人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

ラリラリ東京/三浦正弘とアロハ・ブラザース (ポリドール, 1968)


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三浦正弘とアロハ・ブラザース - ラリラリ東京 (作詞作曲・信楽順三、編曲・早川博二) (ポリドール, 1968) - 3:03 : https://youtu.be/3DpLI7LyYnI
発売・ポリドールレコード, 日本 グラモフォン SDR 1367, 昭和43年(1968年)9月

(Reissued P-Vine "お願い入れて~幻の名盤解放歌集/ポリドール編" Compiled CD Front Cover)

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 この奇怪なムード歌謡は初回プレスのみで廃盤になり、長らく日本の戦後ポップス史研究家・(故)黒沢進氏を筆頭に注目されていましたが、1993年のコンピレーションCD『お願い入れて~幻の名盤解放歌集/ポリドール編』(P-Vine Records, PCD-1515, 1993)にアルバム最終曲として初収録されて陽の目を見、その後やはりポリドール系アーティストの楽曲を集めたコンピレーションCD『Let's Go Peacock (Japanese Rockin' Psyche&Punk '65-'71)』(ユニバーサル, UPCY-6107, 2005)でもアルバム最終曲の位置を飾っています。前年昭和42年最大のヒット曲はレコード大賞受賞曲ブルー・コメッツの「ブルー・シャトウ」と、ブルー・コメッツが作編曲・バックを勤めた美空ひばり「真っ赤な太陽」でしたが、昭和43年最大のヒット曲はザ・フォーク・クルセダーズの「帰って来たヨッパライ」であり、歌謡界ではグループ・サウンズが最盛期を迎えるとともに、高石友也、ジャックス、岡林信康五つの赤い風船アンダーグラウンドのフォーク・シーンが脚光を浴びた年でした。その一方でムード歌謡コーラス・グループでさえもサイケデリック・ムード歌謡に挑戦していた例として、ザ・タイガースと同じポリドール・レコードからリリースされた「ラリラリ東京」は、GSよりも刹那的に、アンダーグラウンド・フォークよりも深く、アンダーグラウンドな夜の住民の生態を生々しく描き出したものです。この曲がもっぱら日本のロック史・フォーク史研究家によって再発見され、重視されてきたのは、同年・昭和43年のロック(グループ・サウンズ)やアンダーグラウンド・フォークをもしのぐ官能的、かつ暗黒的なムードによります。

 

 三浦正弘とアロハ・ブラザースは昭和12年生まれの長兄・三浦正弘(スティール・ギター、ヴォーカル)をリーダーに、三浦悦夫(ベース、ヴォーカル・昭和15年生まれ)、三浦貞夫(ギター、ヴォーカル・昭和18年生まれ)、三浦春男(サイド・ギター、ヴォーカル・昭和20年生まれ)、三浦久雄(ウクレレ、ヴォーカル・昭和22年生まれ)の実の兄弟五人組のムード歌謡グループで、ジャクソン5より早く昭和32年(1957年)に結成、活動を始めました。結成10年を経て、グループはようやくポリドールレコード傘下のグラモフォンから昭和42年10月にシングル「失くした真珠」でデビューし、以降昭和43年3月の「あの日のあの娘」、昭和43年9月の「ラリラリ東京」、昭和44年3月の「ブルーナイト池袋」の4枚のシングルでポリドールを離れ、昭和45年(1970年)には東芝音楽工業傘下のリバティーに移籍、三浦正弘とハニー・ブラザーズ+三浦京子名義でシングル「イライラ東京」を1月にリリースします。この「イライラ東京」は「ラリラリ東京」と同じ信楽順三による作詞作曲で、「ラリラリ」を「イライラ」に変え、女性の一人称で実妹と思われる三浦京子(ソロでは三浦礼子名義でコロンビア傘下のデンオンから昭和43年10月にシングル「渚に消えた恋」でデビュー)がリード・ヴォーカルを取っており、リバティーからはこの1枚で終わりました。グループは三浦京子を加えた六人組で「三浦正弘とハニー・ロマン」と改名、クラウン・レコードに移籍し、昭和46年3月に「おもいでの東京」、同年秋?に「おもいでの京都」、昭和47年11月に「おもいでの雲仙」、昭和48年1月に「横浜の恋人たち」、さらに昭和48年にはグループ名を「三浦弘とハニー・ロマン」と改名し「今夜はオールナイト」をリリースしますが、同シングルを最後に'80年代までレコード発売が途絶えます。日本ビクターと契約し、男性メンバー(兄弟?)をさらに一人加えて「三浦弘とハニー・シックス」と改名し、昭和55年には初にして唯一のアルバム『女のとまり木~有線最新ヒットを歌う』をリリースしますが、9年ぶりのシングルとしてヒロシ&キーボーの大ヒット曲のカヴァー「三年目の浮気」を発売した昭和57年(1982年)以降の消息は不明です。このムード歌謡グループのレコードは11枚・22曲のシングル(三浦京子の唯一のシングルを数えれば12枚・24曲)、アナログLPのアルバムが1作ですからCD2枚組なら完全収録できる分量ですので、今後に完全なCD全集『三浦正弘とアロハ・ブラザース~コンプリート・レコーディング』の編纂・リリースが待望されますが、このムード歌謡グループは稀代の怪作「ラリラリ東京」1曲でこの先も長く記憶されていくでしょう。なおここまでのデータは、すべて中国の日本歌謡曲研究サイト「昭和碟典 ♥ Showa Pops Encyclopedia」に依りました。最後に同サイトへの外部リンク、同サイトに採録された「ラリラリ東京」の歌詞を掲載しておきます。

◎三浦正弘 - 昭和碟典 ♥ Showa Pops Encyclopedia http://showapops.com/wiki/%E4%B8%89%E6%B5%A6%E6%AD%A3%E5%BC%98

(Reissued Universal "Let's Go Peacock (Japanese Rockin' Psyche&Punk '65-'71)" Compiled CD Front Cover)

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ラリラリ東京
三浦正弘とアロハ・ブラザーズ

(作詞作曲・信楽順、編曲早川博二)

ラリ ラリ ラリ………………

あたしこの頃 ラリラリなのよ
なんだかとっても ラリラリなのよ
あなたを想えば ラリラリラリ………なのよ
涙ににじんた ラリラリ東京

ラリ ラリ ラリ………………

つれないそぶりが ラリラリなのよ
あびるお酒も ラリラリなのよ
あなたが欲しくて ラリラリラリ………なのよ
吐息がもえるの ラリラリ東京

ラリ ラリ ラリ………………

ひとりがせつなく ラリラリなのよ
思いも乱れて ラリラリなのよ
死ぬほどあなたに ラリラリラリ………なのよ
涙にやつれた ラリラリ東京

ラリラリラリラリ………………

2021年春アニメ(4月~6月)放映予定一覧表(首都圏地上波版)

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◎2021年春アニメ(4月~6月)を首都圏地上波放映の新作に絞って、曜日別・放映時刻順にまとめ、初回放映日を記載しました。ネット配信作品は無料放映局のみを併記しました。民放局は深夜帯のみに絞りましたが、NHK放映の新作は夕方~晩放映作品も高評価を受けた話題作が並ぶので、深夜帯以外の作品もリストに加えました。放映が始まると放映時刻の異動や再放映番組も出てくると思われますので、暫時リストに追加していく予定です。ほとんどの新作が地方局でも放映されますので、首都圏以外の方にもご参考いただければ幸いです。

●日曜日
◎ドラゴン、家を買う。
TOKYO MX:04/04(日) 22:00~
>BSフジ:04/06(火) 24:00~
憂国のモリアーティ 後半クール
TOKYO MX:04/04(日) 22:30~
BS11:04/06(火) 24:00~
NOMAD メガロボクス2
TOKYO MX:04/04(日) 23:00~
BS11:04/06(火) 24:30~
さよなら私のクラマー
TOKYO MX:04/04(日) 23:30~
BS日テレ:04/04(日) 23:30~
◎セブンナイツレボリューション -英雄の継承者-
TOKYO MX:04/04(日) 24:00~
BS11:04/04(日) 24:00~
◎キングダム 第3シリーズ※第1話から放送再開
NHK総合:04/04(日) 24:10~
◎戦闘員、派遣します!
TOKYO MX:04/04(日) 24:30~
BS日テレ:04/05(月) 24:00~
◎黒ギャルになったから親友とヤってみた。
TOKYO MX:04/04(日) 25:00~
BS11:04/04(日) 25:00~
◎東京リベンジャーズ
テレビ東京:04/11(日) 25:35~
BS朝日:04/18(日) 23:00~

●月曜日
◎やくならマグカップ
TOKYO MX:04/05(月) 22:30~
BS11:04/05(月) 23:00~
不滅のあなたへ
NHK Eテレ:04/12(月) 22:50~
◎恋と呼ぶには気持ち悪い
TOKYO MX:04/05(月) 23:00~
>BSフジ:04/08(木) 24:30~
◎ひげを剃る。そして女子高生を拾う。
TOKYO MX:04/05(月) 24:00~
BS11:04/05(月) 24:00~
フルーツバスケット The Final
テレビ東京:04/05(月) 25:30~
◎オッドタクシー
テレビ東京:04/05(月) 26:00~

●火曜日
◎ふしぎ駄菓子屋 銭天堂 新シリーズ
NHK Eテレ:04/06(火) 18:45~
SDガンダムワールド ヒーローズ
TOKYO MX:04/13(火) 22:29~
BS11:04/10(土) 19:00~
◎転スラ日記
TOKYO MX:04/06(火) 23:00~
BS11:04/06(火) 23:30~
聖女の魔力は万能です
TOKYO MX:04/06(火) 24:30~
BS11:04/07(水) 24:00~
◎擾乱 THE PRINCESS OF SNOW AND BLOOD
日本テレビ:04/06(火) 25:29~
BS日テレ:04/07(水) 24:00~

