レニー・トリスターノ Lennie Tristano - ライン・アップ Line Up (Lennie Tristano) (Atlantic, 1956) : https://youtu.be/leaVDv8GqIA - 3:34
Recorded at Tristano's home studio, New York City, 1954-1955
Released by Atlantic Records as the album "Tristano", Atlantic 73712, February 1956
[ Personnel ]
Lennie Tristano - piano, Peter Ind - bass, Jeff Morton - drums
盲目の白人ジャズ・ピアニスト、レニー・トリスターノ(1919-1978)はシカゴ出身で、1946年~1947年の間にニューヨークに進出し一躍批評家に注目され、トリスターノに師事するリー・コニッツ(アルトサックス、1927-)を筆頭とする有力新人の台頭もあり黒人ジャズのビ・バップに対応する白人ジャズのクール・スタイルの確立でトップクラスのジャズマンになった人でしたが、人気絶頂期は'50年頃までで、一般のリスナーには難解なスタイルとニューヨーク全体のジャズ不況の到来によって以降トリスターノ自身の意志で第一線から退いてしまいます。トリスターノの絶頂期にはまだLPレコードは開発されていなかったので、その時期までの録音はのちにアルバムにまとめられるSPレコード(シングル)単位のリリースか、または没後発掘・発表されたライヴ録音になります。LPレコードは'50年頃から10インチ・アルバム(片面10分強、AB面20分強)で普及し始め、'55年にはその後主流になる12インチ・アルバム(片面20分前後、AB面40分前後)が普及しましたが、しばらく音信のなかったトリスターノが初のフル・アルバムとして発表したのがA面自宅スタジオ録音、B面ライヴ録音からなる『鬼才トリスターノ』'56でした。
ライヴ録音はリー・コニッツを迎えたカルテットによるスタンダード曲集でしたが、『鬼才トリスターノ』で注目されたのはスタジオ録音のオリジナル4曲でした。冒頭曲「ライン・アップ」はテーマのないピアノ・トリオのインプロヴィゼーション曲ですが、コード進行はスタンダード曲「オール・オブ・ミー」を借りたものです。トリスターノはベーシストとドラマーにまずバックトラックを録音させ、テープ速度を落とし、または速めてピアノのインプロヴィゼーションをダビングし、通常速度に戻してマスターテープにする手法を用いました。ピアノの音色が異様にゴツゴツしているのはそのためで、ダビングとテープ速度の変換は意図的にこの音色効果を得るための手法です。トリスターノは黒人ジャズのビ・バップのリーダー、チャーリー・パーカー(1920-1955)と同様にレスター・ヤング(テナーサックス)とビリー・ホリデイ(ヴォーカル)をモダン・ジャズの祖と考えていたのでトリスターノやパーカーのスタンダード・レパートリーはビリーとレスターのレパートリーが中心でしたから、念頭にあったのはレスターの参加したビリー・ホリデイの同曲の初演版でしょう。トリスターノがいかに原曲離れしたヴァージョンを録音しオリジナル・タイトルの自作曲としたか、ビリー&レスターの名演とお聴き較べください。またパーカーとトリスターノのデュオ演奏による「オール・オブ・ミー」もトリスターノの自宅録音によって残されており、これを聴くとパーカーとのデュオの時点ですでに両者は「ライン・アップ」に近い解釈で「オール・オブ・ミー」を演奏していたのがわかります。
ビリー・ホリデイ Billie Holiday - オール・オブ・ミー All Of Me (Seymour Simons, Gerald Marks) (Columbia/Okeh, 1941) : https://youtu.be/4P0hG3sD0-E - 3:01
Recorded in New York City, March 21, 1941
Originally Released by Columbia/Okeh Records as 10'Shellac 78prm, Okeh 6214, 1941
Reissued by Sony Records as 2CD Compilation "A Portrait Of Lady Day(レディ・デイの肖像)", SRCS 7160~1, 1994
[ Billie Holiday And Her Orchestra ]
Billie Holiday - Vocal, Shad Collins - trumpet, Leslie Johnakins, Eddie Barefield - alto saxophones, Lester Young - tenor saxophone, Eddie Heywood - piano, John Collins - guitar, Ted Sturgis - bass, Kenny Clarke - drums
Charlie Parker & Lennie Tristano - All Of Me (Definitive, 2006) : https://youtu.be/1ttQfxIE2PM - 3:37
Recorded at Tristano's house, August 1951
Released by Definitive Records as the album "Charlie Parker With Lennie Tristano Complete Recordings", DRCD11289, 2006
[ Personnel ]
Charlie Parker - alto saxophone, Lennie Tristano - piano, Kenny Clarke - brushes (on a telephone book)