人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

(37b)ブッカー・アーヴィン(ts)

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チャールス・ミンガスの「ミンガス・アー・ウム」59.5は大手コロンビアの発売もあり、同じコロンビアのマイルス・デイヴィス「カインド・オブ・ブルー」59.3に匹敵する大傑作と喧伝された。ジョン・ハンディ(アルト)、アーヴィン(テナー)、ホレス・パーラン(ピアノ)の重厚な演奏は、マイルス盤のキャノンボール・アダレイジョン・コルトレーンビル・エヴァンスに互角に渡りあうものだった。この二枚がイギリスで、ジャズ、ロック問わずいかにミュージシャンに影響を与えたかは「ニュークリアス」のイアン・カーが語っている。
59年5月はジョン・コルトレーンジャイアント・ステップス」、オーネット・コールマン「ジャズ来るべきもの」の録音月でもあり、60年代ジャズの可能性はこの四枚で語れる、と言ってもよい。ビンゴのような年だった。

アーヴィンは遅咲きだったが、出世は早かった。ミンガス・バンドでデビューしたのは幸運で、2年目にして初リーダー作「ザ・ブック・クックス」60.6(画像1)を録音する(30歳。コルトレーンと同じ)。白人ながら黒さに定評あるズート・シムズとの2テナー、T・フラナガン(ピアノ)、ミンガス同門ダニー・リッチモンド(ドラムス)で好アルバムになった。スタンダード「プア・バタフライ」以外の5曲はオリジナル・ブルース。高速ブルースのタイトル曲、スロー・ブルースの'The Blue Book'が名高い。

第二作「クッキン」60.11(画像2)はピアノがパーランに代り、更に黒い。トランペットはR・ウィリアムズ。このアルバムはアーヴィン参加のバーバラ・ロング(ヴォーカル)のシングルAB面「君微笑めば/ザ・トロリー・ソング」61.1を加えて「ダウン・イン・ザ・ダンプス」78(画像4)として再発もある。「貴方は恋を知らない」「枯葉」以外はオリジナルで、スタンダードも退廃的でいいが'Down In The Dumps'などは再発盤タイトルになっただけあって底なしの真っ黒け。さすがミンガス門下生。ちなみにプロデュースはこんなものまで!トム・ウィルソンだった。
第三作「ザッツ・イット!」61.1(画像3)はパーラン・トリオとのワン・ホーンで「ポインシアーナ」「スピーク・ロウ」以外の4曲はオリジナル・ブルース。以上3作、ジャズの「黒さ」を煮詰めたような点が好みを分けるかもしれない。