●水曜日
◎宇宙なんちゃら こてつくん
NHK Eテレ:04/07(水) 18:45~
◎MARS RED
TOKYO MX:04/07(水) 22:00~
>BSフジ:04/07(水) 24:30~
◎究極進化したフルダイブRPGが現実よりもクソゲ―だったら
TOKYO MX:04/07(水) 23:30~
BS11:04/07(水) 25:00~
◎セスタス -The Roman Fighter-
>フジテレビ:04/14(水) 24:55~
スーパーカブ
TOKYO MX:04/07(水) 25:35~
BS11:04/09(金) 25:00~

●木曜日
ゴジラ シンギュラポイント(Godzilla Singular Point)
TOKYO MX:04/01(木) 22:30~
BS11:04/01(木) 22:30~
◎Fairy蘭丸~あなたの心お助けします~
TOKYO MX:04/08(木) 23:30~
BS日テレ:04/08(木) 23:30~
ゾンビランドサガR(リベンジ)
TOKYO MX:04/08(木) 24:00~
BS11:04/08(木) 24:30~
◎バクテン!!
>フジテレビ:04/08(木) 24:55~
◎幼なじみが絶対に負けないラブコメ
TOKYO MX:04/15(木) 25:05~
BS11:04/15(木) 23:00~
異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術Ω (第2期)※BS-TBSは初回は2話連続放送
>TBS:04/08(木) 25:28~
BS-TBS:04/17(土) 26:00~

●金曜日
◎SSSS.DYNAZENON(ダイナゼノン)
TOKYO MX:04/02(金) 22:00~
BS11:04/02(金) 23:30~
Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀3※人形劇
TOKYO MX:04/03(土) 22:30~
BS日テレ:04/03(土) 24:00~
◎灼熱カバディ
テレビ東京:04/02(金) 25:23~
すばらしきこのせかい The Animation
>TBS系:04/09(金) 25:25~
結城友奈は勇者である ちゅるっと!(ショートアニメ)
>TBS系:04/09(金) 25:50頃~
◎BLUE REFLECTION RAY/澪
>TBS:04/09(金) 25:55~
BS-TBS:04/09(金) 26:30~
ましろのおと
>TBS:04/02(金) 26:25~
BS-TBS:04/02(金) 27:00~

●土曜日
僕のヒーローアカデミア 第5期
日本テレビ系:03/27(土) 17:30~
◎魔入りました!入間くん 第2シリーズ
NHK Eテレ:04/17(土) 17:35~
◎スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました
TOKYO MX:04/10(土) 22:00~
BS11:04/10(土) 22:00~
◎Vivy -Fluorite Eye's Song-
TOKYO MX:04/03(土) 23:30~
BS11:04/03(土) 23:30~
◎86―エイティシックス―
TOKYO MX:04/10(土) 24:00~
BS11:04/10(土) 24:00~
◎シャドーハウス
TOKYO MX:04/10(土) 24:30~
BS11:04/10(土) 24:30~
◎赤ちゃん本部長
NHK総合テレビ:03/28(土) 24:40~
◎EDENS ZERO
日本テレビ:04/10(土) 24:55~
BS日テレ:04/24(土) 24:30~
◎ダイナ荘びより
TOKYO MX:04/03(土) 24:57~
BS11:04/03(土) 24:57~
◎イジらないで、長瀞さん
TOKYO MX:04/10(土) 25:00~
BS11:04/10(土) 25:00~
◎バトルアスリーテス 大運動会ReSTART!
テレビ朝日系:04/10(土) 25:30~
>BSフジ:04/13(火) 24:30~
◎美少年探偵団
テレビ朝日系:04/10(土) 26:00~

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五つの赤い風船 - フォーク・アルバム(第二集) (日本Victor, 1971)

五つの赤い風船 - フォーク・アルバム(第二集) (日本Victor, 1971)
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五つの赤い風船 - フォーク・アルバム(第二集) (日本Victor, 1971) : https://youtu.be/tKe-DD3u0Rg

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(a) From the album "おとぎばなし" (URC Record URL-1008, August 1, 1969)
Recorded at アオイ・スタジオ,
July 2 to 4, 1969

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(b) From the album "巫OLK脱出計画" (URC Record URL-1013, March 1970)
Recorded at アオイ・スタジオ, December 25 to 28, 1969 & January 15 to 20

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(c) From the album "イン・コンサート" (URC Record URG-4002, August 1970)
Recorded live at 東京厚生年金会館ホール, March 31 & April 1, 1970
Compile Released by 日本ヴィクター株式会社 Victor SJV-491, February 5, 1971
Compile Reissued by 日本ヴィクター株式会社 Victor SF-1004, July 5, 1971
全作詞・作曲=西岡たかし
(Side 1)
A1. 時は変ってしまった - 3:01 (b)
A2. プレゼント - 3:57 (b)
A3. ささ舟 - 2:25 (b)
A4. どこかの星に伝えて下さい - 3:30 (b)
A5. てるてる坊主 - 2:08 (b)
A6. 小さな夢 - 2:09 (b)
A7. 巫OLK脱出計画 - 4:11 (b)
(Side 2)
B1. これがボクらの道なのか - 2:43 (b)
B2. 遠い世界に - 8:35 (c)
B3. 夢みる女の子 - 1:27 (c)
B4. 一番星みつけた - 3:18 (c)
B5. おとぎ話をききたいの - 5:38 (a)
B6. 唄 - 3:47 (a)
[ 五つの赤い風船 Five Red Balloon ]
西岡たかし - vocal, guitar, vibraphone, piano, celesta, harmonica, recorder, autoharp
中川イサト - vocal, guitar (a)
東祥高 - guitar, piano, organ, vibraphone, accordion (b, c)
藤原秀子 - vocal, organ
長野隆 - vocal, bass
with (b)
木田高介 - drums, flute, tenor saxophone, piano, vibraphone

(Compile Victor "フォーク・アルバム(第二集)" LP Liner Cover)

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 大阪で1967年に活動を開始したフォーク・ロック・グループ、五つの赤い風船や、日本初のアンダーグラウンド・フォークのインディー・レーベル、あんぐら・れこーど・くらぶ(URC)については日本ヴィクターからリリースされた、URCからの初期2作『高田渡五つの赤い風船』(高田渡とのスプリット・アルバム)、初のフルアルバム『おとぎばなし』から選曲・編集発売された『五つの赤い風船 - フォーク・アルバム(第一集)』(Victor SJV-430, November 5, 1969)をご紹介した際に、最初の解散までのアルバム・リストとともに触れました。『五つの赤い風船フォーク・アルバム(第一集)』は高田渡とのスプリット・アルバム『高田渡五つの赤い風船』に収められた全9曲からオープニングとエンディングのインストルメンタル・テーマ曲2曲と「二人は」1曲を除いた6曲をA面に収め、ファースト・フルアルバム『おとぎばなし』収録の全12曲からインストルメンタル曲、民謡の改作曲、アヴァンギャルドな実験的楽曲6曲を除いて6曲をB面に収録したものでしたが、日本ヴィクターからの編集盤第二作になる本作は全17曲を収録したフルアルバム第二作でコンセプト・アルバム『巫OLK脱出計画』から実験的な小品を除いたA1~A7、B1の8曲に、『おとぎばなし』から『第一集』に収録洩れだったB5、B6、初のライヴ盤『イン・コンサート』からのB2~B4を合わせたものです。1971年2月発売の初回版ではA1が「これがボクらの道なのか」、B1が「時は変ってしまった」になっており、同年7月に『第一集』と同時再発売された際に上記の曲順に改められています。『巫OLK脱出計画』の「巫OLK」は「FOLK」と読ませてアルバム内容もメッセージ・フォークから実験的な作風を試みたコンセプト・アルバムでしたが、「これがボクらの道なのか」は従来のポップ路線に沿った人気曲となり、本作の初回版ではA面1曲目に収められていた五つの赤い風船の代表曲であり、「遠い世界に」とともに現在でも五つの赤い風船のライヴでの観客大合唱曲となっています。

 リーダーの西岡たかしは『巫OLK脱出計画』では意図的に実験的なサウンドを試みており、それはフォーク・ブームの中でも五つの赤い風船が'60年代中期のマイク真木や森山良子らに代表されるカレッジ・フォークの流れをくむポピュラー性によって高い人気を誇っており、ほぼ同期でアンダーグラウンド・シーン出身のフォーク・クルセダーズやジャックス、カレッジ・フォークに対するプロテスト・フォークの系譜になる高石友也岡林信康らに較べて穏健なフォーク・グループと見られていたことに反発したものでした。スプリット・アルバム『高田渡五つの赤い風船』はメッセージ・フォーク、プロテスト・フォーク系の楽曲ともども代表曲満載のデビュー作でしたし、初のフルアルバム『おとぎばなし』もメルヘン調のコンセプト・アルバムだったのですが、『巫OLK脱出計画』は不可解なタイトルともにはっきりとザ・フォーク・クルセダーズの『紀元貮阡年』1968.7、
ジャックスの『ジャックスの世界』1968.9や『ジャックスの奇蹟』1969.10、岡林信康の『私を断罪せよ』1969.8に対抗するアンダーグラウンド・フォークならではの試みであり、かまやつひろしの『ムッシュー/かまやつひろしの世界』1970.2や岡林信康の『見る前に跳べ』1970.6、はっぴいえんどの『はっぴいえんど(ゆでめん)』1970.8、西岡たかし自身が木田高介・斎藤哲夫との連名で制作したプロジェクト作『溶け出したガラス箱』'70.10と並んでオリジナル曲の日本語ロックにフォーク・ロック側から取り組んだアルバムであり、URCのディレクターを勤めていた元ジャックスの早川義夫がゲスト参加したライヴ・アルバム『五つの赤い風船イン・コンサート(第4集)』'70.8、2枚組アルバムとして制作され別売された『NEW SKY(アルバム第5集part1)』『FLIGHT(アルバム第5集part2)』'71.7に連なっていくアンダーグラウンドな実験性と、のちの商業フォーク・ロック(J-POPの起点となる'70年代~'80年代ニュー・ミュージック)に発展していくポピュラー性を両立させようとしたものでした。

