人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

コズミック・ジョーカーズ The Cosmic Jokers - ギャラクティック・スーパーマーケット Galactic Supermarket (Kosmische, 1974)

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コズミック・ジョーカーズ The Cosmic Jokers - ギャラクティック・スーパーマーケット Galactic Supermarket (Kosmische, 1974) Full Album : https://youtu.be/cVo_cS_XdL8
Recorded at The Studio Dierks, Stommein by Dieter Dierks, February-May 1973
Released by Metronome Records GmbH, Die Kosmischen Kuriere KM58.010, 1974
Musik von Dierks, Dollase, Gottsching, Grosskopf, Schulze
Lyrics von Gille und Rosi
(Seite 1)
A1. Kinder des Alls - 18:54
(Seite 2)
B1. Galactic Supermarket - 19:24
[ Personnel ]
Manuel Gottsching - guitar
Dieter Dierks - recording, synthesizer
Jurgen Dollase - piano, organ
Harald Grosskopf - drums, percussion
Klaus Schulze - electronics, percussion
Gille Lettmann - lyrics, voices
Rosi Muller - lyrics, voices

(Original Kosmische Musik "Galactic Supermarket" LP Liner Cover & Seite 1/2 Label)

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 一連のコズミック・ジョーカーズ・セッション作品の中で本作は、シュルツェ色が強いインストルメンタル曲(シュルツェ作のポエトリー・リーディングを伴う)が2枚組アルバムの半数を占めた『タロット』、シュルツェのメロトロン・コーラスがフォーク・デュオのW&Wのアコースティック・ギターヴァレンシュタインのユルゲン・ドラゼのピアノとオルガンを包んでアコースティック版のシュルツェのアルバムの観があった『ロード・クリシュナ・フォン・ゴロカ』以上にロック・バンド編成でシュルツェがリーダーシップを取った、『タロット』『ロード・クリシュナ~』以上にシュルツェの準ソロ・アルバムと言って好い内容で、本作と同時期に制作が始まったソロ第2作で2枚組大作『サイボーグ』'73('73年2月~7月録音)がソロ第1作『イルリヒト』'72の延長線上の拡大版とすれば、この『ギャラクティック・スーパーマーケット』の方が音楽性はソロ活動復帰の第3作『ブラックダンス』'74('74年5月録音)、第4作『ピクチャー・ミュージック』'75('74年秋録音)に近いものになっています。シュルツェとしては『イルリヒト』で始めた音楽は本作よりあとで完成される『サイボーグ』で極める意図があったと思われる一方、思い切りロック離れしたミュージック・コンクレート作品『イルリヒト』を『サイボーグ』で突きつめながらもコズミック・ジョーカーズ・セッションで堪能したロックの躍動感もタンジェリン・ドリームアシュ・ラ・テンペルのドラマー出身のシュルツェの本能だったはずで、『ブラックダンス』『ピクチャー・ミュージック』ではソロ・アルバムでも自らドラムスを叩き、コズミック・ジョーカーズで共演したヴァレンシュタインのドラマー、ハラルド・グロスコフをシュルツェが『ムーンドーン』'76以来レギュラー・ドラマーとして迎えるとともにもう一人の創設メンバーのヘルトムート・エンケ(ベース)脱退後バンド名を短縮改名したアシュ・ラにゲッチングがグロスコフを迎える、という具合にコズミック・ジョーカーズ・セッションはグロスコフを西ドイツのロック界のキーパーソンにしたきっかけにもなったので、ヴァレンシュタインは'70年代前半のドイツのロック界では英米型ヘヴィ・プログレッシヴ・ロックのタイプのバンドの中では好作を残したバンドで、『ファースト~電撃戦(Blitzkrieg)』'71、『マザー・ユニヴァース(Mother Universe)』'72、『コズミック・センチュリー(Cosmic Century)』'73、『ストーリーズ・ソングス&シンフォニーズ(Stories, Songs & Symphonies)』'75までの初期4作はムーディー・ブルース、初期キング・クリムゾンあたりの路線を踏襲した好作でした。