人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

(5)妄想と思考障害(混合病棟)

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単科の精神病院が山奥にあるのは珍しくない。F病院もY病院もそうだった。大きな違いはF病院では男女別で閉鎖病棟がほとんど、Y病院では男女混合で開放病棟がほとんどだった。これは病棟内の風紀の乱れに如実に反映した。Y病院では施錠していない面会室に「セックス禁止」の貼り紙があった。どういうことか朝会で婦長に質問した人がいた。年に一、二件は未遂現場を押さえるという。ならば隠れて遂行した人もいるだろう。心身を休めたくて来たのに女性患者同士のけんかやアクセサリー盗難など日常茶飯の男女混合病棟はうんざりする。(男性患者のけんかは滅多にない。案外こういう環境では男はトラブルを避ける)。

あまり書いていると女嫌いを露呈しそうなのでこの辺にするが、本題も妄想系女性患者なので「女性蔑視」とは取らないでいただきたい。その前に一般論だが、男は女性との関わりから自己を確認することは少ない。だが女性は男との関わりから自己を確認する習癖がある。「男運が悪い」と本気でいう女性はいても「女運が悪い」と本気でいう男はいない。

何を言いたいかというと、これまで入院中に求婚してきた女性患者2人、ぼくから気があると妄想して騒ぎになったのが4人、退院後に不倫関係になった女性がひとりと、ぼくはこれまでさまざまな冤罪(最後のは釈明しないが)をこうむってきた。別の病棟からわざわざ女の子3人組で会いにくる子もいた。「ほらねー、素敵な人でしょう?」
確かにぼくは股下74センチだ。「いーなーSくんはモテて」と同室のKによく言われたものだ。3か月サイクルで退院していくぼくなどに関係妄想などよく持てると思うが、どうしてあんなに面白がれるのだろう。ぼくはだれにでも優しく親切で、この「だれにでも」が災いを招いた。ぼくが悪かったのだ。

つねに周囲の男性たちの気を惹かずにはいられず、いちどに集団は無理なので自主患者会の責任者をやらされていたぼくをダミーに選んだ、というのはあるかもしれない。Sは私に気があるんだ、とひと騒ぎしてしばらくたつとまた似たような騒ぎがある。そのたびに周囲がぼくの無実を証言してくれるのだが、ナースステーションの方では先刻承知なのだった。あれは妄想なのだろうか?注目を集めることに目的があるとしか思えないのだ。