 五つの赤い風船のオリジナル・アルバムはいずれもURCでの制作・リリースでしたが、日本ヴィクターからの編集盤はグループのポピュラーな側面の表れた楽曲中心の選曲、オリジナル・アルバムよりも多い曲数、何よりメジャー・リリースの強みでURCからのオリジナル・アルバムよりも広いリスナーを獲得していました。日本ヴィクターからはこの後『五つの赤い風船・ソロアルバム』(Victor SF-1010, November 5, 1971)、『ロサンゼルスの五つの赤い風船』(Victor CD4B-5027, July 25, 1972)、『五つの赤い風船ラスト・アルバム』(Victor SF-5007~8, November 1972, 2LP)、『五つの赤い風船ベスト・コレクション』(Victor SF-5017~8, November 25, 1973, 2LP)がリリースされますが、『五つの赤い風船・ソロアルバム』は西岡たかしの『溶け出したガラス箱』と藤原秀子のソロ・アルバム『私のブルース~藤原秀子ソロ・アルバム』'70.12からの選曲、『ロサンゼルスの五つの赤い風船』はロサンゼルスに渡ってそれまでのレパートリーをスタジオとライヴで再録音した2枚組アルバム『僕は広野に一人いる』'72.5を1枚ものに再編集したアルバム、『五つの赤い風船ラスト・アルバム』と『NEW SKY(アルバム第5集part1)』『FLIGHT(アルバム第5集part2)』にそれまでのアルバムのヴィクター盤未収録曲を加えたもの、そして『五つの赤い風船ベスト・コレクション』は解散コンサートの3枚組ライヴ盤『ゲームは終わり~解散記念実況盤』'72.10からの選曲にそれまでのアルバムのヴィクター盤未収録曲を加えたものでした。

 URCからのオリジナル・アルバムは『NEW SKY(アルバム第5集part1)』『FLIGHT(アルバム第5集part2)』まではいずれもアルバムごとにコンセプトを持ち、1作枚に実験性を高めたものでしたが、ロサンゼルス録音のスタジオ&ライヴ盤『僕は広野に一人いる』、解散コンサートの3枚組ライヴ盤『ゲームは終わり~解散記念実況盤』の時期には実質的に五つの赤い風船は解散を予定した消化試合の体制になっており、カレッジ・フォーク路線に戻ったファンサービス色の強い作風に後退しています。1969年~1971年までのアルバムは1990年代以降に日本独自のアシッド・フォーク、サイケデリック・ロック作品として再評価されることになりましたが、1975年の再結成アルバム『五つの赤い風船1975』以降現在まで続く五つの赤い風船は、全盛期のファンのためのカレッジ・フォーク路線に退行したと言ってよく、コンサートは初期アルバムの代表曲のヒットパレード的な選曲をさらにポップな演奏で観客とともに大合唱する、というレトロスペクティヴ的な活動になりました。ヴィクター盤での選曲はURCからのオリジナル・アルバムの実験性を極力排除し、巧妙にポピュラー・フォークのアルバムとして再編集したものですが、西岡たかし自身がその両極に振れていたのが逆にURCからのオリジナル盤では示されているという点で、オリジナル・アルバムとの聴き較べに興味をそそる編集盤となっています。日本独自のアシッド・ロック~サイケデリック・ロックとして聴くもよし、また穏健で平坦なカレッジ・フォーク系オールディーズ・フォークとしても聴ける点で、五つの赤い風船は今なお決定的評価の定まらないバンドとも言えます。むしろ欧米諸国のリスナーの方がこのサウンドからティム・バックリーやパールズ・ビフォア・スワインのようなアンダーグラウンドのアシッド・フォーク~サイケデリック・ロックと見なしているのが現状で、かえって日本のリスナーの方が五つの赤い風船をとらえづらい存在として持て余しているのです。

サン・ラ - ザ・ロード・トゥ・ディスティニー (Transparency, 2010)

サン・ラ - ザ・ロード・トゥ・ディスティニー (Transparency, 2010)
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サン・ラ Sun Ra and his Intergalactic Research Arkestra - ザ・ロード・トゥ・ディスティニー The Road To Destiny : The Lost Reel Collection Volume Six (Transparency, 2010) : https://youtu.be/l5uWaSPwk9E
Recorded live at the Club Gibus, Paris, France, October 18, 1973
Recorded by Tommy "Bugs" Hunter
Photography by Phil Woodruff
Masterd by Brian Albers
Special Thanks: Christopher Trent
Released by Transparency Records CD 0306, 2010
All written & arranged by Sun Ra expect as noted.
(Tracklist)
1. Intro - 0:28
2. Astro Black - 4:19
3. Discipline 27 - 9:05
4. Discipline 27-II - 28:12
5. Prepare For The Journey To Other Worlds / Swing Low Sweet Chariot (Spiritual Trad.) / Why Go To The Moon - 6:26
Total Time: 47:21
[ Sun Ra and his Intergalactic Research Arkestra ]
Sun Ra - keyboards, synthesizer (space instruments), vocals
Akh Tal Ebah - trumpet, flugelhorn
Kwame Hadi - trumpet, flute
Marshall Allen - alto saxophone, flute, oboe, piccolo flute
Danny Davis - alto saxophone, alto clarinet, flute
John Gilmore - tenor Saxophone, drums
Danny Ray Thompson - baritone saxophone, flute
Eloe Omoe - bass clarinet, flute
James Jacson - bassoon, flute, percussion
Alzo Wright - cello, viola, drums
Ronny Boykins - bass
Odun, Shahib - congas
Roger Aralamon Hazoume - Percussion, balafon (vibraphone), dance
Math Samba - percussion, fire eater
Tommy Hunter - drums
June Tyson - vocals, space ethnic voices
Cheryl Banks, Judith Holton, Ruth Wright - space ethnic voices

(Original Transparency "The Road To Destiny" CD Liner Cover)
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 2010年になって忽然と発掘リリースされた本作はサン・ラ専門発掘レーベルのTransparency社が2007年からリリースしていた発掘音源シリーズ『The Lost Reel Collection』の6作目にして、フランスでのみ発売されていた隠れライヴ名盤『Live in Paris at The Gibus』(Atlantic France, 1975)の続編、または補遺編というべきアルバムです。『Live in Paris at The Gibus』は本作と同じパリのジャズ・クラブ「ジーバス」で、1973年10月12日~19日の出演からサン・ラの承認のもとアトランティック・レコーズのフランス支社のスタッフにより収録されまとめられた、選曲や編集に意を凝らして非常に完成度の高い作品性を持ったライヴ盤でした。一方本作は、サン・ラ・アーケストラがニューヨークに進出した1962年以来ドラムスと専属エンジニアを勤めてきたトミー・ハンターによるライヴ音源が発見されたものであり(スペシャル・サンクスに名のあるクリストファー・トレント氏が発見、またはバンド公認リリースを取り持ったと思われます)、収録日も1973年10月18日と特定されています。収録時間47分強で編集の痕跡の見られないことから、おそらく1日2~3セット(宵、晩、深夜)行われたライヴのうち1セットがそのまま収録されて残されていたものでしょう。ジャズ・クラブは基本的に飲食店ですから、1時間程度の演奏をワンセットとして観客の食事や飲み物の注文のために休憩をはさみ、また1時間程度2セット目という具合にライヴが行われるのが通例です。
 
 前述の通りクラブ・ジーバスの出演はアトランティックのフランス支社によってライヴ収録されていたわけですが、サン・ラはアーケストラを結成した'50年代半ばから自主レーベルのサターン用にこまめにリハーサルやライヴを録音しており、それがサン・ラ没後まで次々と発掘リリースされて膨大なディスコグラフィーになっています。ニューヨーク進出後に参加したトミー・ハンターはオルガン・トリオとかけ持ちしており、機械の扱いに強かったことからドラムスのみならずバンド専属エンジニアも勤めることになりました。ハンター参加時にはサン・ラ・アーケストラはほとんど仕事がなく、メンバーはやむなく他のバンドとのかけ持ちやスーパーや飲食店のアルバイトをしてしのいでいましたから、都合に合わせて各担当楽器のメンバーごとに複数人が同時に在籍しており、ドラムスでいえばハンターの他にレックス・ハンフリーズ、クリフォード・ジャーヴィスらが参加し、時にはツイン・ドラムスやトリプル・ドラムスにもなれば、専任ドラマーの都合がつかない場合はメンバー全員がパーカッションに回り、看板テナーサックス奏者のジョン・ギルモアがドラムスをかけ持ちしたりしていました。バンドの運営がシカゴ時代同様ようやく順調になると専任パーカッション奏者も増員され、メンバー全員がサン・ラのアイディアで楽曲やアンサンブルによって複数楽器をかけ持ちするのも当たり前、という恐るべき柔軟性と結束力を持ったバンドになりました。スタジオ盤『Strange Strings』(Saturn, rec.1966/rel.1967)などはメンバー全員が弾いたこともない民族楽器系ギターを合奏しているアルバムです。サン・ラ・アーケストラがビ・バップ以降のモダン・ジャズの主流を占めたスモール・コンボのバンドでもなければ、1920年代以降のビッグバンド・ジャズのラージ・コンボのバンドとも違う融通無碍で変幻自在な、突出して特異なバンドだったのは、去る者は追わず、来る者は拒まずで規模を大きくしてきた、そうしたアーケストラのファミリー・コミューン的性格によります。
 
