人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

(12)ヴァレンシュテイン、ほか

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販促のためとはいえ、名盤の薫り漂うこのジャケットはやりすぎ、反則ではなかろうか。実際はヴァレンシュテイン(Wallenstein,1972-1981)の傑作は第四作「コズミック・センチュリー」1973だがジャケがしょぽい。そこで内容は次点だがジャケの美しい「ストーリーズ、ソングス、シンフォニー」1975(画像1)を繰り上げる。
さらに予定外だが、「シーズンズ」1971、「モーニング」1972(画像2)の2作を残して消えたウィンド(Wind)をくわえる。ジャーマン・クラシカル・シンフォの典型といえる。垢抜けない抒情性はイギリスのスプリングらに通じる。ジャケがぜんぜんロックじゃないのがいい。
そして活動期間からみてもノヴァリス(Novalis,1972-1984,1994-)をドイツの抒情派ロックの大御所と見なしていいだろう。初期2作は英語詞だったが、ギタリスト・シンガーにデトレフ・ヨープを迎えた第三作「ゾマーベンド(夏の夕暮れ)」1976(画像3)は全曲の歌詞をノヴァリス(ロマン派詩人の方)から採り、マックス・パリッシュの絵画をジャケットに使って話題になる。

ところでジャーマン・ロックには技術に依存せず、センスと工夫で勝負するバンドが多かった。だがそういうバンドほど実は演奏も巧かったのが、未発表ライヴや映像が発掘されるにつれ判明してきた。
しかし英米プログレッシヴ・ロックをそのまま手本にしたバンドは、今回も名作ですよと推薦してはいるが、英米ロックとは演奏力に大人と子供くらいの差がある。

前回のヘルダーリンはいきなりオリジナリティの高い音楽から始めて主流ロックに接近していった。大学生くらいの力量はある。
今回のヴァレンシュテイン、ウィンドは贔屓目でもせいぜい高校生だろう。ノヴァリスとなるとプロで通じるギリギリに近い。「夏の夕暮れ」はA面2曲・B面1曲の大作ぞろいで淡々とした歌と演奏だが、不思議に飽きない。ドイツ語詞の朴訥とした響きが心地よい。
フランスはちょっと技量では語れないが、これがイタリアだとアルバム1~2枚残して消えたバカテク・バンドの宝庫になるのだ。子供の頃からの音楽教育の徹底だろうか?あるいは、正規の音楽教育を受けたミュージシャンがロックバンドを組むのがイタリア、落ちこぼれのロックがドイツなのかもしれない。ノヴァリス、やばいです。