ジャーマン・ロック(14)は最終回に相応しい大物、クラウス・シュルツェ(Kraus Schulze,デビュー1970-)で締めたい。元タンジェリン・ドリーム、元アシュ・ラ・テンペル、元コズミック・ジョーカーズを経てソロという経歴だけでもジャーマン・ロック創成期生き証人の凄みがある。さらにツトム・ヤマシタ「GO」1973プロジェクトではスティーヴ・ウィンウッド(トラフィック)、マイケル・シュリーヴ(サンタナ)と共演、日本のファー・イースト・ファミリー・バンド「NIPPONJIN」1976「多元宇宙への旅」1977をプロデュース、元クレイジー・ワールド・オブ・アーサー・ブラウンのアーサー・ブラウンとの共作アルバムを発表。八面六臂の活動にも一本筋が通っている。
とにかく40年間第一線で流行に左右されず自分の音楽をやってきた人なので作品数が半端ではない。この人の音楽は起源をたどればアントン・ブルックナー(1824-1896)の現代版といえる。本職は教会楽士、後世に残したのは9作の交響曲だけで、歌曲やピアノ・ソナタ、協奏曲、その他室内楽には目もくれなかった。どの交響曲も1時間半の大作で、世界的に評価が確立したのはブルックナーの後継者グスタフ・マーラー同様1960年代以降のことだ。
ブルックナーもマーラー(本職は専門指揮者)も生前に自作が演奏される機会は数回しかなかった。シュルツェがレコード時代に生れて恵まれたのは、膨大な作品数はレコーディング・アーティストだからこそ可能だったと言える。おそらくロックよりもロック出身者による現代クラシックとして接したほうがシュルツェの真価が判る。
シュルツェの多作ぶりに呆れてみよう。まずメンバー、共作が30枚。ソロ・アルバムは60作、LP時代は2枚組も多く、2000年前後にはCD10枚組、25枚組、50枚組で度肝を抜いた。リマスターCDにはアルバム1枚分の未発表録音がついてくる。もちろん本人監修だから全作品を把握しているに違いない。ブルックナー同様、この人もアスペルガー症候群を指摘され得る。
推薦アルバムは第一作「イルリヒト」1972(画像1)、第三作「ピクチャー・ミュージック」1973(画像2)、第五作「タイムウィンド」1975(画像3)を。テクノではありません。クラシックです。