 本作に戻ると、トミー・ハンターはまだまだクラブ・ジーバス出演から記録用、またはサターンでのリリース候補用に他のセットも録音していた可能性が大きく、ただし発掘までの37年間の間に本作以外のマスターテープは散佚してしまったのでしょう。それでも完全な散佚よりは1セットだけでも保管されていたことは幸運でした。『Live in Paris at The Gibus』との重複曲は一切なく、演奏内容も高ければ未編集のため(冒頭、またはエンディングに欠落のある可能性はありますが)非常に価値ある、実況中継のように一気に聴ける好アルバムとなっています。1973年のアーケストラの音楽性は、従来の呪術的フリー・ジャズ路線にさらに祝祭的ゴスペル・ファンク色を強めた1971年後半~1972年の音楽性を円熟させていましたが、CD6枚組にもおよぶ1972年6月~8月収録の発掘ライヴ盤『Live At Slugs's Saloon』(Transparency, 2009)で判明したようにバンドは楽曲の重複なしにほぼ6時間にもおよぶレパートリーがいつでも演奏できました。本作にライヴ慣例のパーカッション・アンサンブルのオープニングがつけばほぼ1時間になるはずで、それがないのは冒頭の欠損か、セカンド・セット以降のセットだったからでしょう。普段のサン・ラのクラブ出演では1セットがどのように行われていたかを聴けて疑似体験できる点で、本作は貴重なドキュメンタリー的ライヴ音源となっています。LPレコードとして入念かつ慎重に選曲・編集され、アルバムとして作品性の高い『Live in Paris at The Gibus』とは好対照をなし、たがいに補いあう関係の内容をなす発掘音源です。バンド秘蔵のライヴ音源をこっそり聴かせてもらえるような楽しさがあり、生々しさでは完成度の高い『Live in Paris at The Gibus』より勝っているとも言えます。
 
 ただし1973年のサン・ラの発掘ライヴには7月6日ニューヨークでの単独コンサートを収録した『What Planet is This?』(Leo, 2006)があり、会場不明ながら日付が特定されていることから同作もバンド秘蔵音源と推定され、インプロヴィゼーションからジューン・タイソン独唱の「Astro Black」、そして「Discipline 27」へと続き、2時間強にもおよぶ『What Planet is This?』は本作『The Road To Destiny』に時期的には3か月先立つ、いわば1973年のアーケストラのライヴのフルセット完全版と言える発掘ライヴ音源です。ニューヨークでの単独コンサートでは本拠地ならではのノリの良い演奏が聴け、パリのクラブ出演では海外公演だけある緊張感の高い演奏が聴けるとあっても、本作は選曲・内容とも『What Planet is This?』の凝縮版とも言えるライヴ音源です。48分弱のうちに「Astro Black」から「Discipline 27」、さらに28分にもおよぶ長大なハイライト曲「Discipline 27-II」で大爆発し、ヴォーカル曲に挟んでゴスペル民謡曲「Swing Low Sweet Chariot」(同曲はニューヨーク進出直後の苦境時代にサン・ラを励ましたディジー・ガレスピーの定番曲でもありました)を演奏する賑やかなメドレーで構成された本作のセットは、クラブ出演の1セットとしては最上の構成に凝らされた選曲です。1973年のサン・ラのライヴは『What Planet is This?』、『Outer Space Employment Agency』(Alive/Total Energy, 1999)』、『The Universe Sent Me (The Lost Reel Collection Vol.5)』 (Transparency, 2008)、『Live in Paris at The Gibus』、さらに本作の後には『Concert for the Comet Kohoutek』(ESP, 1993)、『Planets Of Life Or Death: Amiens '73』 (Art Yard, 2015)といずれ劣らぬ快作が並び、サン・ラ生前リリースのアルバムは屈指の名盤『Live in Paris at The Gibus』があり、フルコンサート収録の発掘ライヴでは『What Planet is This?』『Concert for the Comet Kohoutek』があり、フェスティヴァル出演の名演には『Outer Space Employment Agency』があるので本作ほど充実した発掘ライヴ音源でも相対的に順位が下がってしまうのですが、こうなると最初にどれを聴いても聴くだけの価値はあり、あとはリスナーのめぐり合わせによるでしょう。どれを聴いても充実した1973年のサン・ラ・アーケストラのライヴが味わえ、他のどのライヴ盤を聴いてもそのアルバムならではの楽しみがあります。見つけたアルバムから聴いていけばいいので、本作よりも豊かなヴォリュームを誇る『What Planet is This?』『Outer Space Employment Agency』『Concert for the Comet Kohoutek』、サン・ラ生前の公式盤『Live in Paris at The Gibus』を先に聴いても、本作には本作ならではのサン・ラが聴けます。ぜひ冒頭のヴォーカル曲「Astro Black」だけでもお聴きいただけたら幸いです。これほどリスナーを鷲づかみにする、強烈なオープニング曲はありません。

五つの赤い風船 - フォーク・アルバム(第一集) (日本Victor, 1969)

五つの赤い風船 - フォーク・アルバム(第一集) (日本Victor, 1969)

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五つの赤い風船 - フォーク・アルバム(第一集) (日本Victor, 1969) : https://youtu.be/vjEs_bArPpc

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(a) From the album "高田渡五つの赤い風船" (URC Record URL-1001, February & August, 1969)
Recorded at 毎日放送千里丘第一スタジオ, November 13 & 26, 1968, January 3, 1969f:id:hawkrose:20210219135708j:image
(b) From the album "おとぎばなし" (URC Record URL-1008, August 1, 1969)
Recorded at アオイ・スタジオ,
July 2 to 4, 1969
Compile Released by 日本ヴィクター株式会社 Victor SJV-430, November 5, 1969
Compile Reissued by 日本ヴィクター株式会社 Victor SF-1003, July 5, 1971
全作詞・作曲=西岡たかし (expect as indicated)
(Side 1)
A1. 遠い世界に - 4:04 (a)
A2. 遠い空の彼方から - 5:45 (a「遠い空の彼方に」)
A3. 血まみれの鳩 - 5:33 (a)
A4. もしもボクの背中に羽根が生えていたら - 2:07 (a「もしもボクの世界に羽根が生えてたら」)
A5. 一つのことば - 4:58 (a「一つの言葉」)
A6. 恋は風に乗って - 2:20 (a)
(Side 2)
B1. まぼろしのつばさと共に - 2:57 (b)
B2. 時計 - 4:07 (b)
B3. 母の生まれた街 - 7:24 (b)
B4. 一滴の水 (作詞・作曲=中川イサト) - 2:37 (b)
B5. 青い空の彼方から - 2:45 (b)
B6. おとぎ話を聞きたいの - 5:38 (b)
[ 五つの赤い風船 Five Red Balloon ]
西岡たかし - vocal, guitar, vibraphone, piano, celesta, harmonica, recorder, autoharp
中川イサト - vocal, guitar
藤原秀子 - vocal, organ
長野隆 - vocal, bass
with (b)
木田高介 - drums
つのだ・ひろ - drums
谷野ひとし - bass

(Compile Victor "フォーク・アルバム(第一集)" LP Liner Cover, Insert, Gatefold Inner Cover & Side 1 Label)

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 1967年に大阪で結成されたフォーク・ロック・グループ、五つの赤い風船は、フォーク・シンガー高石友也のサード・アルバム『坊や大きくならないで~フォーク・アルバム第三集』(日本Victor SJV-405, June 1969)のバック・バンドにジャックスとともに起用され、マネジメントを手がけていた秦政明が当初会員限定配布のインディー・レーベルとして立ち上げた「あんぐら・れこーど・くらぶ(URC)」のアーティスト第一弾アルバムとして高田渡とのスプリット・アルバム『高田渡五つの赤い風船』(会員配布1969年2月)でデビューしましたが、URCはアルバムの反響の大きさと売れ行きから1969年8月からは新作の一般発売に踏み切ります。一般発売の第一弾は岡林信康のファースト・フルアルバム『わたしを断罪せよ』(URL-1007)と、五つの赤い風船のファースト・フルアルバム『おとぎばなし』でした。ただし当時はインディー・レーベルでの一般流通網は少なかったので、秦政明は高石友也のアルバムを出していた日本ヴィクター株式会社から少し遅れてURCからの岡林信康五つの赤い風船のアルバムからのコンピレーション・アルバムを日本ヴィクターからリリースしていきます。そこで五つの赤い風船の初期アルバムはURCからのオリジナル・アルバムとメジャー・レーベルの日本ヴィクターからのコンピレーション・アルバムの両方が並行してリリースされることになりました。本作『五つの赤い風船フォーク・アルバム(第一集)』は高田渡とのスプリット・アルバム『高田渡五つの赤い風船』に収められた全9曲からオープニングとエンディングのインストルメンタル・テーマ曲2曲と「二人は」1曲を除いた6曲をA面に収め、ファースト・フルアルバム『おとぎばなし』収録の全12曲からインストルメンタル曲、民謡の改作曲、アヴァンギャルドな実験的楽曲6曲を除いて6曲をB面に収録したものです。上記曲目は1971年7月リリースの再発盤によるもので、1969年11月リリースの初回版ではA1は「恋は風に乗って」、A6は「遠い世界に」と曲順が異なっており(曲名表記もURC盤とやや異なっており)、また初回版ではB面は5曲収録で、B5「青い空の彼方から」は1971年7月の再発盤で追加されたものです。

 西岡たかし(1944-)をリーダーとした五つの赤い風船は藤原秀子(1946-2013)と西岡の男女ヴォーカル、また西岡の作曲力で関西のフォーク界屈指の人気グループとなり、京都で結成されたフォーク・クルセダーズ、東京のジャックスと並ぶフォーク・ロックのグループでした。中川イサト(1947-)の優れたギター・ワーク、ベーシスト長野隆(年齢非公開)のジャズ指向のベースともに演奏力にも定評があり、『おとぎばなし』制作後に中川は脱退、ギタリストは東祥高に変わりますが、次作『巫OLK脱出計画』'70. 3、URCのディレクターを勤めていた元ジャックスの早川義夫がゲスト参加したライヴ・アルバム『五つの赤い風船イン・コンサート(第4集)』'70.8、2枚組アルバムとして制作され別売された『NEW SKY(アルバム第5集part1)』『FLIGHT(アルバム第5集part2)』'71.7は西岡たかしが木田高介・斎藤哲夫との連名で制作したプロジェクト作『溶け出したガラス箱』'70.10、藤原秀子のソロ・アルバム『私のブルース~藤原秀子ソロ・アルバム』'70.12と並んで高い評価を受けています。1972年に五つの赤い風船は急激に失速し、ロサンゼルス録音でそれまでのレパートリーを再録音した2枚組アルバム『僕は広野に一人いる』'72.5をリリースしますが、すでにグループとしての結束力はなくURCのアーティスト多数をゲストに迎えた解散コンサートの3枚組ライヴ盤『ゲームは終わり~解散記念実況盤』'72.10を発表して解散しました。以降も1975年には再結成アルバムを発表し、散発的な離合集散をくり返して現在もメンバー交代を経て活動中ですが、評価は『NEW SKY(アルバム第5集part1)』『FLIGHT(アルバム第5集part2)』までに尽きています。

