人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

大島弓子「綿の国星」

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何年かぶりに取り出したら、第1巻(78年6月)の表紙はチビ猫じゃなくてラフィエルなんですね。しかも暗くて輪郭がはっきりしない(白泉社のコミックスは紙質が良くないし、インクの発色も悪いと思われる)。ソデのリード文に支離滅裂なものも多いから、大手他社のように実は少女マンガ(と少女読者)に自信がなかったのではないでしょうか。もっとはっきり言えば、わかっていなかった。そしてせいぜいアンケート結果程度で、内容はおろかコミックスの表紙に至るまでマンガ家に丸投げでした。

綿の国星」は最初の読み切りだけで大島弓子最大の大ヒット作となり、劇場用アニメや関連商品まで白泉社としても同時期の三原順はみだしっ子」と並ぶ主力作品だったでしょう。
たぶん同業者から「なんでチビ猫にしないの?表紙でしょう?」と言われまくったのでしょう。第2巻からは表紙はチビ猫になります。イラストも発色を考えた配色になります。

内容について言えば、例えば集英社の「りぼん」から引き継いだ(ご存じでしょうが、資本関係は小学館集英社白泉社という流れです)山岸涼子のヒット作「アラベスク」は元々正統派バレエ漫画でしたが、白泉社の「花とゆめ」に連載された第2部ではなんとも後味の悪い異常心理ドラマになりました。山岸はその延長線で掲載誌を「LaLa」に移し、「妖精王」「メタモルフォシス伝」そして匹敵する作品としては先に池田理代子オルフェウスの窓」(ロマノフ家の財宝と皇女アナスタシアの行方、ロシア革命史を生き抜く青年群像を描いた大河歴史マンガ)、後に倉田江美「静粛に、天才只今勉強中」(ジョセフ・フーシェの生涯を描いた、埋もれた傑作)くらいしか思いつかない大傑作「日出処の天子」を発表します。

以上列挙した作品群は今日読んでも圧倒的な名作ばかりですが(男性の中年読者でさえも)、白泉社も少女読者のピンポイントを把握した編集体制になってからは平均的な作家が主流を占め、異色の才能が登用される機会はめっきり減ってしまいました。「花とゆめ」では「学園アリス」くらいでしょうか。

大島弓子はいわゆる「(昭和)24年組」のなかでも特殊な位置にいた人で、現在でもなおそうです。あー、24年組について説明いるのかな?要りますねたぶん。これで大島弓子については、少なくともあと2回は解説が必要になってしまいました。