グロスコフ脱退後の'77年以降解散する'81年までの5作はポップス路線ですっかり株を下げてしまいましたが、初期4作は同期に活動したヘルダーリン、'75年デビューのノヴァリスにも劣らない良さがあったので、リーダーのドラゼとドイツのロック界きってのドラマーのグロスコフはコズミック・ジョーカーズではヴァレンシュタインよりも優れたメンバー(ゲッチング、シュルツェ)と組んだことになります。
 レーベル主でプロデューサーののロルフ=ウルリッヒ・カイザーの采配か、サウンド実務を任されていた実質的なサウンド・プロデューサーのレコーディング・エンジニアのディーター・ダークスの采配か、『コズミック・ジョーカーズ』をゲッチング主導のアルバムにしたのも成功の秘訣なら、本作ではほぼ全面的にシュルツェ主導のアルバムになっているのもコズミック・ジョーカーズの作品性の高い2作を名作にしており、アルバム2作からカットした部分をさらに『プラネテン・シット・イン』と『サイ・ファイ・パーティ』に編集リリースし、上記4作からのリミッックス/コンピレーション・アルバム『ジルズ・ツァイツシフ』にまとめる等レコーディング・エンジニアのディーター・ダークスならではの発想ですが、完成度の高いアルバム2作のセッションからこのくらいのアウトテイクスが拾えるのは、即興作曲による即興演奏を密度の高い楽曲にまとめる過程で当然生じたオミット部分も小曲集としてアルバム化できるレベルにあったからで、その点では『コズミック・ジョーカーズ』と『ギャラクティック・スーパーマーケット』は高い密度に圧縮編集したことで優れたアルバムになった作品です。完成度と充実感からもコズミック・セッションは『タロット』『ロード・クリシュナ』とコズミック・ジョーカーズの2作に尽きているとも言えますし、後3作の編集盤はアウトテイクス、リミッックス/コンピレーションで追補アルバムですが、逆に漫然としセッションから『コズミック・ジョーカーズ』『ギャラクティック・スーパーマーケット』の2作の名作のセッション段階の実態が浮き彫りになる興味もあり、これらはゲッチング主導のアルバム、シュルツェ主導のアルバムという統一感は意図的に散らされているので、2作を完成度の高い名作に仕上げたのはディーター・ダークスのサウンド・プロデュースとエンジニア術による編集・ミックスの手腕が大きかったと考えられる。これはエンケ脱退を控えてオリジナル・アシュ・ラ・テンペル最後の年を迎えていたゲッチング、ミュージック・コンクレート連作『イルリヒト』の完成型『サイボーグ』に着手して先の方向性を模索していたシュルツェに今後の音楽的方向性のヒントを与えることになったので、エンケ脱退後のアシュ・ラ・テンペル名義のロジのヴォーカルをフィーチャーしたポップなスペース・ロックの小品集『スターリング・ロジ』、ゲッチングの完全ソロ・アルバム『インヴェンションズ・フォー・エレクトリック・ギター』'75のアンビエント感と躍動感の両立、シュルツェのソロ活動復帰作でヴォイスとドラムス入りの『ブラックダンス』『ピクチャー・ミュージック』のロック色はコズミック・ジョーカーズから両者が持ち帰った成果と言ってよく、『タロット』はアンダーグラウンドのオールスターズの一代大作で、『ロード・クリシュナ』はアコースティック版シュルツェ主導作、『コズミック~』はゲッチングのギターが冴えヴァレンシュタイン組の堅実なサポートにシュルツェのサウンド・メイクが光り、『ギャラクティック~』は『ブラックダンス』『ピクチャー・ミュージック』に直結するシュルツェ主導のアルバムです。'70年代前半ならではの洪水のようなメロトロン・コーラスはシュルツェの抒情的側面とセンスの良い明確なサウンド・プランを感じさせ涙がちょちょ切れます。マヤ遺跡にUFOの飛翔と原子核分裂が円を描いて空中静止するいかがわしいトリップ用レコードのようなジャケットといい、こういうのを隠れた名盤と呼ぶのです。