 西岡たかしの指向はカレッジ・フォークの流れをくんだ大衆的フォーク、プロテスト・フォークと実験的なサウンド指向に分裂しており、カレッジ・フォーク系統の代表曲は「遠い世界に」「これがボクらの道なのか」、さらにメッセージ的な「母の生まれた街」などがあるかと思えば、プロテスト・フォークと実験的指向が融合した「血まみれの鳩」や全編が実験的なアルバム『溶け出したガラス箱』や『NEW SKY(アルバム第5集part1)』ではフォーク・クルセダーズやジャックスと肩を並べるアシッド・フォーク~サイケデリック・ロックに踏みこんでいるといった具合で、近年の五つの赤い風船=西岡たかしの再評価は『溶け出したガラス箱』や『NEW SKY(アルバム第5集part1)』で聴ける異様なサウンド感覚によるものです。すでに五つの赤い風船初期の代表曲がずらりと並ぶスプリット・アルバム『高田渡五つの赤い風船』(本作A面)は加藤和彦サウンド・プロデュースによるものであり、ライヴ盤『五つの赤い風船イン・コンサート(第4集)』は早川義夫のゲスト参加によってジャックスのサウンドをそのまま継承するメランコリックなものでした。しかし西岡たかし自身は観客とともに大合唱するカレッジ・フォーク系統の「遠い世界に」「これがボクらの道なのか」の路線に執着が強く、それが再評価~現在の五つの赤い風船の活動に初期アルバムの実験性を求めるリスナーには物足りない、旧態依然たるフォーク・グループという印象にとどめることになっています。西岡たかしにはその両面があり、それが現在のリスナーには五つの赤い風船の真価をつかみ難くしています。日本ヴィクター盤ではオリジナルのURC盤よりもポピュラーな面が強調された選曲なのが、むしろ五つの赤い風船の音楽的混沌を示しているとも言えます。また日本のアシッド・フォークの限界は五つの赤い風船に表れているとも言えるのです。

鈴木慶一とムーンライダース - 火の玉ボーイ (Elektra, 1976)

鈴木慶一ムーンライダース - 火の玉ボーイ (Elektra, 1976)

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鈴木慶一ムーンライダース - 火の玉ボーイ (Elektra, 1976) : https://youtube.com/playlist?list=PLJC5bOVBufwDMCd_2FKjGEsQ3-zegQJeX
Originally Released by ワーナー・パイオニア株式会社/エレクトラ Elektra L-8078E, January 25, 1976
全作詞作詞・鈴木慶一 (expect as noted)
(Side 1) City Boy Side
A1. あの娘のラブレター (作詞・鈴木慶一岡田徹/作曲・岡田徹) - 2:33
A2. スカンピン - 4:59
A3. 酔いどれダンスミュージック - 3:56
A4. 火の玉ボーイ - 4:38
A5. 午後のレディ - 3:24
(Side 2) Harbour Boy Side
B1. 地中海地方の天気予報~ラム亭のMama (作詞・矢野顕子/作曲鈴木慶一) - 7:20
B2. ウエディング・ソング (作詞・鈴木慶一岡田徹/作曲・岡田徹) - 3:30
B3. 魅惑の港 - 3:01
B4. 髭と口紅とバルコニー - 3:57
B5. ラム亭のテーマ~ホタルの光 (作曲・鈴木慶一スコットランド民謡) - 1:55 :
[ Personnel ]
The Moonriders, Last Show, Tin Pan Alley, Neighbours Of Metropolis
The Moonriders - 鈴木慶一, 鈴木博文, 椎名和夫, 武川雅寛, 土井正二郎, 橿渕哲郎, 岡田 徹
Last Show - 島村英二, 徳武弘文, 松田幸一, 村上 律, ロボコン
Tin Pan Alley - 細野晴臣, 佐藤 博, 林 立夫
Neighbours Of Metropolis - 松任谷愛介, 矢野顕子, 駒沢裕城, 稲葉国光, 矢野 誠, 白井良明, 八百谷 啓, 松本 裕、あがた森魚

(Original Elektra "火の玉ボーイ" LP Liner Cover & Side 1 Label)
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 はちみつぱい解散後、鈴木慶一ムーンライダース名義で発表された本作は実際は鈴木慶一のソロ・アルバムとして制作されたもので、バンド「ムーンライダーズ」の正式なデビュー・アルバムはパナム・レーベルからの『MOONRIDERS』(February 25, 1977, PANAM GW-4026)になります。鈴木慶一さんは早熟な才人で、ムーンライダーズの諸作も以降一作ごとに才気走ったアルバムになりますが、シンガーソングライターとしての曲の良さ、素晴らしいヴォーカリストの才能が素直に発揮されたアルバムは、むしろ作為の少ない、はちみつぱいのアルバムや本作、ムーンライダーズでは凝りすぎた内容から発売延期になった『マニア・マニエラ』の代わりに急遽ポップな新作として制作・発売された『青空百景』1982あたりになると思います。

 日本の'70年代~80年代のポップス界を担った豪華ミュージシャンがこぞって参加した本作の成立については、日本語版ウィキペディアにも詳述されていますから、詳しくはそちらをご覧ください。それより何より、本作は曲の良さ、鈴木慶一氏のヴォーカルの良さ、演奏の良さで、先入観なしに聴いてしみじみ良いアルバムと思える、'70年代の日本のロック/ポップス屈指の名盤で、むしろアルバム制作の背景など知らずに聴いた方が良い逸品です。余計な感想など本作についてはとどめておくことにいたします。

サン・ラ - ライヴ・アット・ザ・ジーバス 

サン・ラ - ライヴ・アット・ザ・ジーバス (Atlantic, 1975)
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サン・ラ Sun Ra and his Intergalactic Research Arkestra - ライヴ・アット・ザ・ジーバス Live in Paris at The Gibus (Atlantic France, 1975) : https://youtu.be/1P_J9iOWbTw
Recorded Live at The Club Gibus, Paris, between 12 to 19, October 1973
Released by Atlantic Records France, Atlantic 40 540, 1975
Reissued by Hurricane Records, S538-40540, 2003
Engendered by Hubert Lemaire, Jean Claude Chabin
Executive-Produced by Michel Salou
Assistance Produced by Olivier Zdrzalik
Produced, All written and arranged by Sun Ra expect as noted.
(Side A)
A1. Spontaneous Simplicity - 4:00
A2. Lights On A Satellite - 5:25
A3. Ombre Monde #2 (The Shadow World) - 12:15
(Side B)
B1. King Porter Stomp (Jelly Roll Morton) - 2:50
B2. Salutations From The Universe - 14:53
B3. Calling Planet Earth - 1:22
[ Sun Ra and his Intergalactic Research Arkestra ]
Sun Ra - piano, organ, electric vibraphone, space instruments, mini-moog synthesizer, vocal
Akh Tal Ebah, Kwame Hadi - trumpet, fluegelhorn
Marshall Allen - alto saxophone, flute, oboe, piccolo
Danny Davis - alto saxophone, flute, alto clarinet
John Gilmore - tenor saxophone, drums
Danny Ray Thompson - baritone saxophone, flute
James Jacson - bassoon, flute, percussion
Eloe Omoe - bass clarinet, flute
Ronnie Boykins - bass
Alzo Wright - cello, viola, percussion
Thomas Hunter - drums 
Odun, Shahib - percussion, conga
Aralamon Hazoume - percussion, balafon (vibraphone), dance
Math Samba - percussion, dance, fire eater
June Tyson, Judith Holton, Cheryl Banks, Ruth Wright - space-ethnic voices, dance

(Reissued Hurricane "Live in Paris at The Gibus" LP Liner Cover)
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 アトランティック・レコーズのフランス支社でのみ発売され、並みいるサン・ラ生前リリースのライヴ盤の中でもほとんど注目されていないのが本作です。1973年のサン・ラ・アーケストラ作品はサン・ラ生前に発売されたスタジオ盤は『Pathways to Unknown Worlds』(Impulse!, 1975)のみで、やはりインパルス!レコーズ用にレコーディングされたスタジオ盤『Cymbals』(増補版『Cymbals Sessions』)『Crystal Spears』(この2作は1972年初夏録音か1973年春録音に推定録音年が分かれています)、『Pathways~』の後に録音されたと推定される『Friendly Love』はいずれもサン・ラ没後の発掘発売までお蔵入りアルバムになっており、またアーケストラの自主レーベル・サターンからリリースされた『Celebration For Dial Times』は1973年録音か1974年録音・発売か解明されていません。他に1973年のスタジオ録音の発掘は『Untitled Recordings』(Transparency, 2008)に数曲収録されていますが、これは1973年録音から1985年録音にまで渡るプライヴェート録音集なので、まとまった1973年録音のスタジオ盤ではありません。この年のスタジオ録音は長い間未発表に終わることになったので、レコーズ発売が少なかった(前年1972年録音のスタジオ盤『Astro Black』『Discipline 27-II』『Space is The Place』の発売はありましたが)代わりに、アーケストラは頻繁にライヴ活動を行っていました。のちに発掘された『What Planet Is This?』(Leo, 2006)は1973年7月6日収録の発掘ライヴの快作でしたが、前年1972年(発掘ライヴ『Life is Splendid』)の出演に続いて1973年9月9日(または10日)のアン・アーバー・ブルース&ジャズ・フェスティヴァルの出演を収録した『Outer Space Employment Agency』(Alive/Total Energy, 1999)は当時ラジオ放送された音源で、これも充実した発掘ライヴです。同作はYouTubeにアップされておらずリンクつきで詳細にご紹介できないのは残念ですが、サン・ラ・アーケストラは9月にはフランスから始まる、1970年秋、1971年秋に続く三度目のヨーロッパ・ツアーに出発しました。残されている発掘音源でそのうちもっとも日付の早いのは『The Universe Sent Me(The Lost Reel Collection #5)』(Transparency, 2008)に1972年7月のニューヨークのライヴ3曲とカップリングされた1973年9月8日のパリ公演からの4曲ですが、さて9月8日にパリにいたサン・ラ・アーケストラが9月9日(または10日)にはミシガン州のフェスティヴァルに出演して、今回ご紹介する『Live in Paris at The Gibus』は10月12日~19日の間のパリのクラブ出演のライヴ収録というのは、いくら土星人のバンドとはいえデータの整合性がありません。各種音楽データ・サイトや発掘・再発リリースCDでは上記のようになっており、またサン・ラ・アーケストラが9月にはフランス公演をしていたのは確からしいので、アーケストラ公式サイトでは『Outer Space Employment Agency』を収録日未詳としています。前年のアン・アーバー・フェスティヴァル公演が9月に行われたとしても、『Outer Space Employment Agency』収録はヨーロッパ・ツアー以前の1973年7月か8月に行われたとするのが一応妥当と思われます。
 
