人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

この人を見よ!

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エッケホモー。というのがラテン語で「この人を見よ」らしいが、とぼけた響きだ。西脇順三郎が後期の詩でさかんに「ポポーイ」「ババーイ」という感嘆詞を使っている。古代ギリシャ語の哀嘆だという。もちろん西脇は現代日本に「ポポーイ」と響かせることで詩的滑稽味を浮かべるわけだ(が、説明されないとわからない)。
古代ギリシャといえばニーチェの専門でもある。それでエッケホモー、「この人を見よ」といえばフリードリッヒ・ニーチェ(1844-1900・ドイツ)最晩年の著作になる。1888年44歳の秋に2週間で書かれ、翌年初頭には精神錯乱に陥り1900年・56歳の逝去まで回復しなかった。半世紀前の詩人ヘルダーリーン(1770-1843)同様統合失調症と見られる。
ヘルダーリーンは36歳で完全な錯乱に陥り、寺男として逝去までの36年間を送った。ヘルダーリーンの特異な点は、完全な精神疾患の病相で詩作を続け、それが20世紀の詩を予言するような先駆性に富んでいたことで、過去や名前、時代すら妄想で錯乱していた精神障害者には通常不可能なことだ(ボードレールでさえ晩年の廃疾とともに詩作は不可能になった)。
ニーチェの「この人を見よ」は躁状態のパワーみなぎる面白い本で、自伝と全自作解説の入門書によし、その上長さもほどよい。これだけ読めばいい便利な一冊だが、いっぽうプログレッシブ・ロック略してプログレといえばこれにとどめを刺す。
図1●クリムゾン・キングの宮殿(1969/キング・クリムゾン)
この1枚でプログレというジャンルができて、しかも頂点を究めてしまった。A面の「21世紀の精神異常者」「風に語りて」「墓碑銘(エピタフ)」のインパクトと完成度は比類がない。特にイタリアではロック=プログレというくらい影響力が強かった。オザンナやイル・バレット・ディ・ブロンゾ、そして次の2枚が代表的。。
図2●ツァラトゥストラ組曲(1973/ムゼオ・ローゼンバッハ)
図4●フリッツに捧ぐ(1973/セミラミス)
クリムゾンは72年のメンバー・チェンジでさらに攻撃的な音楽性に変化し、フランスのエルドンは「限りなき夢」1976年から後期クリムゾン路線を打ち出す。
図3●インターフェイス(1977/エルドン)
次作「スタンド・バイ」1978でエルドンは絶頂を迎える。それはプログレの終焉でもあった。