人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

(45f)スタン・ケントン(p,ldr)

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Stan Kenton(1912-1979,piano,Big Band Leader)。
 61年からのケントンは'from the creative World Of Stan Kenton comes...'を謳い文句に活動する。相変わらずキザで強気だが、前回のスタンダード集あたりではかつての先進性はどこへやら、口当たりはいいがこのままムード音楽に向かうのか、という危惧からジャズ・バンドとしての意地を取り戻した。やっぱり心機一転には離婚にかぎる。
 この時期は'New Era in Modern Music'とも標榜し、かつての無茶苦茶にスウィングする勢いを再び追求した。ケントン楽団はトランペット5、トロンボーン5のブラス・セクションが売りだったが、さらに楽器メーカーの協力で開発したケントン考案の新楽器、その名もメロフォニウム4本を加えて大変なことになった。これはトランペットとトロンボーンの中間音域の金管楽器で、新楽器の考案までしてサウンドの拡大を目指した意欲は凄まじい。

 この時期の編曲は主に古株ジョニー・リチャーズが担当したが、頂点というべき'Adventures In Jazz'63(画像3)はビル・ホフマン編曲。絶頂期の名盤'New Concept Of Artistry In Rhythm'52の編曲をピート・ルゴロと分けあった人で、ブラス・セクションをフル活用してほとんどピアノを排除したすごいスコアを書いてきた。ビッグ・バンドでは普通やらない。ケントン楽団は普通ではなかった(!)。

 この最後の大傑作の前に、'Kenton's West Side Story'61(画像1),'A Merry Christmas'61(画像2)の企画アルバムがある。前者はジャズでも数多いバーンスタイン作曲の大ヒット・ミュージカルのジャズ・ヴァージョン、後者はクリスマス・アルバムで企画は平凡だが内容はこれでもかの万華鏡サウンド。ケントン楽団にはコーラス隊をフィーチャーした'With Voices'57,'Artistry In Voices And Brass'63(画像4)というアルバムもあり、後年のビーチ・ボーイズの名作「ペット・サウンズ」66を思わせる。彼らも同じ地元で、偏執的サウンド追求に余念のないサイケでプログレッシヴなバンドだった。