 1973年後半のサン・ラ・アーケストラは経済的に困窮状態に陥っていたとされ、それはこの年録音の新作が次々お蔵入りしたからでもありますが、秋のヨーロッパ・ツアーは経済状態の回復を目指した窮地のドサ廻りでもありました。1970年夏の最初のフランス・ツアー時にフランスのBYGレーベルにスタジオ録音『Solar Myth Approach Vol.1』『Vol.2』を売りつけ、1970年秋のヨーロッパ・ツアー時にはイギリスのBlack Lion社に1968年のライヴ録音『Picture of Infinity』を売りつけ、ツアー中の収録のライヴ録音『Nuits de la Fondation Maeght, Volume I』『Volume II』(邦題『宇宙探求』)をフランスの Shandarレーベルに 、西ドイツでのライヴ録音『It's After the End of the World』(邦題『世界の終焉』)をドイツ・ポリドール/MPSレーベルに売りつけたのは結果的にバンドの収入にもアーケストラの国際的認知にもつながることになります。また1971年秋のヨーロッパ・ツアーでは寄る先々の国の放送局にライヴ音源を売りつけ、イギリスのFreedom社に予定されていたツアー最後の11月のデンマークのライヴ音源『Calling Planet Earth』を売りつけて、その現地調達資金で念願のエジプト・ツアーを12月に敢行します。エジプト・ツアーは各地のクラブ出演やテレビ出演で3週間あまりに渡って続けられ、この時のライヴ録音が'60年代初の全編ライヴの名盤『ナッシング・イズ(Nothing Is...)』(ESP, 1966)や『宇宙探求』や『世界の終焉』を継ぐサン・ラのライヴの金字塔、アーケストラの自主レーベルSaturnからリリースされたエジプト三部作(『Horizon』『Nidhamu』『Live in Egypt(Dark Myth Equation Visitation)』)になります。アトランティック・レコーズのフランス支社でのみリリースされた本作『Live in Paris at The Gibus』は、9月~10月に渡る1973年秋のヨーロッパ・ツアー終盤にパリのクラブ「ジーバス」で収録され、これを売り渡して帰国費用に充てたものでした。当時サン・ラはABCレコーズ傘下のインパルス!レーベル契約中だったので発売は2年後の1975年になり、しかもフランス盤しか発売されなかったために本作は注目を集めなかったのですが、これがなかなかの秀作で、サン・ラ没後に1973年度の発掘ライヴ音源は次々陽の目を見ることになりますが、それらのライヴが主催者録音やラジオ放送音源であったとしてもアルバム化を前提としていないものなのに較べて、本作は録音スタッフはフランス現地のアトランティック側であってもサン・ラ自身がプロデュースしており、明確にアナログLP1枚のアルバムとして制作された作品です。それは選曲にもよく現れており、1973年度のサン・ラの公式ライヴ盤としては屈指の完成度を誇るアルバムになっています。まず本作はアルバム構成がアナログLPフォームのAB面の構成にきっちりと表れています。本作の選曲・曲順はよく考えられ練られたもので、アナログLP時代のアーティストならではの繊細で入念な構成力を痛感させるものになっています。
 
A1. Spontaneous Simplicity - 4:00
A2. Lights On A Satellite - 5:25
A3. Ombre Monde #2 (The Shadow World) - 12:15
B1. King Porter Stomp (Jelly Roll Morton) - 2:50
B2. Salutations From The Universe - 14:53
B3. Calling Planet Earth - 1:22
 
 本作の収録曲、AB面の配曲と曲順は上記の通りで、片面20分前後、AB面で40分と実際のライヴのフルセットよりずっと短いものですが、だからこそAB面がそれぞれ20分前後で起伏を持ち、アルバム全編を聴くとまたA面冒頭から聴き返したくなる、レコード作品としては理想的な凝縮感が実際のライヴとは別に実現されています。本作のA1「Spontaneous Simplicity」はどこか地中海的なワルツで、オープニング曲としては異色ですが、異色のワルツから始まるからこそリスナーには遅れて着いたジャズ・クラブで演奏中の曲から聴き始めたような印象を生んでいます。この曲のサン・ラ生前の初出はライヴ・アルバム『Picture of Infinity』ですが、2014年のリマスター再発で1958年(または1959年)録音のアルバム『The Nubians of Plutonia』の未発表ボーナス・トラックで初演されていたことが判明しました。本作のライヴ・ヴァージョンはマーシャル・アレンのフルート・ソロ、サン・ラのシンセサイザーヴィブラフォンの同時演奏ソロによって決定的ヴァージョンと呼べる出来になっています。
◎Sun Ra & His Arkestra - Spontaneous Simplicity (from the album "The Nubians of Plutonia" sessions previouslyunreleased track, Saturn, 1966/2014) (rec.1958 or 1959) : https://youtu.be/WIkJylYD-PQ
◎Sun Ra & His Arkestra - Spontaneous Simplicity (from the album "Picture of Infinity", Black Lion,1971) (rec.1968) : https://youtu.be/LqVZJfiYOtY
 
 A2「Lights On A Satellite」もライヴ・ヴァージョンはレアな牧歌的バラードで、サックス陣のピッコロ&フルート持ち替えアンサンブルが典型的なサン・ラ節の架空のエキゾチック・ミュージックを奏でています。この曲も1960年録音の『Fate In A Pleasant Mood』、1961年(または1962年)録音の『Art Forms of Dimensions Tomorrow』と、60年代初頭録音のアルバムからの珍しい選曲です。
◎Sun Ra & His Arkestra - Lights On A Satellite (from the album "Fate In A Pleasant Mood", Saturn, 1965) (rec.1960) : https://youtu.be/M-vlvjGNcwk
◎Sun Ra & His Arkestra - Lights On A Satellite (from the album "Art Forms of Dimensions Tomorrow", Saturn, 1965) (rec.1961 or 1962) : https://youtu.be/I3wpzv7ddF4
 
 A3にしてA面のクライマックスとなるのは「Ombre Monde #2」とフランス語タイトルのついた「The Shadow World」で、同曲は1965年録音の名盤『The Magic City』が初出ですが、ライヴでは'60年代中盤から定番曲であり、1976年に発表された1964年のライヴ『Featuring Pharoah Sanders & Black Harold』から『ナッシング・イズ』『宇宙探求』『世界の終焉』と、ライヴ盤のたびに最新アレンジで収録されてきた曲です。本作でもアーケストラの誇る看板テナーサックス奏者ジョン・ギルモアの熱狂的なソロが聴ける、サン・ラの過激フリー・ジャズ路線の名演です。
◎Sun Ra & His Arkestra - The Shadow World (from the album "The Magic City", Saturn, 1966) (rec.1965) : https://youtu.be/Eyv_CRdHPZo
◎Sun Ra & His Arkestra - The Shadow World (from the album "Nothing Is...", ESP, 1966) (rec.1966) : https://youtu.be/LCCSR0tiPRE
 
 B面に移ると、この頃のサン・ラには珍しい(本来サン・ラの専門で、1976年以降本格的に取り組むようになる)古典ジャズの再解釈から始まります。B1「King Porter Stomp」は1910年代~1920年代の創始期のジャズ・ピアニスト、ジェリー・ロール・モートン(生年不詳1885~1894-1941)のオリジナル曲で、チャールズ・ミンガスにもモートンの曲調を模したオリジナル曲「Jelly Roll」がありますが、サン・ラ・アーケストラはミンガスのバンド以上に奔放です。クラシックのオーケストラや白人音楽の吹奏楽では規格外の、縦の線も揃わなければピッチもばらばらの真っ黒けな古典ジャズの世界が再解釈されます。
 
