シーラ・ジョーダン Sheila Jordan - イフ・ユー・クッド・シー・ミー・ナウ If You Could See Me Now (Blue Note, 1963)

Recorded at The Van Gelder Studio
Englewood Cliffs, New Jersey, September 19, 1962
Released by Blue Note Records as the album "Portrait of Sheila", BST 89002, January 1963
[ Personnel ]
Sheila Jordan - voice, Barry Galbraith - guitar, Steve Swallow - bass, Denzil Best - drums
ビ・バップ時代のピアニスト/バンドリーダー、タッド・ダメロン(1917-1965)はバンドからバド・パウエル、ファッツ・ナヴァロ、マイルス・デイヴィス、サラ・ヴォーンらを輩出し、晩年にもサイドマン=セッションミュージシャン時代のジョン・コルトレーンやビル・エヴァンスを迎えたアルバムを残していますが、ピアニストよりもバンドリーダー、作曲家、編曲家としての活動で名を残した人でした。ダメロンの書いたバップ曲は美しく滑らかなメロディーとコード進行で愛され、代表的な曲に「ホット・ハウス」や「アワ・デライト」、「グッド・ベイト」や「レディ・バード」などがありますが、バラード曲の極めつけといえば盟友ディジー・ガレスピーとともに発掘した新人女性シンガー、サラ・ヴォーン(1924-1990)のために1944年のサラの録音のために書き下ろしたこの「イフ・ユー・クッド・シー・ミー・ナウ」でしょう。シーラ・ジョーダン(1928-)はビ・バップのヒップな若い白人女性ファンで、ファンが嵩じてチャーリー・パーカーのバンドのピアニストだったデューク・ジョーダンと結婚した人でしたから、こういったビ・バップ最前線の黒人ジャズマンとはファミリー的交友関係がありました。デューク・ジョーダンと離婚したその年に34歳にしてジャズ・ヴォーカリストとしてデビュー・アルバムを吹きこむことになって、この曲をみずみずしく歌いあげているのはシーラ・ジョーダンならではのビ・バップからの深い蓄積がうかがえます。
バックのギター、ベース、ドラムスだけの伴奏も見事なもので、ドラムスのデンジル・ベスト(1917-1965)だけが黒人ジャズマンですが、作曲家としてもビ・バップ・スタンダード「ムーヴ」で知られるベストはもちろん前記の尖鋭ビ・バップ・ジャズマンに混じって活動してきた人ながら、1953年に交通事故で両足を負傷して以来第一線を退き、ごく稀にしか演奏しないミュージシャンになりました。この曲で聴けるベストのブラシによるドラムス演奏はジャズ・ドラムスのブラシ・プレイでも白眉のものです。この曲は1998年にグラミー賞の名曲の殿堂入りを果たしており、器楽ジャズでもギル・エヴァンス、チェット・ベイカー、ユーゼフ・ラティーフ、レッド・ガーランド、ボビー・ティモンズ、ビル・エヴァンス、デクスター・ゴードン、ウェス・モンゴメリーなど白人黒人問わず愛されている曲ですが、テーマ・メロディーを端正に歌ったヴォーカル・ヴァージョンはこのシーラ・ジョーダンのアルバムのヴァージョンを真っ先に上げたいと思います。