人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

ビル・エヴァンス Bill Evans - スパルタカス愛のテーマ Spartacus Love Theme (Verve, 1963)

ビル・エヴァンス - スパルタカス愛のテーマ (Verve, 1963)

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ビル・エヴァンス Bill Evans - スパルタカス愛のテーマ Spartacus Love Theme (Alex North) (Verve, 1963) : https://youtu.be/nAjjze5Ct44 - 5:10
Recorded at studio with Glenn Gould's piano, CD 318, New York City, May 20, 1963
Released by Verve Records as the album "Conversations with Myself", V6-8526, 1963

[ Personnel ]

Bill Evans - overdubbed piano
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ユーゼフ・ラティーYusef Lateef - スパルタカス愛のテーマ Love Theme From Spartacus (Alex North) (Moodsville, 1962) : https://youtu.be/BhqQFs7huwU - 4:15
Recorded at The Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, September 5, 1961
Released by Prestige/Moodsville Records as the album"Eastern Sounds", MVLP 22, April 1962

[ Personnel ]

Yusef Lateef - oboe, Barry Harris - piano, Ernie Farrow - bass, Lex Humphries - drums

 日本では過小評価の大物中の大物テナーサックス奏者ユーゼフ・ラティーフ(1920-2013)は、1962年にキャノンボール・アダレイのバンドに加入するまでずっとデトロイトのローカル・ミュージシャンでしたが当時すでに10作以上のアルバムを出しており、なんとチャーリー・パーカーと同い年生まれなのに、2013年の享年93歳の大往生までアルバム制作もライヴも活発だった化け物みたいな人でした。ひょっとしたらユーゼフ・ラティーフは死なないんじゃないかと言われていたような人です。ラティーフはテナーだけではなくフルートとオーボエの名手でもありました。ビッグバンド出身の白人サックス奏者にはクラリネットは当然としてフルートとオーボエも手がける人も少なくはありませんが、ジャズの小編成バンドでオーボエをフロントにする例自体がほとんどなく、また黒人サックス奏者でフルートはまだしもオーボエをソロ楽器で併用した人はラティーフさんくらいです。その上ラティーフはテナーとフルート、オーボエの使い分けもセンス抜群だったジャズマンでした。スタンリー・キューブリック監督作品、カート・ダグラス主演の大作歴史映画『スパルタカス』(アメリカ公開'60年10月)の映画音楽家アレックス・ノース(1910-1991)作曲のこの主題曲をいち早くバド・パウエル派ピアニストのバリー・ハリス(1929-)・トリオをバックにオーボエによる演奏でジャズ・カヴァーし、渋いスタンダード化したのもラティーフの功績です。

 その後この曲を愛奏曲とした人にビル・エヴァンス(1929-1980)がいます。ちなみにユーゼフ・ラティーフはイスラム教改宗名で、ラティーフさんの出生名はウィリアム・エヴァンス、つまりビル・エヴァンスでした。ピアニストの方のエヴァンスさんのヴァージョンはソロ・ピアノで演奏した録音とフルート奏者ジェレミー・スタイグ(1942-2016)との共演アルバムがあり、先に年間グラミー賞ベスト・ジャズ・アルバム賞を受賞したエヴァンス初のソロ・ピアノ・アルバム『自己との対話(Conversations with Myself)』のヴァージョンを上げました。『自己との対話』のソロ・ピアノ・ヴァージョンも内省的な素晴らしいヴァージョンですが同作はアルバム全8曲でトータルな印象を与えるものでした。やはり人気の高いスタイグとの共演版はスタイグの情熱的なフルートによってよりアグレッシヴなもので、エヴァンスの「スパルタカス愛のテーマ」と言うとソロ・ピアノ盤よりスタイグとの共演盤の方が有名でしょう。ですがスタイグ&エヴァンス盤は抒情的に美しさに傾きすぎているきらいがあり、これはやはりエヴァンスにとって同曲の初演だったソロ・ピアノの幽玄さと、ラティーフさんのオーボエバリー・ハリス・トリオによるバンドの、深みとコクと無常感すら感じさせる演奏の圧勝ではないでしょうか。同時期のジョン・コルトレーンの映画挿入歌のジャズ・カヴァーの大ヒット作「マイ・フェヴァリット・シングス(My Favorite Things)」に匹敵する素晴らしい大ヒット映画由来の'60年代当時の最新スタンダード曲演奏です。
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Bill Evans Trio with Jeremy Steig - Love Theme From Spartacus (Verve, 1969) : https://youtu.be/oeu3NR9Alx4 - 4:58
Recorded in New York City, January 30, February 3 & 5, March 11, 1969
Released by Verve Records as the album "Bill Evans with Jeremy Steig / What's New", V6-8777, 1969

[ Bill Evans Trio with Jeremy Steig ]

Bill Evans - piano, Jeremy Steig - flute, Eddie Gomez - bass, Marty Morell - drums