 続くB2「Salutations From The Universe」は15分近くにおよぶ本作だけのオリジナル曲で、32小節サン・ラの説法が披露されると32小節アーケストラ全員の集団即興演奏が応えるコール&レスポンス形式が前半を占め、後半はサン・ラの無伴奏電気オルガンとシンセサイザーの同時演奏ソロになります。ここでのサン・ラのソロは轟音・爆音を越えてノイズの域に達しており、1973年当時シンセサイザーのノイズ使用に踏みこんでいたのはブートレッグの名盤『Long Beach Arena』のキース・エマーソン、ホークウィンドのディック・ミック、旧チェコスロヴァキアで数少ない国家公認バンドのコレギアム・ムジカム(2LPの名盤『Konvergencie』はチェコ・ロックのNo.1アルバムとされています)のマリアン・ヴァルガくらいですが、ここでのサン・ラの前ではロックの過激なシンセサイザー使用など大人と子供以上の格の差があります。B2のコーダ部分にチラッと現れてそのまま終わってしまうのはサン・ラのフリー・ジャズ路線最初期のアルバム『When Sun Comes Out』の代表曲「Calling Planet Earth」ですが、これはライヴ定番曲ながら本作では断片的なコーダとして2分にも満たず終わってしまうので、曲名クレジットがないと判別できません。これは実質的にB2のエンディング部分というだけで、印税を水増しするために楽曲クレジットされたものと思われます。この曲もライヴ定番曲になりましたが、初出以降の再演でもっとも早い時期のテイクは、1971年録音のアルバム『Universe in Blue』のアウトテイクに含まれていることが同作の2014年のリマスター再発で判明しました。本作ではあくまでB2のサン・ラの無伴奏キーボード・ソロのコーダでしかありません。
◎Sun Ra & His Arkestra - Calling Planet Earth (from the album "When Sun Comes Out", Saturn, 1963) (rec.1963) : https://youtu.be/jyzi4OxK1aE
◎Sun Ra & His Arkestra - Calling Planet Earth~They'll Be Back (from the album "Universe in Blue" sessions previouslyunreleased track, Saturn, 1972/2014) (rec.1971) : https://youtu.be/TCK7fjOWa0Y
 
 以上、本作はこのアルバムでしか聴けない古典曲のカヴァーB1と新曲B2を含み、ライヴ盤収録は珍しいA1、A2の決定的ヴァージョンとライヴ定番曲A3の最新アレンジの名演も聴ける充実した選曲・配曲で、実際のライヴでは2時間ほどのセットリストで演奏されたであろうレパートリーから非常に作品性と完成度の高いライヴ盤に仕上げられたもので、インディー・レーベルのHurricane Recordsから2003年にLP・CD再発されたきりなのがもったいない出来映えです。CDにはサターン・レコーズから1973年にリリースされた1972年のスタジオ盤の名盤『Discipline 27-II』から3曲がボーナス・トラックとして収録されていますが、『Discipline 27-II』は個別でも必聴の名盤なので本作に抜粋追加収録される必要はないでしょう。アトランティック・レコーズのフランス支社に版権があるならアメリカのアトランティック本社からリマスターの上メジャー再発されてしかるべき充実したライヴ盤で、それがなされていないということはマスターテープが失われ、LPレコード起こしのインディー盤でしか出せないという事情が推測されます。しかし現在のリマスター技術ならアナログLP起こしでも再リリースする価値が本作には十分あり、本作は未聴のリスナーにはビギナーからマニアまで納得のいくサン・ラのライヴ名盤の一角を占めるだけのアルバムです。こういうアルバムがごろごろあるからサン・ラは全作品がおろそかにできないのです。日本のワーナー/ユニバーサルはオーネット・コールマンやラサーン・ローランド・カークばかりでなく、本作こそ率先して世界初メジャーCD化を実現してほしいものです。

裸のラリーズ Les Rallizes Denudes - ブラインド・ベイビー・ハズ・イッツ・マザーズ・アイズ Blind Baby Has Its Mothers Eyes (Japanese Rock, 2003)

裸のラリーズ - ブラインド・ベイビー・ハズ・イッツ・マザーズ・アイズ (Japanese Rock, 2003)

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裸のラリーズ Les Rallizes Denudes - ブラインド・ベイビー・ハズ・イッツ・マザーズ・アイズ Blind Baby Has Its Mothers Eyes (Japanese Rock, 2003) : https://youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_nC7GpAU1ty5yh9Nxc6iFa0NW45T_ZFJPo
Recorded in unknown studios, track 1 probably 1983, track 2 probably 1986
Track 3 Recorded 'le 12 mars 1977 a Tachikawa' (立川市民教育会館)
Compilation released by Japanese Rock CD-R JAPANESE ROCKの原点02, 2003
All written by Takashi Mizutani (水谷孝)
(Tracklist)
1. Blind Baby Has Its Mothers Eyes (aka 氷の炎) - 19:11
2. An Aweful Eternitie (aka 残酷な愛) - 18:06
3. The Last One - 17:00

[ 裸のラリーズ Les Rallizes Denudes ]

Mizutani (水谷孝) - lead Guitar, vocals
Track 1, 2 were second guitar, bass, drums unknown.
Nakamura Takeshi (中村武司) - electric guitar (track 3 only)
Hiroshi (楢崎裕史) - bass (track 3 only)
Mimaki Toshirou (三巻俊郎) - drums (track 3 only)

(Compilation Japanese Rock "Blind Baby Has Its Mothers Eyes" CD-R Liner Cover)
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 本作もイギリスのミュージシャン・批評家ジュリアン・コープが日本のロック研究書『ジャップロック・サンプラー(Japrock Sampler)』2007巻末の「ジャップロック・トップ50」で日本のロック名盤12位に選出し、やはり3位を飾った『ヘヴィアー・ザン・ア・デス・イン・ザ・ファミリー Heavier Than A Death In The Family』(Ain't Group Sounds, 1995)とともにコープの絶賛によって広く欧米諸国でイギリス盤がロングセラーになっているアルバムです。『Heavier Than~』は裸のラリーズの3作きりの公式アルバム中『LIVE '77』から選曲・再構成したコンピレーション盤でしたが、本作も全3曲がすでに流出していた音源から編集されたコンピレーション盤であり、代表曲が並びベスト盤的性格を持つ『Heavier Than~』を補うような位置にあるアルバムと言っていいでしょう。『Heavier Than~』のご紹介では成立事情を主に詳述しましたが、本作は『ジャップロック・サンプラー』のジュリアン・コープの評をそのままご紹介してアルバム解説に代えたいと思います。

《BLIND BABY HAS ITS MOTHERS EYES》
(ジャパニーズ・ロック、2003年)
 ディストーションの巨大な板が、この怪物のように直進的なアルバムのあらゆる継ぎ目を覆っている。超モノリス的なベースラインは、ところどころでダブっぽく消え去り、おかげで高音部が、大渦巻きに飲みこまれるのを待つ小舟のようにぐらついている。リード・ギターはこれまでにも増して、耳鳴りのする忘却に華々しくのめりこんでいるようで、水谷は自分の詩神にポスト黙示録的なのっぺらぼうさをもたらそうとするあまり、ハイハットとかき鳴らされるギターがプレイするつなぎのリズムを、意図的に捨て去っている。だがすさまじいアンプの雑音にもかかわらず、楽器の分離はギリギリで聞き取れ、この演奏がスタジオ・テイクであること、そして雑音はあえてのものだということがわかってくるのだ。水谷は80年代はじめ、これらの曲をより短縮化したヴァージョンでライヴ演奏し、80年代なかばから末期にかけてのスタジオ・セッションでも演奏していたことが知られている。圧倒的なパワーを持つオープニングのタイトル・トラックは、それまでにも何度かアルバムに収められていたグループの大作「氷の炎」を大きく改作した80年代ヴァージョンだ。このヴァージョンがまったく異なるベースラインに支えられ、まったく異なるメロディと、まったく異なる唱法で、まったく異なる歌詞をつけて歌われているという事実は、決して驚くにあたらない。トラック2は「An Aweful Eternitie」、またの名を「残酷な愛」という、抑圧されたモンスター。高音も低音もない、よそよそしい、謎めいた作品で、とりとめのない瞑想は、目的地に急ぐそぶりをいっさい見せない。このヴァージョンは10枚組のボックス・セット『STUDIO & SOUNDBOARD 1979-1986』で初登場し、1986年4月にレコーディングされたと言われている。レコードを締めくくるのは、当然のように「The Last One」で、ここにはピンと張りつめた、ハイエナジーな17分ヴァージョンが収められている。
 (翻訳2008年・白夜書房刊。この項全文)

 コープは意図的にか言及していませんが、本作の「The Last One」は公式アルバム『Live '77』のディスク2-3に収められた25分24秒のテイクの「The Last One」を短縮編集したものなのが早くから指摘されており、『Heavier Than A Death In The Family』ではこの曲は未収録でしたから、短縮編集版とはいえ本作でラリーズのライヴでは1969年以来必ず最後に演奏されていた代表曲「The Last One」が聴けることになります。『Heavier Than~』に未収録だった『Live '77』からのもう1曲「夜より深く」は初演時からあまりアレンジの変わらない曲で、やはりコンピレーション盤『December Black Children』に収められていますから、イギリス盤がロングセラーになっている『Heavier Than~』と本作、『December Black Children』の3作で『Live '77』の収録曲全曲が聴けます。本作と『France Demo Tapes』に共通収録されている「氷の炎」はアレンジが似通っていますが、『Heavier Than~』の「氷の炎」とはまったく異なるアレンジです。『Heavier Than~』と『France Demo Tapes』に共通収録されている「夜より深く」もまるで別曲のようにアレンジが異なります。20曲にもレパートリーの満たないラリーズに120枚以上もの発掘音源が出回っているのは演奏されるたびに楽曲が変化していく様子が聴けるからです。

 ちなみに本作がSNS上でどのような評価をされているかあちこち探してみたところ、各種の有名な音楽サイトはともかく、「旦那のCD棚を聴く」という主旨でブログを書いていらっしゃる主婦らしき方の面白い評を見つけました。

「『Blind Baby Has Its Mothers Eyes』Les Rallizes Denude

情報がなさすぎるけど
おそらくフランス人だろう

【感想】
どう考えても雑音です
有難うございます」

 コープさん、日本でも裸のラリーズへの認識はおおむねこんなものなんですよと教えてあげたくなる寸評です。本作の裏ジャケットにも「SEDAKA NO RALLIZES」と誤植されているじゃないですか。

追悼・オナマンのイノマーさん逝去一周忌

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オナニーマシーン - チンチンマンマン (from the album "彼女ボシュー", Loft Record, 2002) : https://youtu.be/f4p73ROKZbE

