人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

シーラ・ジョーダン - レッツ・フェイス・ザ・ミュージック・アンド・ダンス Let's Face the Music and Dance (Blue Note, 1963)

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シーラ・ジョーダン Sheila Jordan - レッツ・フェイス・ザ・ミュージック・アンド・ダンス Let's Face the Music and Dance (Irving Berlin) (Blue Note, 1963) : https://youtu.be/lIQAVmZTIUk - 1:14
Recorded at The Van Gelder Studio
Englewood Cliffs, New Jersey, October 12, 1962
Released by Blue Note Records as the album "Portrait of Sheila", BST 89002, January 1963
[ Personnel ]
Sheila Jordan - voice, Barry Galbraith - guitar, Steve Swallow - bass, Denzil Best - drums

 この名曲はどういう具合にご紹介しようか悩んでいたのですが、ちょうど先週にこの曲が書き下ろしハイライト曲になったアステア&ロジャースのミュージカル映画『艦隊を追って』'36を映画の感想文の方でご紹介する機会があったので、ヴォーカルとアルトサックスのヴァージョンでとびきりかっこいいのをご紹介いたします。この曲はナット・キング・コールフランク・シナトラが原曲からあまり離れないオーソドックスな解釈で得意のレパートリーにしてジャズ化していたのですが、本来短調のバラードで和声進行自体はけっこう陰鬱なのに、メロディラインはやたら威勢が良くて空元気という矛盾した要素を持つこの曲を、'60年代ブルー・ノート・レコーズが2枚だけリリースしたヴォーカル・アルバムの1枚であるギター・トリオだけをバックにした名盤『ポートレイト・オブ・シーラ』のシーラ・ジョーダン(1928-)はアルバムA面最終曲に1分14秒(!)で駆け抜けており、シーラ・ジョーダンは本作がデビュー・アルバムでデューク・ジョーダン(1922-2006)の前夫人だった人ですが、結婚期間が1952年~1962年といいますから黒人ジャズマンの夫人から歌手になったという珍しい経歴の白人女性ジャズ・シンガーです。シーラ・ジョーダンは90歳でなお現役の現在まで20作を超えるアルバムがありますが、第2作は'75年とブランク後にようやく本格的に活動した人で、活動再開前は『ポートレイト・オブ・シーラ』だけで伝説化していた女性歌手でした。一方、シーラ・ジョーダンの直前にジャッキー・マクリーン(1931-2006)もブルー・ノート・レコーズ移籍第2作(録音順では第3作)にこの曲を吹きこんでおり、短調の曲をアップテンポでブリブリ吹く痛快な演奏が聴けます。シーラ・ジョーダンがデューク・ジョーダンの前夫人でドラムスがデンジル・ベスト、さらにマクリーンはマクリーン自身も関係が深ければピアノにウォルター・ビショップJr.、ドラムスにアート・テイラーと、どちらのアルバムも故チャーリー・パーカーゆかりのメンバー絡みなのも感慨ひとしおで、パーカー自身は公式録音でも発掘ライヴでもこの曲の演奏記録はありませんが、マクリーンもシーラ・ジョーダンもこの曲の闇雲な快演は実にビ・バップ直系という感じがします。

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Jackie McLean - Let's Face the Music and Dance (Blue Note, 1960) : https://youtu.be/sW9fchwwcjM - 4:51
Recorded at The Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey, October 20, 1959
Released by Blue Note Records as the album "Swing, Swang, Swingin'", BST 84024, March 1960
[ Personnel ]
Jackie McLean - alto saxophone, Walter Bishop Jr. - piano, Jimmy Garrison - bass, Art Taylor - drums