人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

クラウス・シュルツェ Klaus Schulze - 絶頂人妻ボディ・ラブ(サウンドトラック) Body Love (Soundtrack) (Metronome, 1977)

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クラウス・シュルツェ Klaus Schulze - 絶頂人妻ボディ・ラブ(サウンドトラック) Body Love (Soundtrack) (Metronome, 1977) Full Album : https://youtu.be/WRToSYl-msU
Recorded in End of 1976, Frankfurt and Bochum
Released by Metronome Records Metronome 60.047, February 1977
Produced and Composed by Klaus Schulze, For Film by Lasse Braun.
(Side 1)
A1. Stardancer - 13:18
A2. Blanche - 11:44
(Side 2)
B1. P: T: O: - 27:25
[ Personnel ]
Klaus Schulze - electronics
Harald Grosskopf - drums

(Original Metronome "Body Love" LP Liner Cover & Side 1 Label)

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 ラッセ・ブラウン監督作品のポルノ映画『絶頂人妻ボディ・ラヴ』'77のサウンドトラック・アルバムとして制作され'77年2月に発売された本作は、制作背景だけ聞くと際物なのではと思ってしまいますが、シュルツェ自身が第6作『ムーンドーン』に続くレギュラー・アルバム第7作に数え、次作の'77年1月録音・4月発売の第8作『蜃気楼(ミラージュ) (Mirage)』を挟んで本作録音時の音源にさらに'77年9月録音を加えた、サウンドトラック・アルバムではなく本作のコンセプトを継いで制作した続編『ボディ・ラヴVol.2 (Body Love Vol.2)』を早くも'77年12月にリリースしており、年間3作のリリースも異例ですが'70年代のシュルツェ作品では続編が制作された例も他にはないので('80年代~現在までは続編制作はむしろ増加傾向にありますが)、本作がシュルツェの会心作でアルバム1枚では収まらなかったサウンド・コンセプトを見つけ出した作品になったのはA1「Stardancer」1曲を聴き始めてもすぐに納得がいきます。シークエンサーによるシンセサイザー・ベースなのですが、シュルツェのアルバムでベース・パートがこれだけはっきりアンサンブルに採り入れられたサウンドはこれが初めてで、ハロルド・グロスコフのドラムスも乗りが良く快調で、『ムーンドーン』で成功したシュルツェとグロスコフのデュオをさらに肉体的な躍動感に富んだ音楽にしてみせたのがA1「Stardancer」とB面全面を使った「P: T: O:」になっており、『ボディ・ラヴVol.2』ではA面にA面全面の大曲、B面はB1「Stardancer Part II」とB2という具合にAB面こそ逆転ですが楽曲配分も踏襲した『Vol.II』になっています。
 アルバムとしては各段に『ボディ・ラヴVol.2』の完成度とサウンドの達成に軍配が上がり、それも確かなシュルツェの感覚と腕前の冴えを感じますが、同作の作風も本作『絶頂人妻ボディ・ラヴ(サウンドトラック)』が先にあらばこそなのは言うまでもなく、'75年から本格的にライヴ活動を始めたのが前作『ムーンドーン』'76や本作の躍動的なサウンド制作への意欲に現れたと思われます。本作はA2がグロスコフとのデュオではないソロ演奏ですが、冒頭3分の素直なピアノ音色の演奏はこれまでのシュルツェにも、この後にもないものです。'76年にシュルツェのアルバムのイギリス盤発売権はそれまでのヴァージン(『ブラックダンス』)、アリオラ(『ムーンドーン』)からアイランドに移ることになり、シュルツェはヴァージンの日本人現代音楽パーカッショニスト、ツトム・ヤマシタのプロジェクト・バンド「GO」に誘われ国際的ベストセラーになったアルバム『GO』('76年2月録音、4月発売)と「GO」ツアーから6月のパリ公演を収録した『Go Live from Paris』'76、プロジェクトの最終作でニューヨーク録音の『GO Too』'77に参加しました。アイランド所属アーティストからトップクラスのプレイヤーが招かれ、ヴォーカルとキーボードにスティーヴ・ウィンウッド、リード・ギターにチック・コリアのリターン・トゥ・フォエヴァーからアル・ディ・メオラ、ベースにカンの二代目黒人ベーシストのロスコー・ジー、ドラムスにサンタナのマイケル・シュリーヴというメンバーで、必ずしも全作参加ばかりではないメンバーの中でシュルツェはディ・メオラ、シュリーヴとともにプロジェクトの最初から最後まで参加しました。またニューヨーク録音もシュルツェには初めての経験で、アメリカ滞在からシュルツェが吸収してきたものも大きく、次作『蜃気楼(ミラージュ)』にはその反映があり、また'77年からのソロでのライヴはより大きな会場で、スタジオ録音のアルバムよりアグレッシヴでエモーショナルな演奏スタイルに移ったのが'80年リリースの『…ライヴ (...Live...)』や'90年代になってからの公式発掘ライヴ・リリースで知ることができます。『絶頂人妻ボディ・ラブ(サウンドトラック)』は国際的プロジェクト「GO」参加の経験が直接生きたアルバムであり、サウンドトラックという手段でアルバムを多作するには絶好のチャンスだったでしょう。実際『ボディ・ラブ(サウンドトラック)』『ボディ・ラヴVol.2』の2作をシュルツェの代表作に上げる評者も多く、シュルツェ作品ではもっともタイトなサウンドの聴ける好作品でもあります。確か映画もVHSヴィデオ時代にはレンタル発売されており、なかなかの佳作らしく現行版DVDのリリースがないのが惜しまれます。ドイツとイタリアをまたにかけた、ポルノ映画界ではかなりのカルト監督(1936-2015)らしいですからきっと映画も面白いでしょう。