 日本の誇る21世紀のロックバンド、通称「オナマン」ことオナニーマシーンのヴォーカル、ベーシストのイノマーさんが亡くなって一周忌を過ぎました。結成以来20年の活動を行ってきたオナニーマシーンは解散を表明していませんが、イノマーさんの闘病以来事実上活動休止状態にあり、またリーダーだったイノマーさんの逝去、昨今の情勢によって日本語版ウィキペディアでは「活動期間 : 1999年 - 2019年」とされています。イノマーさん、オナニーマシーンについては、イノマーさん逝去後の日本語版ウィキペディアからそのまま孫引きさせてご紹介に代えさせていただきます。遅ればせながら、故人の冥福を心よりお祈り申しあげます。ちなみに日本語版ウィキペディアには「オナニーマシーン(オナニー機械)」とは晩年の同題エッセイにおける三島由紀夫の造語であることに触れられておりません。一筆つけ加えさせていただく次第です。

イノマー

日本のミュージシャン
(この項目には性的な表現や記述が含まれます。免責事項もお読みください。)
 イノマー(1966年11月27日 – 2019年12月19日)は、日本のロックバンド、オナニーマシーンのヴォーカル兼ベース担当。元音楽情報雑誌編集者。特殊分泌家。東京都北区出身。本名猪股昌也(いのまた まさや)。

◎来歴
 駒澤大学法学部卒業後、オリコンに入社。『オリコン・ウィーク The Ichiban』(後の『オリ★スタ』)の編集長に29歳の若さで就任。その後、紙面ではサブカルチャー、あるいはマニアックでエロかつ下品な文体・内容に満ちたコーナー等を担当。紙面において裸体を晒したなどで副編集長に降格。その後も昇進・降格を経験し、最終的には副編集長。音楽雑誌らしくない、その毒に満ちた個性的な記事はオリコンの顔でもあった。オリコン在籍時からラジオ番組などに出演し、他社の出版物である『インディーズ・マガジン』(当時リットー・ミュージック発行)にも寄稿した。長らく猪股をかばい、可愛がっていた小池聰行が死去した2001年に独立。しばらくオリコンに寄稿するも、誌面リニューアルにともない疎遠になる。その後は編集・執筆活動と共に、バンド活動をメインとする。
 AV鑑賞とオナニーが趣味。結婚を2度経験するが、いずれも妻に浮気されて離婚。その後は独身であった。音楽・お笑い関係の飲み友達が多く、その交友関係は広かった。
 2005年にはソフト・オン・デマンド(SODクリエイト)よりAV監督デビュー(タイトルは『素人お嬢さんに色々わがまま言ってオナニーさせてもらいました 〈下北沢編〉 オナニーマシーンイノマー狂い咲きオナニー・ロード』)。常日頃から原稿のネタにしていたAVの中でもソフト・オン・デマンドの大ファンを公言しており、同社よりAV監督デビューのオファーがあったという。その後監督を務めたことはないが、2004年クリスマス・イブに行われたライブの来場者プレゼントDVD(イノマー銀杏BOYZ峯田和伸の対談、演奏)をSODで作成したり、オナニーマシーン初のDVD『裸の大将〜野に咲くバカのように〜』のパッケージデザインをSODの関連会社のSODアートワークスが手がけるなど、交流は続いていた。

◎闘病
 2018年7月に口腔底癌で、余命3年と宣告されたことを公表した。手術前受けた担当医の説明では、舌の3分の2を切除と言われていたが術後、目が覚めたら全部切除されていた。
 2019年7月に口腔底癌が転移し、再発したことを公表した。
 2019年12月19日2時50分、自宅で身内に看取られ死去。53歳没。戒名は「性春昌幸信士」(せいしゅんしょうこうしんじ)である。通夜と葬儀は近親者のみで執り行った。
 イノマーの没後、テレビ東京系のテレビ番組「家、ついて行ってイイですか?」でイノマー事実婚関係にあった夫人が番組の取材に応じ、夫との出会いや闘病生活の様子などについて語った。

◎著書
『ドーテー島』たかだ書房 2002
イノマー&ミネタの「真夜中のふたりごと」』ミネタとの共著 宝島社 2002
『恋のチンチンマンマン』たかだ書房 2004
ふたりごと』ミネタとの共著 たかだ書房 2005
(以上日本語版ウィキペディアより)

オナニーマシーン

日本のバンド
(この項目には性的な表現や記述が含まれます。免責事項もお読みください。)
 オナニーマシーンは、日本のパンク・ロックバンド。通称:オナマシ。「ガラスの中年」「全裸の妖精たち」を自称した。

オナニーマシーン
◎出身地 : 日本
◎ジャンル : ハードコア・パンク、青春パンク
◎活動期間 : 1999年 - 2019年
◎レーベル : ソニー・ミュージックエンタテインメント、ロフトレコード
◎公式サイト : オナニーマシーン公式サイト
◎メンバー : オノチン、ガンガン
◎旧メンバー : イノマー

●概要
 1999年12月24日、当時出版社の中堅サラリーマンだったイノマーによって結成された。楽曲の歌詞やタイトルにオナニー・童貞・フェラチオ・ち○こ・ま○こなど下ネタ系統の卑猥な言葉を多用するも、思春期男子の性欲をストレートに表現し青春パンクを確立(性春パンクとも表現される)。また、有名な楽曲や漫画・アニメソングなどをパロディーや替え歌にした楽曲もある(「タマしゃぶれ!!」「オナニーマシーン猛レース」「BOYS BE…」「淫河鉄道69」など)。
 ライブ活動を経て2002年にインディーズでCDデビュー。ライブでの過激なパフォーマンスが有名で、全裸になって演奏し、観客の所に突っ込んだり、オナニーで使ったティッシュなどをばらまいたりしている。このような数々のパフォーマンスにより、出入り禁止になったライブハウスも数多い。
 2003年にサンボマスターとのスプリットアルバムの形でソニー・ミュージックエンタテインメント(SMEJ)から事実上メジャーデビュー。2004年3月24日にアルバム『女のコ』『パンツの穴』をSMEJから、性的な面で過激な歌詞の楽曲を集めた『片思ひ』をインディーズのロフトレコードから同時リリースし、名実共にメジャーデビューを予定するも、発売直前の3月19日に『片思ひ』の作品の内容にレコード会社が難色を示し、急遽『片思ひ』のみ発売中止となる事件が生じた。SMEJとは契約を解消のうえ『片思ひ』は3ヶ月後に再発。以降インディーズでの活動を続ける。

◎略歴
1999年12月24日、クリスマスイブに結成。
2000年1月より、奇数月の最終土曜日に「ティッシュタイム」という定期ライブイベントを開催する。
2001年3月、デモCD-R『みき17才』をライブ会場にて販売。
2002年4月1日、1stアルバム『恋のABC』をリリースし、ロングセールスを記録。4万枚を売り上げた。
同年の11月27日、2ndアルバム『彼女ボシュー』をリリース。3万枚を売り上げた。
2003年7月24日、サンボマスターとのスプリットアルバム『放課後の性春』をリリース。
同年の9月10日、シーモネーター(現SEAMO)とのコラボレーションシングル『家出/恋のABC』とアナログ盤『恋のチンチンマンマン』を同時リリース。
2004年3月24日、アルバム『女のコ』『パンツの穴』2枚同時発売でソニー・ミュージックエンタテインメントよりメジャーデビュー。
2006年2月14日、ライブアルバム『ティッシュタイム』をリリース。
2006年7月5日、初めてのDVD『裸の大将 〜野に咲くバカのように〜 オナマシ1999〜2006』をリリース。
2007年6月27日、3年ぶりにアルバム『義雄』をリリース。イノマー40歳記念作として、アルバム名、ジャケットともに実の父を起用した。
2008年4月23日、オナニーマシーン初のベストアルバム『オナニー大図鑑』をリリース。
2018年12月5日、20周年記念アルバム『オナニー・グラフィティ』をLOFT RECORDSより発売。
2019年12月19日、ヴォーカルのイノマーが死去。

◎メンバー
オノチン (ギター/ヴォーカル、1962年3月21日 - )
青森県弘前市出身。アルバム『ティッシュタイム』で本名が「おのかつのり(漢字表記:小野勝規)」であることが判明。JET BOYSのメンバーとしても活動中。また、漫画家の山下和美のアシスタントを担当している。
ガンガン (ドラム、1968年1月9日 - )
同じ経緯で本名が「いわもとこうじ(漢字表記:岩本幸治)」であることが判明。

◎元メンバー
イノマー (ヴォーカル/ベース、1966年11月27日 - 2019年12月19日)
本名、猪股昌也。

ディスコグラフィ
◎シングル
「家出/恋のABC」(2003年9月10日)※オナニーマシーン&シーモネーター名義、オリコン173位
「恋のチンチンマンマン」(2003年9月10日)※アナログ 500枚限定
◎アルバム
『恋のABC』(2002年4月1日)※インディーズ
『彼女ボシュー』(2002年11月27日)※インディーズ、オリコン89位
『放課後の性春』(2003年7月24日)※スプリットアルバム オナニーマシーン/サンボマスター名義、オリコン85位
『女のコ』(2004年3月24日)オリコン214位
『パンツの穴』(2004年3月24日)オリコン243位
『片思ひ』(2004年6月30日)※インディーズ、オリコン227位
一度発売中止となった(前述)同アルバムの再発盤。以降はすべてインディーズ販売
ティッシュタイム』(2006年2月14日)※ライブアルバム
『義雄』(2007年6月27日)※実父の名前をつけた3年ぶりのアルバム
『オナニー大図鑑』(2008年4月23日)ベストアルバム
『冤罪』(2016年12月07日)
『オナニー・グラフィティ』(2018年12月5日)
◎DVD
裸の大将 〜野に咲くバカのように〜 オナマシ1999〜2006 (2006年7月5日) 監督:手塚一紀 & イノマー
(以上日本語版ウィキペディアより)