人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

ツトム・ヤマシタ Stomu Yamashta's Go - GO TOO Go Too (Arista, 1977)

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ツトム・ヤマシタ Stomu Yamashta - GO TOO Go Too (Arista, 1977) Full Album : https://youtu.be/tbkgSpievYU
Recorded at Camp Colomby, New City, New York / Mixed at Trident Studios, London, 1977
Released by Arista ‎Records SPARTY 1011, 1977
All Composed by Stomu Yamashta except B4, Lyrics By Michael Quartermain (tracks: A2 to A4, B1 to B3)
(Side 1)
A1. Prelude - 3:10
A2. Seen You Before - 6:18
A3. Madness - 6:27
A4. Mysteries Of Love - 6:15
(Side 2)
B1. Wheels Of Fortune - 5:37
B2. Beauty - 5:11
B3. You And Me - 6:59
B4. Ecliptic (Klaus Schulze) - 2:33
[ Personnel ]
Stomu Yamashta - synthesizers, piano, tympani, percussion
Klaus Schulze - synthesizers
J. Peter Robinson - keyboards
Al Di Meola - lead guitar
Doni Harvey - guitar, vocals
Jess Roden - lead vocals
Linda Lewis - lead vocals
Paul Jackson - bass
Michael Shrieve - drums
Brother James - percussion
The Martin Ford Orchestra
Paul Buckmaster - Orchestral Arrangements

(Original Arista "Go Too" LP Liner Cover, Inner Sleeve & Side 1/2 Label)

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 ツトム・ヤマシタのゴー・プロジェクト三部作の最終作『GO TOO』はそれまでのアイランド・レコーズから1977年にアリスタ・レコーズに移籍して発表されました。この年、アイランド・レコーズのアーティストだったスティーヴ・ウィンウッドはアイランドからソロ・アーティストとしてデビューしたこともあり、ウィンウッドに代わるヴォーカリストとしてジェス・ローデン、リンダ・ルイスが参加しています。アルバム『ゴー』が全米アルバム・チャート最高位160位だったのに対して本作は最高位156位と続編としてはなかなかの健闘をしており、イギリス原盤からアメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、フランス、イタリア、ドイツ、オランダ盤も発売されており、オランダ盤だけが国際統一ジャケットから異なるジャケットを採用しており、日本盤もオランダ盤のジャケットを採用しています。邦題は『GO TOO』とそのままですので、この紹介でもその表記に従いました。アレンジャーのポール・バックマスターは『ゴー・ライヴ』では参加していなかったので、三部作通してツトム・ヤマシタのプロジェクトに参加したミュージシャンはクラウス・シュルツェ、アル・ディ・メオラ、マイケル・シュリーヴの3人ということになります。また、ウィンウッドはオルガン、ピアノ奏者でもあったのでヴァーティゴ・レーベル屈指のスーパー・キーボード・トリオの伝説的な元クォーターマス(井上陽水『氷の世界』にも参加)の実力派キーボード奏者ピーター・ロビンソンが参加しています。
 前2作では短い単位に曲を分けてシームレスの組曲風展開でしたが、本作ではA面4曲、B面4曲とわかりやすく曲をまとめ、強力だったウィンウッドのヴォーカル・パートがもっと控えめなローデンとルイスに代わったことで、ディ・メオラのリード・ギターとシュルツェのシンセサイザーが前2作以上にフィーチャーされているのが特徴で、ゴー・プロジェクトはツトム・ヤマシタの作曲とリーダーシップ、ポール・バックマスターのアレンジによる音楽性ですからシュルツェ参加作でもシュルツェ色はさほど目立ちませんが、クロージング曲をシュルツェの曲が採用されているように(『ゴー』の最終曲はウィンウッド作曲のウィンウッドの独壇場ナンバーでした)、メンバー・クレジットでもリーダーのヤマシタに次ぐ2番目にシュルツェがクレジットされています。ゴー・プロジェクトは各種ディスク・ガイドではジャズ・ロック、フュージョンプログレッシヴ・ロック実験音楽に分類されるものですが、バックマスターの重厚で風変わりなオーケストレーションはシュルツェにとっても学ぶものが多かったと思われますし(マイルス・デイヴィスは『On the Corner』のアレンジをポール・バックマスターにノンクレジットで依頼した、と証言しています)、シュルツェ自身のバイオグラフィーではヤマシタのゴー・プロジェクトはウィンウッド、シュリーヴ、ディ・メオラ、ロスコー・ジーで始まったのを強調していて、『ゴー』に参加したきりでしたがジーのベースとシュリーヴのドラムスのコンビネーションこそがシュルツェがゴー・プロジェクトから学んだ最大の成果だったようです。実際シュルツェはゴー・プロジェクト参加に平行するサウンドトラック・アルバム『絶頂人妻ボディ・ラブ』で初めてベース・ラインを採り入れた多重録音アンサンブルをドラマーのハラルド・グロスコフと試み、シュルツェの音楽としては初めてファンク・ビートの導入に取り組んで成功を収め、音楽性を広げていきます。仲間うちで行われたコズミック・ロッカーズ・セッションはシュルツェの音楽性の確立に結びつきましたが、ゴー・プロジェクトは音楽性の拡張を拓いた意味で、シュルツェのキャリアにとってはやはり欠かせないアルバムです。ギター好きのリスナーにはスーパー・ギタリスト、ディ・メオラの素晴らしいプレイで必聴のアルバムでもあります。

(Alternate Arista Netherlands & Japanese LP Cover)

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