイト・イン・バードランド』は実際には'50年6月30日録音ではなく5月17日録音と判明し、ヴォーカル曲のゲスト歌手もMCのシンフォニー・シドが紹介している女性歌手チャビー・ニューサムは間違いで、矮人症の男性カウンターテナー歌手ジミー・スコットと判明し、『サミット・ミーティング・アット・バードランド』はパーカー、ガレスピー、パウエルによるスペシャル・クインテットはLPのA面4曲だけでB面は寄せ集めですし、『バード・ウィズ・ストリングス』も収録年月日の間違いや収録漏れテイクが発見されています。しかしパーカーとバド・パウエル(ピアノ)の共演はマイルス・デイヴィス(トランペット)とマックス・ローチ(ドラムス)が在籍していた初期のレギュラー・クインテットのうちでも、ごく短期間パウエルが加わっていただけで、パウエルはパーカーと反りが合わず契約期間が終わるとパーカーはマイルスやローチの反対を押し切ってピアニストをデューク・ジョーダンに変えてしまいますから、'50年5月と'51年3月のバードランドのスペシャル・クインテット、そして'53年5月のマッセイ・ホールのクインテット・セッションは本当に数少ないパーカーとパウエルの再会セッションで、「チュニジアの夜」はその3回(前回掲載)とも演っていますが、パーカーにはのちの'53年にマイルス・デイヴィスのアルバムのためのセッションでゲスト参加した時以外演奏例のない「ラウンド・ミッドナイト」をバードランドでは2回とも演奏しているのは興味深いことです。'50年のライヴではディジー・ガレスピーの愛弟子の天才トランペット奏者ファッツ・ナヴァロ(1924-1950)が加わったクインテットですが、ナヴァロは同年7月7日に病没してしまうので6月には病状悪化で演奏不可能だったという証言からデータが検証され、5月17日の出演記録に改められましたが、他の曲では十分好調なナヴァロをこの曲では休ませて管楽器はパーカーのみのカルテット演奏にしているのは、バラードは負担が大きいためのナヴァロへの配慮だったかもしれません。『ワン・ナイト・イン・バードランド』全体は好調なパーカーとナヴァロの競り合いが堪能できる名作ライヴですが、この曲の演奏ではあまりパーカーらしいアドリブやテーマ解釈の冴えは見られず、フェイドアウト気味の録音も惜しまれます。
 パウエルとパーカーは音楽的には尊敬しあっていましたから、パーカーのオリジナル・レパートリーの多くをパーカー沒('55年3月)後もパウエルはレパートリーにしましたが、御大ガレスピーをトランペットに迎えた'51年3月のバードランド・セッションではイントロはガレスピーのトランペット、AA'BA'からなるテーマのAA'部をパーカーのアルトサックス、B部をガレスピーが吹き、A'部をパウエルが弾いており、そのままコーダ・アンサンブルになって終わるテーマ提示だけのシングル向けのような構成の演奏ですが、ホーンのバッキングで面白いバックをつけるパウエルが好調で、パーカーも'50年5月録音よりじっくり聴かせてくれるのはディジーという公私ともに頭の上がらない盟友との共演だからかもしれません。ディジーの吹くBメロのブリッジ部は千両役者登場の観があり、ディジーに頭が上がらないのはパウエルも同じですからA'のテーマ回帰部をしっとりと決めています。パーカー、ディジー、パウエルとも三者揃ったこの曲の正式なスタジオ録音をLPフォームで6分以上使って残してくれなかったのは残念ですが、もともとパーカーにはこの2回くらいしかライヴ録音が記録されておらず、この荘重なバラード名曲はパーカー好みの曲ではなかったとも言えるでしょう。

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Charlie Parker And The All-Stars - 'Round Midnight (rec.'51/Columbia, 1977) : https://youtu.be/nuXBMFrpWDc - 3:35
Recorded live and Radio Broadcast at Birdland, New York City March 31, 1951.
Released by Columbia Records as the album "Summit Meeting At Birdland", Columbia-JC 34831, 1977
[ Charlie Parker And The All-Stars ]
Dizzy Gillespie - trumpet, Charlie Parker - alto saxophone, Bud Powell - piano, Tommy Potter - bass, Roy Haynes - drums

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Miles Davis Sextet featuring Charlie Parker - 'Round About Midnight (Prestige, 1956) : https://youtu.be/COw0fe7OBqc - 7:12
Recorded at WOR Studios, New York City, January 30, 1953
Released by Prestige Records as the album "Collector's Item", Prestige PRLP 7044, December 1956
[ Personnel ]
Miles Davis - trumpet, Sonny Rollins - tenor saxophone, Charlie Parker ("Charlie Chan") - tenor saxophone, Walter Bishop Jr. - piano, Percy Heath - bass, Philly Joe Jones - drums