人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

ラリラリ東京/三浦正弘とアロハ・ブラザース (ポリドール, 1968)


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三浦正弘とアロハ・ブラザース - ラリラリ東京 (作詞作曲・信楽順三、編曲・早川博二) (ポリドール, 1968) - 3:03 : https://youtu.be/3DpLI7LyYnI
発売・ポリドールレコード, 日本 グラモフォン SDR 1367, 昭和43年(1968年)9月

(Reissued P-Vine "お願い入れて~幻の名盤解放歌集/ポリドール編" Compiled CD Front Cover)

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 この奇怪なムード歌謡は初回プレスのみで廃盤になり、長らく日本の戦後ポップス史研究家・(故)黒沢進氏を筆頭に注目されていましたが、1993年のコンピレーションCD『お願い入れて~幻の名盤解放歌集/ポリドール編』(P-Vine Records, PCD-1515, 1993)にアルバム最終曲として初収録されて陽の目を見、その後やはりポリドール系アーティストの楽曲を集めたコンピレーションCD『Let's Go Peacock (Japanese Rockin' Psyche&Punk '65-'71)』(ユニバーサル, UPCY-6107, 2005)でもアルバム最終曲の位置を飾っています。前年昭和42年最大のヒット曲はレコード大賞受賞曲ブルー・コメッツの「ブルー・シャトウ」と、ブルー・コメッツが作編曲・バックを勤めた美空ひばり「真っ赤な太陽」でしたが、昭和43年最大のヒット曲はザ・フォーク・クルセダーズの「帰って来たヨッパライ」であり、歌謡界ではグループ・サウンズが最盛期を迎えるとともに、高石友也、ジャックス、岡林信康五つの赤い風船アンダーグラウンドのフォーク・シーンが脚光を浴びた年でした。その一方でムード歌謡コーラス・グループでさえもサイケデリック・ムード歌謡に挑戦していた例として、ザ・タイガースと同じポリドール・レコードからリリースされた「ラリラリ東京」は、GSよりも刹那的に、アンダーグラウンド・フォークよりも深く、アンダーグラウンドな夜の住民の生態を生々しく描き出したものです。この曲がもっぱら日本のロック史・フォーク史研究家によって再発見され、重視されてきたのは、同年・昭和43年のロック(グループ・サウンズ)やアンダーグラウンド・フォークをもしのぐ官能的、かつ暗黒的なムードによります。

 

 三浦正弘とアロハ・ブラザースは昭和12年生まれの長兄・三浦正弘(スティール・ギター、ヴォーカル)をリーダーに、三浦悦夫(ベース、ヴォーカル・昭和15年生まれ)、三浦貞夫(ギター、ヴォーカル・昭和18年生まれ)、三浦春男(サイド・ギター、ヴォーカル・昭和20年生まれ)、三浦久雄(ウクレレ、ヴォーカル・昭和22年生まれ)の実の兄弟五人組のムード歌謡グループで、ジャクソン5より早く昭和32年(1957年)に結成、活動を始めました。結成10年を経て、グループはようやくポリドールレコード傘下のグラモフォンから昭和42年10月にシングル「失くした真珠」でデビューし、以降昭和43年3月の「あの日のあの娘」、昭和43年9月の「ラリラリ東京」、昭和44年3月の「ブルーナイト池袋」の4枚のシングルでポリドールを離れ、昭和45年(1970年)には東芝音楽工業傘下のリバティーに移籍、三浦正弘とハニー・ブラザーズ+三浦京子名義でシングル「イライラ東京」を1月にリリースします。この「イライラ東京」は「ラリラリ東京」と同じ信楽順三による作詞作曲で、「ラリラリ」を「イライラ」に変え、女性の一人称で実妹と思われる三浦京子(ソロでは三浦礼子名義でコロンビア傘下のデンオンから昭和43年10月にシングル「渚に消えた恋」でデビュー)がリード・ヴォーカルを取っており、リバティーからはこの1枚で終わりました。グループは三浦京子を加えた六人組で「三浦正弘とハニー・ロマン」と改名、クラウン・レコードに移籍し、昭和46年3月に「おもいでの東京」、同年秋?に「おもいでの京都」、昭和47年11月に「おもいでの雲仙」、昭和48年1月に「横浜の恋人たち」、さらに昭和48年にはグループ名を「三浦弘とハニー・ロマン」と改名し「今夜はオールナイト」をリリースしますが、同シングルを最後に'80年代までレコード発売が途絶えます。日本ビクターと契約し、男性メンバー(兄弟?)をさらに一人加えて「三浦弘とハニー・シックス」と改名し、昭和55年には初にして唯一のアルバム『女のとまり木~有線最新ヒットを歌う』をリリースしますが、9年ぶりのシングルとしてヒロシ&キーボーの大ヒット曲のカヴァー「三年目の浮気」を発売した昭和57年(1982年)以降の消息は不明です。このムード歌謡グループのレコードは11枚・22曲のシングル(三浦京子の唯一のシングルを数えれば12枚・24曲)、アナログLPのアルバムが1作ですからCD2枚組なら完全収録できる分量ですので、今後に完全なCD全集『三浦正弘とアロハ・ブラザース~コンプリート・レコーディング』の編纂・リリースが待望されますが、このムード歌謡グループは稀代の怪作「ラリラリ東京」1曲でこの先も長く記憶されていくでしょう。なおここまでのデータは、すべて中国の日本歌謡曲研究サイト「昭和碟典 ♥ Showa Pops Encyclopedia」に依りました。最後に同サイトへの外部リンク、同サイトに採録された「ラリラリ東京」の歌詞を掲載しておきます。

◎三浦正弘 - 昭和碟典 ♥ Showa Pops Encyclopedia http://showapops.com/wiki/%E4%B8%89%E6%B5%A6%E6%AD%A3%E5%BC%98

(Reissued Universal "Let's Go Peacock (Japanese Rockin' Psyche&Punk '65-'71)" Compiled CD Front Cover)

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ラリラリ東京
三浦正弘とアロハ・ブラザーズ

(作詞作曲・信楽順、編曲早川博二)

ラリ ラリ ラリ………………

あたしこの頃 ラリラリなのよ
なんだかとっても ラリラリなのよ
あなたを想えば ラリラリラリ………なのよ
涙ににじんた ラリラリ東京

ラリ ラリ ラリ………………

つれないそぶりが ラリラリなのよ
あびるお酒も ラリラリなのよ
あなたが欲しくて ラリラリラリ………なのよ
吐息がもえるの ラリラリ東京

ラリ ラリ ラリ………………

ひとりがせつなく ラリラリなのよ
思いも乱れて ラリラリなのよ
死ぬほどあなたに ラリラリラリ………なのよ
涙にやつれた ラリラリ東京

ラリラリラリラリ………………