「サムシン・エルス」のどこが問題かというと、これはキャノンボール・アダレイ名義のアルバムなのだが実際はマイルス・デイヴィスのリーダー作として制作され(マスター・テープの記載にも明記されているという)、当然選曲からアレンジまでマイルスが仕切った。だがマイルスは大手コロンビアの看板アーティストなので名義上はゲスト参加にし、キャノンボールのリーダー作として発表した、というややこしい話がある。冒頭の『枯葉』Autumn Leavesを聴けば一発だろう。テーマもファースト・ソロもマイルスが吹いていて、全体のムードは完全にマイルスが支配している。マイルスとしてはプレスティッジ時代のスタイルを発展させた演奏だが、自分のアルバムとして発表されるのではないのだからやや保守的に、しかし強烈にかましてみせた。
キャノンボールはそのままジャズ界最強を誇るマイルス・クインテットの6人目のメンバーに採用され、58年4月(翌月!)にはマイルス・セクステットのアルバム「マイルストーンズ」Milestones(画像3)が録音される。マイルス(トランペット)、キャノンボール(アルト)、ジョン・コルトレーン(テナー)の3管、R・ガーランド(ピアノ)、P・チェンバース(ベース)、P・J・ジョーンズ(ドラムス)の鉄壁のリズム・セクションで、マイルスはタイトル曲で初めてモード奏法によるオリジナル曲を試している。
これは翌年のアルバム「カインド・オブ・ブルー」で全曲に渡って応用されることになる。モードについてはそこで触れよう。