人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

(6)妄想と思考障害(双曲性障害編)

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筆者は双曲性障害1型で、最新(といっても10年前)の統計によると1サイクルで鬱期間32パーセント・軽躁/躁期間10パーセント・躁鬱混合期間6パーセント・寛解期間52パーセントとなる。この1サイクルが半年か2年か5年か、問題の発生しやすい躁の期間を軽減または短縮できるかが躁鬱病の課題になる。
参考までに双曲2型のサイクルを同じ統計から引いておくと、典型的な躁鬱病である1型と、従来は単極性の鬱病として診断されてきた2型の違いが判る。すなわち双曲2型では1サイクルに鬱期間50パーセント・軽躁/躁/躁鬱混合期間6パーセント・寛解期間44パーセントとなり、躁状態も短期間で軽躁だから鬱からの快復と見られやすい。鬱と双曲2型の区分はごく最近の成果なので、違いは経過観察と治療法だと言っていいだろう。診断名に固執する必要も怖れる必要もないが、どんな方針に基づいて治療が行われているのかを知る目安として診断名はわかりやすい。

その前に。古代や中世、近代の心理学・現代の精神医学でも精神疾患は無縁な人にはロマンティックな好奇心をかきたててきた。はっきり言うが、鬱とは完全に生産性を絶たれた状態、躁は狂乱以外のなにものでもない。精神疾患をかかえていても約50パーセントの寛解期がないと創造的な作業は不可能といえる。
ぼくが接してきた入院病棟の慢性患者たちは、もう5年~30年に渡り寛解期を失った人たちだった。ひとりで留守番もできない。お使いもできない。電車にも乗れない。入院という保護された環境でしか生きられない。そしてひとりひとりの妄想の中で生きている。

双曲性障害自体も診断の難しい病気で、ぼくも鬱病で治療を受け始めてから躁期間が生じて躁鬱病の診断に改められるまで2年かかった。大人は落ち着いた鬱期間に受診する。同居家族が連れてきて大暴れの大人患者は統合失調症と診断される。初診で躁鬱病と診断しやすいのは同居家族のいる青少年で、家庭内暴力と過剰な自傷行為(果物ナイフで全身血まみれ、など)、カード払いのとんでもない浪費などやることが最初から派手なのでわかりやすい。だいたい精神疾患は鬱か統合失調症に大別されて、鬱が一過性ではないとわかると躁鬱病になる。古代からの文献でも精神疾患躁鬱病統合失調症のどちらかになる。近代まで純粋な鬱の概念はなかった、ということだ。なぜか?