人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

グル・グルの「カングルー」

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グル・グルといえばここ十数年来は数年おきに来日する人気バンドだが、実際来日するまでは誰もが複雑な思いだった。オリジナル・メンバーはリーダーひとり。かつてのグル・グルではない。でもリーダーがグル・グルを名乗って演奏する以上、それも最新型グル・グルと思って聴くしかない(あるいは、聴かない)。
グル・グルのオリジナル・メンバーはマニ・ノイマイヤー(リーダー、ドラムス、ヴォーカル)、アックス・ゲンリッヒ(ギター)、ウリ・トレプテ(ベース)。ドイツ人丸出しの名前ばかりで、スコーピオンズのルドルフ&クラウスに匹敵する。わざわざ感心することかって、英米以外では(英米内でも)英米人ふうのステージ・ネームにする場合が多いんですよ。それは…
(200字略)
そうそう、グル・グルのオリジナル・メンバーの話だった。ドラマーが歌うトリオだが、歌というより掛け声程度である。マニとウリはもともとフリー系の中堅ジャズマンで、ファースト・アルバム「UFO」'UFO'1970発表時にはもう30代。ギターのゲンリッヒだけ5歳下。マニとウリは変態音楽ならなんでもできちゃうし、そこにジミ・ヘンドリックスから知性を抜いたような(本当にそうなのだ。ゲンリッヒのギターを聴くとジミの知性が逆説的にわかる)変態ギタリストが入った。特にギターのハウリング音でUFOが着地(離陸?)してくるタイトル曲は茫然自失もので、グル・グルならでは。
続くセカンド・アルバム「ヒンテン(裏側)」'Hinten'1971でもバンドは好調。男(たぶんマニ)の裸の尻をアップにしたジャケットは絶対の自信がなければ普通採用しまい。
サード・アルバム「カングルー」'Kan Guru'1972でバンドは絶頂期を迎える。前2作の剃刀のような音から一転して浮遊感溢れる、飄々とした傑作アルバムに仕上がった。ジャケットの両面を掲載したのでご覧ください。流氷の上でカンガルーの母子が「カン・カン?」「グル・グル!」。裏は同じく流氷の上でカンガルー化してジャンプするマニさん。子供までターゲットにしたか?
そしてオリジナル・メンバー2人が抜けて40年、いまだにグル・グル名義でバンド活動するマニさんである。東京タワー臘人形館にはマニさん人形だってあるのだ。「疑うなら、見てくれば?」(ロートレアモン「マルドロールの歌」第六歌最終行)。