人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

セシル・テイラー・トリオ Cecil Taylor Trio - ラヴ・フォー・セール Love For Sale (United Artists, 1959)

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セシル・テイラー・トリオ Cecil Taylor Trio - ラヴ・フォー・セール Love For Sale (Cole Porter) (United Artists, 1959) : https://youtu.be/bZxnPAIbpIE - 8:15
Cecil Taylor Trio - アイ・ラヴ・パリ I Love Paris (Cole Porter) (United Artists, 1959) : https://youtu.be/FFQzLGwO8c4 - 5:11
Recorded at The Nora Studios, New York City, April 15, 1959
Released by United Artists Records UAS 5046 as the album "Love For Sale", 1959
[ Personnel ]
Cecil Taylor - piano, Buell Neidlinger - bass, Dennis Charles - drums

 今年4月5日に89歳で亡くなったセシル・テイラー(1929-2018)は現代ジャズ・ピアノで最長老格の巨匠でしたが、ついに共演レコーディングを果たさなかったロサンゼルス出身の盟友オーネット・コールマン(アルトサックス、1930-2015)とともにフリー・ジャズ創始者とされる人で、オーネットがチャーリー・パーカービバップの正統な後継者を自負していたようにテイラーのフリー・ジャズセロニアス・モンクビバップの正統な継承発展を目指したものであり、奇をてらった実験のための実験ではありませんでした。しかし創始者だけあってテイラーのピアノもオーネットのアルトも突拍子もないもので、フリー・ジャズというと滅茶苦茶な出鱈目をやっているというイメージは形だけテイラーやオーネットを真似たフォロワーが続出したからでもあります。オーネットの音楽が完成型を見せたのは3作目のアルバム『ジャズ来るべきもの』'60でしたがテイラーもなかなかやりたい音楽をレコーディングできる機会が訪れなかったので、6作目のアルバム『セシル・テイラーの世界』'60がようやくテイラーの目指していたジャズが実現したアルバムになりますが、テイラーはデビュー・アルバムから黒人音楽プロデューサーのトム・ウィルソンから目をかけられていたのでレコーディングの機会はウィルソンを通して多かったので、それまでのアルバムはレコード会社の企画に大なり小なり応じたものですが、ケニー・ドーハム(トランペット)とジョン・コルトレーン(テナーサックス)を加えたクインテットのハード・バップ作品『Hard Driving Jazz』'59などはこの時期のセシル・テイラーだからこそ実現した企画でしょう。
 アルバム『ラヴ・フォー・セール』もA面3曲はコール・ポーターのスタンダードをピアノ・トリオで、B面2曲はテイラーのオリジナル曲のハード・バップ・クインテットという企画で、次作『セシル・テイラーの世界』直前ですからテイラーのスタイルはほぼ完成に近づいています。テイラーが選んだコール・ポーター曲は「Get Out of Town」と今回引いた2曲ですが、「ラヴ・フォー・セール」と「アイ・ラヴ・パリ」こそはチャーリー・パーカーの最後の録音になったアルバム『Charlie Parker Plays Cole Porter』の最終セッションで録音された2曲で、絶不調のパーカーは絶好調の若手メンバーと組みながら3時間で2曲しか録音できず、同年3月の(やはり絶不調の)セッションで録音していた4曲ともお蔵入りし、パーカー沒後2年後にようやくリリースされたいわくつきのセッションの曲でした。テイラーがのちに終生レギュラー・メンバーにするアルトサックス奏者ジミー・ライオンズがパーカーを激しくデフォルメしたスタイルの奏者だったのを思うと、テイラーの理想のアルト奏者はかつての輝かしかったチャーリー・パーカーで、この選曲はやはりパーカーへのオマージュのように思えます。

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Charlie Parker Quintet - Love For Sale (Verve, 1957) : https://youtu.be/d-AV06HItr4 - 5:35
Charlie Parker Quintet - I Love Paris (Verve, 1957) : https://youtu.be/OQemEezf5pE - 5:07
Recorded at The Fine Sound Studios, New York City, December 10, 1954
Released by Verve Records Verve MGV-8007 as the album "Charlie Parker Plays Cole Porter", 1957
[ Personnel ]
Charlie Parker - alto saxophone, Walter Bishop Jr. - piano, Billy Bauer - guitar, Teddy Kotick - bass, Art Taylor - drums